センチメンタル芭蕉

科学の発達した21世紀に於いても
やはり夏には蚊に刺されるし黒い奴は出現するし蝉は鳴くしで。
結局夏は夏であるのですね。
アトム誕生からもう6年も経っている未来だというのに。
虫たちには人間界の事情は関係ないようです。
実際エヴァ使徒が戦う現場でも蝉は鳴いていますしね。
この先も人間のことなど気にもせず蝉は鳴き続けるのでしょう。


ところで人間の絶滅した未来の地球に夏が到来し蝉が鳴いたとて、
その情緒を記してくれる生物って新たに現れるのでしょうかね。
「閑けさや岩にしみ入る蝉の声」と芭蕉が詠んだように、
夏の情緒としての蝉の鳴き声を留めるような行為、それを成す生物。
そんなものが未来に、人間以外に現れたりしないのでしょうか。
人間がいなくなると蝉の声はただのノイズになってしまうのかと思うと
何だか寂しい気もします。
例えば夕方のヒグラシの声の情緒がどの生き物にも理解されないなんて。
蝉で一句詠むようなポエジーが発生しないなんて。
まあ蝉自身はそのことも知らずただただ鳴くだけですね。
「ああ、俺って夏の情緒だよなあ」とは自覚していないでしょうが。
2189年の夏に鳴くヒグラシの声。
それを感傷と共に聞く者が果たして地球に残っているのか。
2215年の夏に飛ぶ蚊の羽音。
それに睡眠を妨げられる者が果たして地球に残っているのか。
そして蚊取り線香の匂いに「夏だねえ〜」としみじみする感情が残っているのか。
どうなんでしょうか、地球の夏。
まあひょっとしたらヒグラシ、蚊自身も絶滅してるかもしれませんが。


それにしてもこのところ不安定な天気ですね。
蝉も「俺鳴いていいのかなー」と遠慮気味に鳴いてる気がします。
彼らが本格的にシャウトし始めるのは8月に入ってからですかね。
たまにガンズみたいな声の元気な蝉いますよね。
しゃななななななな、にーぃにーぃ!みたいな。
この間ラジオで「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」聞いて
「ああ、これ蝉だな」と思ったものです。
偉大なるロックバンドのボーカリストを「蝉」のひと言で片付けるのも何ですけどね。