夏の日をデザイン

アート気分に浸る夏、というキャッチコピーを突如心に掲げ、
先日横須賀美術館ブルーノ・ムナーリ展を鑑賞して来ました。
芸術家でありデザイナーであり子供の為の絵本や遊具を数々送り出した彼の、
機知に富むアート作品、カラフルなデザイン、豊かな発想力を堪能出来る楽しい展示でした。


最初のブースにある子供用の遊具コーナーでは実際手に取って遊べるようになっていて、
人や木や魚などが描かれたフィルムに色や縞や水玉のフィルムを自由に重ねて組み合わせたり、
アルファベットを解体してパズルのように並べ変えたり、
子供が能動的に感性を働かせるものが多く楽しかったですね。
私は一応大人ですけどおもしろーいとしばし戯れてしまいました。
デザインも洗練されていて目にも楽しいし。
目の見えない子供のための触感に焦点を当てた作品とか
(ブラシとか糸とか手触りに特徴あるものを吊るして、それに触って何かを感じるというもの)、
見た目には何だこれというようなものも触感では豊かな作品になっていたり。
彼の絵本なんかも読めるように置いてありましたが、
子供の感性を刺激する仕掛けがいっぱいあって面白かったですね。
あと彼のアート作品では「ゼログラフィーア」というのも印象的でしたね。
コピー機で物をコピーする途中でその対象の物を動かして作るグラフィックだそうで。
単一な物を生み出す機械に手を加えて偶然性のある作品を作るのって、
デジタル信号をあえてバグらせてノイズを生み出したりとか、
エレクトロニカ界隈にも近いことやってる人いますよね。
あとは読めない字によるデザインとか(本当に読めない架空の字が書いてある)、
食器のフォークの先端を折り曲げて何かのメッセージ風に仕立てた作品とか
楳図かずお先生のぐわし!みたいなのがあって笑えました)、
どれもポップでどことなく可愛いらしいのですよね。
「旅行用の彫刻」とか、旅先に持って行ける折りたたみのアート作品というのも新鮮でしたし。
普通旅先にそんなアート作品持って行かないだろうと考えるところですが。
芸術品も日用品と同じような扱いで日常に存在しているべきで、
逆に日用品も芸術と同じく洗練されたものであるべきみたいなことがボードに書かれていましたが、
その通りかもしれないなと思ったりしました。
実際実用品の灰皿とか電灯のデザインもスマートで洒落てるのですよね。
自由な発想と日常におけるアートへの姿勢、感性を豊かにする遊具に絵本、
洗練されたデザインの美しさに触れて色々刺激を受けました。


さらに常設展の方で展示されていたのが原田和男氏の音響彫刻で、
こちらも音楽家としては存分に楽しめましたね。
音響彫刻って平たく言えば鉄で作られた自作楽器なんですけどね。
弓で引くものやマレットで叩くもの、弦を弾くものや球を転がして鳴らすものなど、
色々な種類のものが展示してありました。
どれも金属的な音色ですが荘厳な響きを持っていて。
それらの楽器をその場で自由に鳴らすことが出来るのですよ。
子供たちとかわけもわからずガンガン叩いたりして鳴らしてましたけどね。
私もそこに交じってガンガン叩いて演奏してやりました(笑)。
天井高いから響きも良いし。
ただ周りでもガンガン色んな楽器が鳴ってるので残響の干渉具合も凄かったですけどね。
音響的には混沌としてましたが、ちょっと奥まった部屋には子供たちが入って来なかったので
そこで延々叩いてやりました。
お前らに邪魔させるかあーと言わんばかりに。
打楽器奏者と一緒に行けば延々ポリリズムで遊べるんじゃないでしょうか。
子供たちから白い目で見られるかもしれませんが(笑)。


さらには隣の谷内六郎館で谷内六郎世界に浸り郷愁を覚えたり、
外に置いてある楽器も眺めたり(ここは小さい子供が独占してたので見てるだけに留めました)
すっかり美術館を満喫しちゃいました。
アート気分に浸る夏という最初のコピー通りです。
微妙にアクセスが面倒臭いですがなかなか良いところですね、横須賀美術館
美術館のすぐ目の前が海だったので何となくバスを待つ間、海まで出てみたりして。
結構みんな泳いでいましたね。
ぱちゃぱちゃと水と戯れて。
そこで一緒に「わーい」と海中に飛び込むようなやんちゃっぷりは発揮せず。
というか発揮するほど持ち合わせてもおらず。
あつがなついぜと彼方の谷内六郎が描いたみたいな入道雲を眺めるに留まったのですが、
夏の終わりに思いがけず海に遭遇して良かったです。
フリッパーズ風に言うと海へ行くつもりじゃなかったけれど。