文化的猫空間 貸切り図書館12冊目

鎌倉molnでの貸切り図書館12冊目、
ひなたのねこ展特別編も無事終了しました。
今回はひなたのねこ展に合わせた山田氏のトーク&ライブに
アアルトコーヒーの庄野さんがゲストという形で行われまして。
ツイッター上で庄野さんから「俺も貸切り図書館出たいなー」と言われ実現した組み合わせですが
(後で聞いたら酔っぱらってる時にツイートしちゃったらしいですが)、
山田氏と息の合った軽妙なトークを聞かせてくれました。
前半が本についてのトークで、後半がライブという構成だったんですが、
どちらも充実した内容で楽しめましたね。


一応ひなたのねこ展なので動物の本を紹介するというしばりでしたが、
山田氏が紹介したのは保坂和志猫に時間の流れる」、
デヴィッド・アップダイクの絵本2冊
「THE SOUNDS OF SUMMER」「A WINTER JOURNEY」、
荒木経惟の「愛しのチロ」「センチメンタルな旅 春の旅」「チロ愛死」というラインナップで。
保坂氏と山田氏の交流についてはファンの方ならご存知でしょうが
(「文藝 保坂和志特集」に寄稿された山田氏のコラムが良いのでご一読いただきたいです)、
猫のいる風景と時間が緩やかに綴られたこの本は私も何度となく読み返す愛読書で。
今回の展示に添えるにはとても良い本だなと思いました。
「アップダイク追記」という曲を書くほど彼が敬愛している作家の絵本には犬がモチーフとして登場するそうで。
犬を飼っている庄野さんの犬トークなどもありました。
(アップダイクの「カプチーノを二つ」は未読なので読まねばと思いました)
アラーキーの愛猫チロを写した一連の写真集にはチロの末期の痩せ細った痛々しい姿も写されており。
自身愛猫ポチをなくしたばかりの山田氏は自らの気持ちと照らし合わせつつも、
ポチは丸々として健康的な見た目のまま亡くなり痛ましい様子を見ずに見送れてほっとしたということを語っておりました。
家族も健在でまだ身近な存在を亡くしたことがない庄野さんはその喪失感がわからないけどいつかその時は来るという覚悟のようなものを語り。
家族を失うということに想いを馳せるひと幕がありました。
かたや庄野さんが紹介した本はというと、
岸本佐知子「ねにもつタイプ」、
嶋中労「コーヒーに憑かれた男たち」、
永井宏さん編纂による「ロマンティックに生きようと決めた理由」というラインナップで。
岸本さんのコラム内に「猫のマッサージ屋」の話が出て来る部分を紹介してくれたんですが、
ずばり肩や腰など凝った箇所を猫に踏んでもらうといった内容で、
「山田さん開業すれば良いのに」という話で盛り上がりました。
確かに猫好きには堪らないでしょうが、
勤務態度にムラがあるのが難点かなと。
「コーヒーに憑かれた男たち」は日本にコーヒーを定着させた偉大な先人たちのドキュメントで、
ここに登場する南千住のバッハというお店は私もコーヒーを飲みに行ったことがあります。
(仕事で知り合ったコーヒー通の方から勧められて)
ここに登場する先人たちのように24時間365日コーヒーのことを考えることは出来ないけど、
自分だったら何が出来るだろう、どうコーヒーと向き合えば良いのだろうと考えるきっかけになった本だそうで、
庄野さんの原点ともいえる本だそうです。
続いての「ロマンティックに生きようと決めた理由」も同じく原点と言える本なのでしょう。
こちらは「まずタイトルが最高じゃないですか」とのことで。
庄野さんは30までサラリーマンをしていてそこからコーヒーの仕事を始めたそうで、
まさにロマンティックに生きようと決めて人生の方向転換をしたわけで、
そんな人の指針となるようなタイトルの本を私も書いてみたいものだと思いましたね。
私も出来れば非ロマンティックよりはロマンティックでありたい夢見るおじさんであるゆえ、
ぜひ本書を入手して読まねばなるまいと思った次第です。
この本は装丁を変えて後に再発されたそうですが、
庄野さん曰く「この装丁が本として美しいのでこっちを入手して欲しい」とのことで。
本というのは中身だけでなく物としての魅力も大いにあるもので、
庄野さんの美学のようなものも垣間見れました。
この日はちょうど文化の日だったんですが、
山田氏の「僕が本やレコードを買い続けるのは限りある時間の中で出来るだけたくさんの文化的なものに触れていたいからだ」
という発言には大いに共感しましたね。
本もレコードも会場のmolnに並んだ猫雑貨もただ生きていく上には必要ないものかもしれませんが。
豊かに生きていく上にはこれほど生活に潤いを与えてくれるものはないと思うわけです。
生活に潤いがないとかさかさに乾くだけですからね。
終わりには山田氏とお客さんによるジャンケン大会があり、
買った人が山田氏の本を貰えるという企画だったんですが、
いきなりお客さん全員が山田氏に負け、
「みんなジャンケン弱いな!」と叱咤される場面などあり。
まあ最終的に希望者の方に本が贈られてました。
そんなわけでトークコーナーが終了し。


後半は山田氏による動物しばりのライブが始まりまして。
歌詞に動物が出て来る曲ばかりのセットリストということで聞いてて新鮮でしたね。
バッファローだのライオンだの羊だの賑やかで。
そうか一角獣も動物か、とか。
動物にちなんで途中「ZOO」のカバーもあり。
やっと会えたねバージョンかと思いきや川村かおりさんのバージョンで。
山田氏の歌唱で聞くとまた新鮮でしたね。
そんなわけでたっぷりと動物曲を演奏してくれました。
最後にはお客さんに向かって「ウェルカムで!」と、
前日の高橋徹也氏のカリスマジェスチャーのカバーまで披露してくれました。
(私は爆笑しましたが、お客さんは「山田さん急にどうしたんだろう」と戸惑ったことでしょう)
今回は演奏中もお客さんに本が回り、
それをペラペラとめくりながら聞く感じも何だか良かったですね。
それこそ貸切り図書館て感じで。
メモを取ったり、話にうなずきながら聞いたり、
お客さんはみな積極的に参加しておりました。


終演後はディモンシュの堀内さん夫妻も合流し、
ミルブックス藤原さんや遊びに来てくれた高橋徹也氏も交えて美味しい食事をいただきました。
高橋氏は前日あれだけステージでロックな感じだったのに
ふわふわした青年に戻っており。
いつものホットコーヒーではなく
青い瓶に入った炭酸水を「こりゃいいや」とにこにこしながら飲んでました。
堀内さんとも交流が出来たようで縁が繋がるなーと思った次第です。
楽しい宴でした。


ひなたのねこ展は9日まで開催中で、
最終日9日には山田氏によるクロージングライブがございます。
この日は歌詞に猫が出て来る曲しかやらないそうです。
僭越ながら私も佐々木真里さんとサポートとして参加させていただく予定です。
(この日に急きょ決まりました)
ぜひ文化的な空間に足を運んでいただきたく思う次第です。
豊かなる時間を猫と共に。