ボール投げなら、決してはずさない。

そんなわけで私はまだ伊勢にいます。
だいぶ忙しさも落ち着いたので夜には長い散歩をしたり、
「ボール投げなら、僕、決してはずさない。」などと
銀河鉄道の夜の台詞を独り言で発したりしながら
静かに過ごしています。
闇に同化しつつ虫の音に耳を澄ませたりしています。
夜を狂ったように散歩をしていると己の孤独が音もなく
闇に沈んで行くような印象を受けます。
釣り上げないまま眠りについています、毎日。
だいぶ空気が秋っぽくひんやりしてきました。
空に描かれた飛行機雲と山々の光景を昼間に見ています。
いろんな人々と会話をしながら
私は完全に夏に終止符を打ちました。
携帯のカメラは相変わらず光をぐにゃぐにゃに捻じ曲げ、
女の子の顔を撮ってほら、と見せてあげたら
私はこんな光じゃない、と返されました。
でも僕のカメラではきみはこういう光なんだ、と言うと
変なカメラだ、それ。と呆れられました。
そんな変な、壊れかけならぬ壊れきったカメラを携えて、
私は9月にただただ塗れながら立っています。
今頃エレキギターの弦は錆びていることでしょう。
歌の歌い方をすっかり忘れています。
腹式呼吸を思い出しながら
「ボール投げなら、僕、決してはずさない。」
と私は何度も夜に放ちました。
そのうち思い出せるでしょうか。
そんなことを思いながら私はくだらないメールばかりを
何度も送信して眠りにつきます。
みなさんはいかがお過ごしでしょうか。