拝啓、スカイツリー

3月半ばになっても寒いのです。
「しぶとい」とはこういう状態を言うのではないかと
冷たい北風にこの身を震わせながら思う次第です。
このしぶとさは誰が得するというのでしょうか。
果たして。
浅草寺境内での実演は屋根こそあるもののほぼ屋外という状態で、
冷たい風がびゅうびゅうと吹き込むので外仕様の防寒をしつつ、
さらに傍らにストーブを置いて暖を取っているのですが、
暖かくなればもっと客足も伸びようものをと
商売への影響なども考えたりして身を縮こませています。


浅草近辺を歩いていると必ず目に入るのが東京スカイツリーで、
ふと角を曲がると「にゅっ」という擬音を伴うかのように突如その姿を現したり、
ふと横を見やるとあやつの頭だけ「のきっ」とばかりに見えたり、
歩く先に目印はここでっせとばかりに「ぬーん」と立ち尽くしていたり、
そののっぺりした感じがまるで絵画のようで現実感があまりないというか、
ドリフのコントの背景のような色合いだなと見る度に思ってしまうのですよね。
コントが終わると「じゃ〜ん」という合図の音が鳴り響き、
軽快な音楽とともに場面が転換され背景の東京スカイツリーもなくなるのではないかと
ドリフ世代の私はつい思ってしまうのですが、
あの渋い色合いが絵画ぽさを強調しているような気がしてなりません。
浅草には昔から頻繁に通っていますが、あんな背の高いものが突如風景に足されて
景観が更新されていくというのもそうそうないことだよなと思いながら見るのですが、
何か「僕東京スカイツリー、よろしくねんっ」みたいな新参者の可愛げがないというか、
東京スカイツリーが風景に足されました。以上。」みたいな、
業務連絡ぽい登場の仕方に思えてしまうのですよね。
「あの転校生あんまり笑わないね」「いつも同じグレーのセーター着てるね」などと
クラスの女子男子から距離を置かれてやしないかと心配になってしまうのです。
東京タワーはかつて東京のシンボルだったという歴史もあるし、
昭和の郷愁を背負いつつあの明るいモダンなデザインは若者のデートスポットでも現役だし、
中の蝋人形館になぜかフランク・ザッパが鎮座しているという珍妙スポットでもあるし、
「タワーくん個性的だよね」「うちの班に入れたいよね」と
クラスの女子男子から人気があるというのに。
(勝手なイメージですが)
まあスカイツリーもいざオープンしたら他のクラスの子からもきゃあきゃあ言われる感じで、
大人気になるんでしょうけどね。
あののっぺりのっぽくんも。


過去数々の怪獣に壊されて来た東京タワーですが、
東京スカイツリーをいち早く壊す怪獣は誰なのか興味あるところです。
怪獣に壊されて初めてこの世界に溶け込むことが出来るのではないかとすら思ったりします。
初めての相手はやはりゴジラになるんでしょうか。
(毎回ゴジラが壊してるようなイメージですが、
実はゴジラが初めて東京タワーを壊したのは2003年なんだそうですね)
怪獣映画などスカイツリーがフィクション作品に登場していくうちに
あのドリフの背景のようなのっぺり感もなくなって来るのでしょうか。
そんなことを思いながら「にゅっ」と現れるスカイツリーの姿を望んでいる日々です。