ロンドン旅 その2

そんなわけでロンドンでの日々が始まったわけですが、
今回はあくまで嫁の店の商品の買い付けがメインなわけで、
早速次の日から怒涛の買い付け作業が始まりまして。
(私は付き添いです)
どこで買い付けるのかというとこの時期、大規模なアンティークフェアが催されるそうで、
そこに赴いて気に入ったもの、商品にしたいものを選んで買って行くそうなんですね。
そんなわけで朝4時起きという強行軍で朝焼けのロンドンの街並みの情緒を味わいつつ、
電車に乗って2時間ほど揺られリンカーンという街へ移動しまして。
リンカーンの駅からさらにバスに揺られ、羊や牛たちが遊ぶ田園風景を
「おー、イギリスの田舎だ〜」と眺めてるうちに白いテントが立ち並ぶ一角に辿り着きまして。
そこがアンティークフェアの会場で、広い敷地に様々な骨董屋がブース毎に商品を並べているのですね。
その広さ、東京ドーム4、5個分て感じでしょうか。
着いてみてまずはその規模のでかさに驚きましたね。
こんな広い会場でやるのかいと。
行きの電車でも同じく買い付けに来たのであろう複数の日本人の方に遭遇しましたが、
各国から業者が買い付けに来ている様子が伺え。
そうか、この人らはライバルなわけだな!負けるか!と、
挑まれてもいない戦いにこの身を投じるに至ったのですが、
まあ各ブース様々なアンティークが並んでいるのですね。
皿やフォークなどの食器、キッチン用品、空き缶、バスケット、家具類、おもちゃ、本やアクセサリー、
洋服、楽器にどこかの店で使用されていたであろう看板やら何かの部品やら表札やら。
大きいものから小さいものまで様々並んでいるのです。
きちんと系列立てて並べている店もあればごちゃごちゃと箱にぶっこんでる店もあり。
中には「え、ここゴミ捨て場?」みたいに芝生の上に無造作に置いてあるところもあり。
そんな店内を眺めながらめぼしい物を発掘して行くわけです。
100年前までの物はアンティークでそれ以前のはヴィンテージなんだそうで。
100年言うたら何世代分なんだろうと思いつつ、
それだけの時を経て現在にこれが残っていると思うと感慨深いものがありましたね。
椅子ひとつとっても様々な時代の人々がここに腰を下ろし生活をし、
その時代の風景を見つめて来たわけです。
傷や落書きさえ前の持ち主たちの物語を受け継ぐようでいい味に思えるのですよね。
タイムマシンは残念ながら現存しませんが、
100年もの時をくぐり抜けて来た物言わぬ歴史の証人として(人じゃないですけど)、
ある意味タイムマシンに乗って来たようなものじゃないかとしみじみ見入ってしまった私です。
子供用の馬の乗り物の遊具とか、この馬は100年近く子供たちを乗せて走り続けて来たのだなと思ったり。
ギターなどもありましたが(ボロボロで鳴らないので買いませんでしたが)、
長い時代に渡って音を奏でて来た物と見ると魅力的に思えるのですよね。
(店のディスプレイに使うのか古いチェロを買って行く人を目撃しました)
ちゃんと音の出る古いオルガンなんかもあり欲しいと思いましたが、
持って帰る術がないので断念しましたけどね。
古い物特有の埃の匂いに実家の物置や押入れで懐かしアイテムに出会う気分を思い出し、
国も時代も違うけど懐かしも感じ、宝探し気分で楽しかったですね。
高級品ばかり扱う店もあれば「これほぼフリマじゃねーか」みたいなしょぼい品揃えの店もあり、
まさに玉石混交といった感じなんですが、
値段もまとめてディスカウントしてくれるところもあれば交渉しても絶対下げない店もあり。
高く吹っかけて来る店にはどうせ日本語わかんないし
「足元見てんじゃねーぞボケ」と捨て台詞を残したりしましたけどね。
そういう時に限って近くに日本人がいるという(笑)。
同じ時期に巣巣の岩崎さんもラトビアに買い付けに行っていたようですが、
日本の女性が単身で来ているパターンが多いので驚きましたね。
名古屋から来たという方と会場で交流しましたが。
私などカツアゲにビビる中学生みたいな気分で震えながら来たというのに。
しかし買い付けに来ている方はみなタフに交渉して出来るだけ安く買おうとするんですね。
店の者は高く売ろうとするし。
ある店で5ポンド付いてる商品が安くなるかなと思いスギちゃん似の店員に値段を聞くと
「それは7ポンドだぜい〜」と言うので「嘘つけ、5ポンドって書いてあるやん」と言うと
「あ、それとそれとそこら辺にあるやつ全部で10ポンドでいいぜ〜、ワイルドだろ〜」となり、
結局1個いくらなんだ、最初の7ポンドの申告は何なんだと
イギリスのスギちゃんに翻弄されるくだりもあったんですが、
まあ骨董なんてのは値段があってないようなものですからね。
(もちろん相場はありますけども)
嫁は「お、これは!」「これは買いかも」「うーむ、高いな、見逃そう」などとブツブツ言いつつ、
ハンターの如き鋭い目で商品をチョイスし。
店に合う可愛い小物などをディグしておりました。
この日はフェアの2日目だったんだそうで、そんなに掘り出し物はなかったみたいですけどね。
(良い物は初日に売れてしまうのだそうです)
そんなわけでリンカーンであれこれ買い付けそれをせっせと運び、
また電車で2時間かけてホテルに戻ったという次第です。
(私は運び屋という役割なわけです。それだけ聞くと怪しいですが)


それにしても現地は思ったよりも5割増しで寒く、
さすがに寒いことはなかろうと油断していた私は持って来た服を総動員してこれでもかと重ね着し、
ぶるぶる震えながら歩き回ったんですが、
五十嵐を寒がらせる会のイギリス支部の会員がいたんだなあと空を仰いだ次第です。
イギリスにいても寒い。
そんな運命なのかと思いつつ次の日へ。