鯨のため息

私は普段から全く煙草を吸わないのですが、
一時期お店の前に煙草の自動販売機を設置していたので、
中身の在庫管理や注文などをする機会にすっかり名称や特徴を覚えてしまい、
誰かが喫煙していると「へえ、この人マイセンのワン100Sボックス吸うのか」などと
つい銘柄をチェックする癖がついたくらいで、
今回のマイルドセブン名称変更のニュースには思わず反応してしまった次第です。
セブンからメビウスと聞くとついウルトラマンを連想してしまいますが、
あれだけ馴染みがあって売れているブランド名を変えるとは思い切ったことをするものです。
まあ煙草業界はタスポ導入という思い切った失策の例がありますからね。
タスポと値上げという2件の事項による売り上げ激減がきっかけで我が店は自販機撤去となったので
JTの判断であれの撤去や存続が決まるのですよ)、
今はすっかり煙草のことは忘却の彼方なのですが、
そういや初期の頃は銘柄の名称がややこしく苦労したな、などと思い出してしまいました。
ライトとスーパーライトとエクストラライトにそれぞれソフトとボックスがあるし、ロングもあるし、
他にもアクアだの似たような名前のものが多いので非喫煙者には区別が付かないのですよね。
あまり売れもしない新作が定期的に出て来るし。
メンソールのスッキリ感が増しました!とか営業に来るのですが、
世の中の喫煙者の何割の人がメンソールのスッキリ感の増加を望んでいるのか知りませんし。
ピアニッシモ・アイシーン・メンソール・ワンて一体何?誰が吸うの?」なんて感じでした。
作った方には失礼ですが(笑)。
その度に金のかかった看板やチラシが出回り、中身を替えたりして、
みんなに仕事を回すためだけに新作出してないかこの人たち、と思ったりしたのですが、
結局何だかんだで売れるのはマイルドセブン系の定番なんですよね。
もう主力商品のみ作って行けば良いじゃないと思ったものですが。
今回はそんな主力商品の名前が変わるのだから結構な事件なわけです。
マイセンで馴染みがあるのだからいっそマイセンでいいじゃないとか、
とやかく言いたくなる感じですが、こういうのってトップの鶴の一声で決まったりしますからね。
メビウスて!と受け入れるのに時間のかかる社員もたくさんいることでしょう。
パッケージや諸々のシステムを全部変更すると思うと大変なことです。
煙草のパッケージのデザインて洗練された清潔感あるものが多く、
どれもなかなかお洒落だなあと思っていたものですが、
和田誠氏デザインのハイライトはやはり名作だなと思います)
いつからか喫煙に対する物騒な忠告文がかなりの割合を占めるようになり、
お洒落とか言っていられない雰囲気になって来て、
今回の名称変更もマイルドという形容詞が問題とかどこかで目にしましたが、
煙草に対する風当たりの強さは年々増加の一途を辿っているような印象です。
今回の変更も値上げ、タスポに続く売り上げ減少の要因になるような気がしてなりません。
(煙草販売者の目線で言うと同情的になるんですがもう辞めてるし、
個人的には非喫煙者なので減少しても構わないきらいはまああるんですけどね)
名称で言うと個人的には「峰」「わかば」のようなシンプルな日本語が好みなので、
いっそ「めびうす」と平仮名で(しかも江戸文字で)デザインして欲しいと思ったりします。


あと煙草の名称で言うと、ますむらひろしさんの漫画で(アタゴオルだったと思いますが)
「鯨のため息」という名称の架空の煙草が出て来て、
それを登場人物が美味しそうに吸うシーンを見ていて
「こんな素敵な名前の煙草だったら一度吸ってみたい」と思ったものです。
確かメンソール系の味だったと思うんですが、
いいネーミングですよね「鯨のため息」。
煙草のネーミングに詩情を持ち込むくらいの余裕があれば世の中もっと生きやすくなるんじゃないか、
大事なのはポエジーじゃんと思う私ですが、
「安易なネーミング付けると未成年者の喫煙が増える」とか文句言う阿呆が現れるのでしょう。
そしてタスポなんていう阿呆なシステムが導入されるのでしょう。
(あんなの役人の天下りのために作られたポストだと当のJTの人が文句言ってましたよ)
鯨のため息は苦い世の中にため息を漏らさずにはいられない哀しみの味なのかもしれません。
メビウスはどんな味なのでしょうか。
永遠の味なんでしょうかね。
果たして。