メトロフリークスが行く、15年

先日催された鎌倉molnでの企画ライブ
「貸切り図書館7冊目〜15年目の江ノ島ラプソディ」も盛況のうちに無事終了しました。
たくさんのご来場をどうもありがとうございました。
今回はHARCOくんにたっぷりワンマンで演奏していただきました。
このタイトルの7冊目というのは7回目という意味なんですが、
実は今回が8回目だということが後から静かに判明し、
もうチラシにもネットにも載っちゃってるからまあいいかとそのままになったんですが、
次回からしれっと9冊目になるのを静かにご了承いただければ幸いです(笑)。
HARCOくんの07年の「KI・KO・E・RU?」というアルバム収録の
「水中バギー」という曲に私はギターで参加しており、
彼とがっつり絡むのはそれ以来だったんですけどね。
(まあ今回はライブを企画しただけで演奏には参加しませんでしたけども)
好きな本を紹介して貰ったり、名シングル「江ノ島ラプソディ」を全曲再現して貰ったり、
普段とはひと味違うライブになったかと思います。


毎回ライブ中にアーティストの方に好きな本を紹介して貰ってる当イベントなんですが、
今回のHARCOくんは紹介数最多でしたね。
10数冊をどんとステージに持ち込んで自らの背後に並べ、
その様相はまさにプチ図書館然としておりました。
今回はまた機材も多く、鍵盤、ギターにリズムボックスなどがステージ所狭しと並び、
サポートギタリストの石本氏も足元にずらっとエフェクター類を並べ、
横にはヴィンテージもののエコーを鎮座させ(これがいい音でした)、
見た目にも賑やかというか散らかっているというか(笑)、自宅ラボのような雑然さで、
それが今回のライブの内容にとても合っておりました。
合間のMCごとに彼の本にまつわるトークが展開されるわけですが、
友達にするかのように「この本面白いんだよ〜」とストーリーを紹介したり、
「自然描写が凄いんだよね」などと作者の作風について紹介したり、
またそれが自分の曲作りにどう影響されているかなどフランクな語り口で語り、
その様子がラジオ番組のようで聞いてて面白かったですね。
彼独特のユルさも相まって。
ある詩人の詩集を読んで「鉄兜」という言葉に引っかかったというトークの後、
それを実際歌詞に引用したという曲を歌い、
聞いてると「へえ、鉄兜をこういう言い回しに使うのか」とこちらもその言葉に引っかかったりして。
彼の作詞の秘密を知るようでとても興味深かったです。
ファンの方も本に興味を持ったようで、ライブ後は彼が紹介した本コーナーににわらわらと群がり、
そこでさらにHARCOくんがアフタートークを展開し、終演後まで盛り上がっておりました。
彼がセレクトした本は小説や詩集が多かったですが、実にらしい感じがしましたね。
上林暁があったのには「おっ」と思いました。彼のブログにそのうちリストが上がるでしょう)
彼がサポートしているGOING UNDER GROUNDのツアー中もずっと読書をしているので、
ボーカルの松本氏に「本好きアピールしやがって」とイジられているそうですが(笑)、
このような本の数々が彼の楽曲を形成しているのだなと改めて感心した次第です。


曲の方はというとマニアックな選曲で、普段やらない曲も多かったようで、
お客さんも喜んでおられたようです。
前述した通り「江ノ島ラプソディ」収録曲がハイライトで、
特に「メトロフリークス」という曲は10年振りくらいに演奏されたそうで貴重なものとなりました。
今回、音源オリジナルの電車の走行音のサンプル音を見つけるのに彼はPC内を探し、
ハードディスクレコーダー内を探し、サンプラー内を探し、
結果MOディスク内に奇跡的に残っていたのを発掘したそうで、
それがなければ違う電車の音での演奏となったことでしょう。
江ノ島ラプソディ」は後にキリンジで名を馳せる冨田恵一氏の名アレンジが冴える名曲ですが、
もう15年前なのかと時の経過に思わず思いを馳せた私です。
(ライブ前にちゃんと江ノ島に行って来たというお客さんがいて優秀だなと思いました)
過去の名曲の数々は勿論(個人的には「Night Hike」が聞けて良かったです)、
三陸のミシン工房の音をサンプルに使った新曲やカジヒデキ氏と河野丈洋氏とのコラボ曲などを演奏し、
アンコールではこの日NAOTさんの靴の展示があったのに因んで
歌詞に靴が出て来る「文房具の音」を歌い。
これの途中、文房具のサンプル音で作ったリズムが止まるというハプニングがありつつも、
それを補うように客席から手拍子が始まり逆に大いに盛り上がって終わりました。
終始ピースフルな雰囲気に満ちた2時間であっという間でした。


リハから本番、片付けまで本当にバタバタで、
打ち上げも軽く缶ビール飲むくらいだったんですが、最後に少しだけゆっくり出来ました。
(NAOTスタッフのみなさんにも機材運びなど手伝っていただき、
現場にいる全員で働いた!という妙な団結の輪が出来ておりました)
ライブ中、ラーメンズ小林賢太郎の物真似も飛び出しましたが、
打ち上げではなぜか大沢悠里の物真似も飛び出し、
彼は音楽以外にもこういう小技をどんどん出して行けば良いのではと思ったりもした次第です。


「メトロフリークス」が鳴らされている時、
サンプル音源の電車の走行音と、外から聞こえる鎌倉駅の電車の音が耳の中でミックスされ、
15年前に聞いていた自分と今の自分が時空を超えて繋がったような不思議な感覚を味わったのですが、
こういう聞き方が出来るのも自分が生きて来てアーティストも長く活動している所以だよなあと思い、
年を取るのも悪くはないななどと思ったりもした私です。
あの日地下鉄を走っていた電車が15年かけて鎌倉までやって来た。
そんな感じがして少し胸が熱くなりました。
電車はこの先も走り続けることでしょう。
どこに向かうかはわかりませんが。


そんなわけで次回9冊目でまたお会いしましょう。
よろしくお願いします。
ということで。