昼の港の終焉

4月になり、笑っていいともが終わる日が本当に来るのだなと
タモさん不在のお昼のテレビをぼんやり見やりながら諸行無常を感じている私です。
いいともは3月に入ってからちょこちょこリアルタイムで見てましたが、
タモさんの達観したような喜びも悲しみも怒りも笑いも全ての感情を包括するような
仙人のような佇まいは何処から由来するものなのか、
サングラスの下の本当の目を覗いてみたい衝動に駆られますよね。番組を見る度に。
(矢継ぎ早に出される関連書籍はどうも玉石混合のようですが)
お笑い界のモンスターどもの攻撃をひらりとかわし、
柔らかな動きでなぎ倒す様は居合いの達人の如き様相で。
最終回の夜の特番でダウンタウンウンナン、ナイナイ、とんねるず爆笑問題が立ち並ぶ様子は
ウルトラマン仮面ライダーとゴレンジャーとギャバンが一堂に集まったかのような
「え、いいの?」というあり得ない並びで(まあライダーとゴレンジャーは同じ石ノ森ですけど)、
お笑い好きならこれがどれだけ異様な光景かわかるというものでしょう。
この光景を実現させるタモさんの凄さです。
「石橋、今松本って呼び捨てにした!」「浜ちゃんが太田の頭をはたいた!」
「松ちゃんの真横に太田が!」「松ちゃんの手が石橋に触れた!」
「石橋が矢部と握手してるし!」などと一挙手一投足を観察してしまいました。
(石橋が矢部と握手してたのは出産おめでとうの意味だったそうですね)
番組的にはグダグダな様相ですが、ドキュメントとしてはこれほど面白い映像はないわけです。
ダウンタウン爆笑問題の不仲説は浅草キッドが過去に面白おかしく書いてましたが
(松本のファッションを揶揄した太田を松本が注意したとかいう都市伝説然とした話ですが)、
さらにとんねるずダウンタウンが同じ画面に収まる日が来るとは思わなかったですね。
もう今後実現しない奇跡の瞬間だったんじゃないでしょうか。
田中が意外に仕切れそうとか、後半中居くんを投入して正解とか、
松ちゃんオチにサンコン使い過ぎとか
(色々なパターンを試してサンコンに落ち着いた感じでしたね)、
ダウンタウンとさんまのミニコントは流石だなとか
(浜ちゃんがさんまに仕掛けるのを見て松ちゃんが発言を控えるなどの差し引きがスリリングでした)、
岡村のタモさんにお礼言うパターン最後の方はもうスベってたなとか、
ナンチャンのナンバラバンバンがスベってる扱いになってたけど俺は好きだよ!とか、
色々思いながら見てました。
ナイナイ岡村曰く松ちゃんが太田に「ありがとな」と声を掛けたそうですが、
その真意を松ちゃんの口から聞きたいものですね。
いずれにせよ松ちゃんはこうなるのをぼんやり期待してとんねるずの名前を出したのでしょう。
そしてそれにちゃんと応えたとんねるずの凄さという。
(憲武の太田とはまた違った自由さも凄かったですよね)
いい場面を見ることが出来ました。
しかしこの混沌の中、声を荒げるでもなくまとめるでもなく
流れに身を任せているタモさんの佇まいたるやです。
「これ俺の番組!」というツッコミひと言だけでしたね。
(もうそれ以外にないという的確過ぎるツッコミでした)


番組最後のスピーチは芸人はそれぞれのキャラを活かしつつ多少のボケも入れつつで。
こういう大喜利の時ツッコミの人は大変だなと思いましたけどね。
(綾部が普通の挨拶に留まってましたが、あそこでボケ入れてもスベってたと思うので仕方なかったのでしょう)
バナナマンが最初にスピーチでボケを仕掛けた後に
設楽と石橋が「よくやった」という意味のハイタッチをしていたのにはぐっと来ましたね。
タカのスピーチの際、トシを側に連れて来ておいて絡まないというボケは
トシのツッコミのタイミングが完璧で見てて惚れ惚れしましたし。
その後すぐにとんねるずがそのボケをカブせてくるという連携も良かったし。
泣きじゃくる柳原とキャラに入った劇団ひとりもらしくて良かったですね。
しかしSMAPは流石国民的アイドルだなと改めて感心してしまいましたね。
3人のスピーチにはぐっと心掴まされました。
特に中居くんのバラエティ番組に対する熱い想いや自身を振り返り感情を吐露するくだりからの
鶴瓶いじりで笑いを取ってバトンタッチというスピーチの完成度の高さには脱帽した次第です。
かつてこれだけMC能力に長けたアイドルは存在しなかったんじゃないでしょうか。
鶴瓶の「タモさんは港です」というキャッチーな言葉も秀逸でしたけどね。
最後のタモさんのスピーチも簡潔で良かったですね。
わかりやすく笑いや泣きに振れるでもなく、
番組における自身を客観的に振り返りながら感謝を述べながらの
いつもの「明日もまた見てくれるかな?」で締めるという。
赤塚不二夫氏の弔辞に於ける言葉も素晴らしかったですけどね。
若手芸人につける独特なあだ名といい、言語センスに長けているなあと思う次第です。
(又吉がタモさんにつけてもらったあだ名は誰とも被らないという内容のスピーチをしてましたが、
そこ重要な指摘だよなあと思いました)


しかし客席にいた芸人たちで今はもうテレビで姿を見ないなあという悲哀も諸行無常を感じましたね。
羽賀研二とか岸田健作とかの青年隊黒歴史をたけしが昼にいじってましたが、
イワンていうロシアの子が後に逮捕されちゃったなあとか思い出したり。
(いいとものコーナーで複数の占い師を呼んでレギュラーの運勢を占い、
全員から運勢が悪いと評価されたのがイワンで、
後に彼が逮捕された時に占いって当たるんだなと思った記憶があります)
客席にヒロミの姿を見かけてちょいと心がざわついたり。
(私は彼の目上の者にフランクな態度を取るタイプの芸風が好きじゃないもので。
タモさんのことをおじさんと呼びタメ口で話すヒロミはスベってるよなあとずっと思ってました。
相方のデビット伊東もタモさんとタメ口で話をしていて、
ヒロミはギリ芸風だから良いけどお前は駄目だろと思った記憶があります。
さまぁ〜ず三村がスピーチ内でヒロミを名指しで嫌いと発言してましたが、
過去ヒロミからいじめにあって以来共演NGだったと知ってさらなる悲哀を感じた次第です。
三村ももう半リタイアしているヒロミだからこそあそこで名前を出せたんでしょうが)
タモさんにタメ口といえば藤原紀香が前にショッキングでタモさんにフランクにタメ口で話していて、
それがローラみたいに可愛げには見えず失礼な人にしか見えないのを見て
藤原紀香ってもうオワコンなんだなと悲哀を感じたことを思い出しました。
私は何故かタモさんに敬語を使わない年下の人間に敏感に反応してしまうのですよね。


かつていいともがぬるい存在として機能していた時期もあったと思うんですが、
変わらずここまで継続して来たのはどえらいことだなと思う次第です。
いいともがなくなってもタモリ倶楽部があるので
芸人や文化人とのマニアックな絡みはまだ見られるだろうし、
そんなロスみたいなものはないんですが、
確実にお昼の風景が変わった印象は否めません。
笑っていいともの終焉が笑っていられない時代の到来を意味するものでなければ良いなと
願わずにはいられない私です。