絶妙アンサンブル 貸切り図書館13冊目

先日鎌倉molnで催された「貸切り図書館13冊目」も無事終了しました。
たくさんのご来場をどうもありがとうございました。
今回はyojikとwandaショピンの2組をお呼びしまして。
この2組、絶対に相性良いに違いないと思ってお誘いしたんですが、やはりばっちりでしたね。
素晴らしい歌の共演を見ることが出来ました。
yojikとwandaさんは音源にイトケンさんが参加しており(ライブにも時折参加してます)、
さらに録音を担当しているのが山田バンドでご一緒している上野さんで、何かと縁があり。
音源を聞かせていただいたところ、これがとても素晴らしく、
「この歌を生で聞きたい!呼んじゃえ!」ということでお誘いしたというわけです。
ショピンさんは前々からお誘いしてたんですが、メンバーさんそれぞれ忙しく。
今回ようやくタイミングが合い、出演していただける運びとなりました。
ギターのタカハシペチカさんには以前自身のイベントに呼んでいただいたりしたんですが、
最近ご無沙汰しており。
久々に絡めて良かったです。


yojikとwandaのお2人はその凛とした歌声と洗練されたサウンドからは想像つかぬナイスな面白キャラで、
男性ギタリストのwandaさんは汗をかきながら不思議な動きをしながら一心不乱にギターを弾き
(しかしギターのテクニックは素晴らしいのです)、
ぼそぼそとキョドりながら繰り出すトークはぐだぐだながらもキラリと光るオモシロがあり。
その彼にビシビシと厳しくツッコミを入れる女性ボーカルのyojilさんとの掛け合いが
漫才を見ているようでとても面白かったですね。
その2人の様は部下と上司のようであり、弟と姉のようであり。
童話「おおきなかぶ」をモチーフにした楽曲では音楽コントのような場面もあり。
yojikさんがアドリブとおぼしき氷川きよしネタや嵐ネタをぶっこみ戸惑うwandaさんという図式に
会場には「何なんだこれは」という驚きとやがて爆笑が巻き起こっておりました。
そんなオモシロが展開された後にぐっと来る曲を歌うのだから最高なわけです。
名曲「I Love You」には私もついつい落涙してしまいました。
(本当に良い曲ばかりなのでぜひアルバムを聞いていただきたく思う次第です)
アーティストにお勧めの本を紹介してもらうというコンセプトの貸切り図書館ですが、
何とwandaさんは現在図書館に勤務しているのだそうで。
このイベントに出て貰うに相応しい人材じゃないか、何を紹介してくれるんだろうと期待していたら
「五十嵐さんすみません、本を持って来るのを忘れました」というまさかのご報告があり。
「今さっき近くの古本屋でも探したんですがなくって」とのことで、
wandaさんはエア状態での本の紹介となりました。
(本を忘れて来たのはtico moonの影山さん以来です)
そんなwandaさんはというと手塚治虫著「きりひと讃歌」をチョイスしてくれて。
これはyojikさんに勧められて読んだそうなんですが、
読みながら感動で号泣し、熱い感想メールをyojikさんに送ったというエピソードを語ってくれました。
(コンビ間でそういうやりとりがあるの良いなと思いました)
yojikさんはというと中勘助著「銀の匙」を紹介してくれて。
一部朗読もしてくれ、歌詞にこの本が登場する曲があるんだそうで、続けて歌ってくれました。
この本の「10頁目」が歌詞に出て来るんですが、
聞きながら実際に10頁目を読んでみたくなりましたね。
yojikさんはもう1冊「きりのなかのはりねずみ」という絵本を紹介してくれて。
自身の名前のyojikとはロシア語ではりねずみという意味なんだそうで、
いわば自己紹介を絡めての紹介だったんですが、
これはアニメにもなっているそうで、両方ともじっくり見てみたいなと興味を惹かれました。
本の紹介含めとても魅力的なステージでした。
お2人のバンド編成でのライブも見てみたくなりましたね。


続いて登場のショピンはドラムを含めた4人編成で。
ドラムの隣にはウッドベースが置かれてるし、
ペチカさんは様々なおもちゃ楽器を並べた台を目の前に置いてるし
(この台にも人形型の楽器が付いているのです)、
みなリコーダーだのヴァイオリンだの様々な楽器を駆使するのでステージ上がぎゅうぎゅうだったんですが、
みなさんファッションも個性的なのでmolnの雑貨とも相まって、
まるでおもちゃ箱に4人組の楽団が詰め込められたかのようで良い雰囲気でしたね。
みなさんリハを入念にしておりましたが、様々な楽器が織り成す繊細なアンサンブルがとても心地良く。
そこに野々歩さんとペチカさんの力強い歌声が乗り、
ノスタルジックで不思議な世界観の歌詞が空間をショピン色に染めておりました。
ペチカさんのおもちゃ楽器を乗せる台に付けられた人形型楽器が突然動き出し、
音を奏でるのを見たお客さんが「えっ、何あれ?」と二度見する様が面白かったですね。
(あれは足で操作してるんですけどね)
色々な音が賑やかにステージを彩るんですが、見た目にも面白くお客さんも喜んでいるようでした。
本の紹介のくだりではまずペチカさんが稲垣足穂著「一千一秒物語」を紹介してくれて。
ショピンのほとんどの歌詞を書いているペチカさんのルーツは足穂なのかと合点がいく感じでしたね。
ベースの田中肇さんは赤瀬川原平著「新解さんの謎」と南伸坊著「仙人の壺」の2冊を紹介してくれて。
新解さんの謎」は新明解国語辞典の語釈の面白さに着眼した本で、
奇しくも前回私が紹介した本が新明解国語辞典を作った人の伝記本だったので、
勝手に繋がった感があり「おお!」と思ってしまいました。
(こういう繋がりみたいなのがあると嬉しいものなのです)
ドラムの内田武瑠さんは宮沢賢治著「注文の多い料理店」を紹介してくれて。
新潮文庫版のを持参して来てくれたんですが、かなり年季の入ったくたびれ具合で。
随分読み込まれた感が伺えたんですが、聞くと大学の卒論を賢治で書いたんだそうで。
読み込まれた本というのは良い佇まいをしているものです。
そんな佇まいの本を片手に賢治の魅力を熱く語ってくれました。
ボーカルの野々歩さんは「ぼうぼうあたま」という絵本を紹介してくれて。
わざわざ実家に帰って探して来てくれたそうなんですが、
子供の頃に熱心に読んでいたのでどのページも鮮明に覚えているとのことで。
今の大人の目線で読むと残酷な描写が多く、実際本書を問題視する人も多いんだそうですが、
子供の頃は何も気にせず大好きで読んでいたそうで。
読ませる物に関してもっと子供の感性にまかせても良いのにということを語っていて、
なるほどなーと思った次第です。
さらには会場に来る前に寄った鎌倉の絵本専門店で
偶然この「ぼうぼうあたま」の仕掛け仕様の絵本を発見し、購入したとのことで。
実際ステージ上でその仕掛けっぷりも見せてくれました。
(こういう出先での偶然の本との出会いというのが稀にあるのですよね)
メンバーみなさん好きな本を語る時は嬉しそうで、
そんな本をバックグラウンドにしてこの音が生まれているのかと思うと
聞き方もまた変わってくるものです。
そして知らない本を紹介されると読んでみたくなるもので、
貸切り図書館、良い企画だなあと改めて自画自賛してしまった次第です(笑)。


yojikとwandaさんとショピンさんの間にも交流が生まれていたようですし、
molnも気に入って貰えたようで全体良い空気感で終えることが出来ました。
また何かの折に双方お呼びしたいものです。
貸切り図書館、次回は12月21日(日)にTICAさんをお招きしてお送りします。
私の敬愛するギタリスト石井マサユキさんと武田カオリさんのユニットです。
どんな本を紹介してくれるのか今から楽しみです。
興味持たれた方はぜひにということで。