妖精のせい

鎌倉に引越したと思ったら三越の催事が始まり、
連日東京に通勤しているのですが、
かつてはお出かけ先だった鎌倉に帰って来るというのは何だか不思議なもので、
「第二章〜鎌倉編」みたいな別な物語の中にいるような気分を味わっています。
今のところ仕事に出かけて寝に帰っているだけなので特に大きな変化はないんですが、
朝晩に見る風景が違うというのはなかなかに新鮮なものがありますね。
神社の側や細い路地などをくぐり抜けるように走りながら、
街の景観に自らを馴染ませるように自転車を走らせています。


それにしてもまだ荷物が片付いていないので、
あれはどこにあるのだ、と物探しの連続で、
私はここ数日どうにも爪を切りたいのですが、
爪切りがどのダンボールに入っているか一向にわからぬのです。
いつも入れておいた箱は発掘されたんですが、そこには入っておらず。
ここかな?と思うところにも見当たらず。
引越しの最中に爪切りだけトラックから落ちたのか、
爪切りが無謀を起こし脱走を図ったのか、
引越し業者の中に五十嵐に爪を切らせないの会の会員が紛れこんでいて
私の爪を伸び放題にせむと黙って持ち帰ったのか、
鎌倉に住む妖精たちが夜中に爪切りを外へ持ち去ったのか。
そんな忽然と消えるものなのでしょうか、爪切りというのは。
夜中にパチパチという音が聞こえると思ったら
妖精が爪を切っていたなんてファンタジーが起こり得るんでしょうか。
そもそも妖精も爪が伸びたり髪が伸びたりするんでしょうか。
優雅にマニキュアを塗ったりするんでしょうか。



今なら硝子に爪を当ててキイイイ!というノイズを綺麗に奏でられるなあと思いながら
伸びきった我が爪を眺めぶるぶる寒さに震えている私です。
春はまだでしょうか。