遥かなる焼き鳥を求めて

先日、高橋徹也氏から「鎌倉に行きます。もし時間あれば晩飯でも」というお誘いメールが唐突に届き。タカテツさんと鎌倉で食事となるとどこが良いかなと思案するも思い浮かばず、まあ本人に希望を聞けば良いかと嫁と共に待っていると春風に乗って颯爽と細身の青年(そう、それがタカテツ氏)が笑顔で現れ。
聞けば昼間に鎌倉に着いてディモンシュでオムライスを食べ、その後八幡宮を見たり街をぶらついたりしていたらしく。「ひとりでですか?」と聞くと「ええ、ひとりで」とのことで。相変わらず孤高を貫いているなと思いつつ、そういえば昼間に「甘納豆の試食コーナーで本気食いしてました。もう買う必要がありません」という謎の報告メールも入って来てたのを思い出し、ひとり鎌倉で甘納豆を本気食いしていたその姿を想像すると面白過ぎてタカテツさんだな〜と思ったんですが、後で彼のツイッターを見たら全く同じ報告を世界に発信してて、さらにタカテツさんだな〜と思った次第です。
そのタカテツさんに食事の希望を聞けば「焼き鳥など良いですね」とのことで、そういえば以前から焼き鳥への興味を宣言していたなと思い、私がよく行く美味しい焼き鳥屋さんに行ってみたところ生憎店は満員で入れず。仕方なく入ったことはないけど気になっていた焼き鳥屋さんにトライしてみるかという話になり。
いざその店の前に着き佇まいを見て「うーむ」と一瞬躊躇したんですが取りあえず入ってみるかとガラガラと開けて入るもいきなり店主から「ドアは最後までちゃんと閉めて!」と怒られるという事態が起き。「タカテツさん鎌倉で怒られる事件」として瞬間私の脳裏に記憶されたのですが、その時点で我々のテンションはガタ落ちなのであり。店内は薄暗く、おばあちゃん家の曇りの日の暗い台所のようなどんより具合で、店のおばちゃんは「注文は?」と面倒くさそうに聞くので、迷いながらも焼き鳥を数本頼み。タカテツさんがウーロン茶を頼んだ時点で「何だ酒飲まねえのか」的な雰囲気も一瞬発信されてたんですけどね。
昼間の鎌倉での孤高っぷりを聞きながら待っていると果たして焼き鳥がやって来て。いざ食べてみるも何というか微妙な感じなのであり。「美味い」のひと言を素直に発せぬサムシングがそこにあるのであり。何よりも店の雰囲気がどうにもどんよりして居心地が良くないのですよね。
そんな中タカテツさんが「トイレどこですか?」と聞くと「そこのドア出て左に数歩!」とまるで標語を読むかのように、そんなことも知らねえのかテンションで居丈高に言うので、私は内心「知らねーし!標語か!『マッチ一本火事の元か』!」と思ったのですが、これが後に「タカテツさんトイレ標語事件」として語り継がれることになることは必至だなと確信をもした次第です。おばちゃんは「食べ終わったら皿を上げてくれる?」と毎回小言のように言うので「お前は小うるさい姑か」と思いながら聞いていたのですが、最後には注文しないならもう帰ってアピールの如く「食べ終わったら皿を上げてね〜」と念を押すので、そそくさと店を出た次第です。
店を出る時「ドアを最後まで閉めないのが正解でしたかね」とタカテツさんが言うので「さすがですな!」となったのですが、斯様なハズレもたまにはあるものです。
このままタカテツさんを鎌倉から帰すわけにはいかないので焼き鳥リベンジをしようと相成り。試しに最初に行って振られた店に戻ってみると何とタイミング良く入れて。こちらの店は活気もあり明るく、何よりも雰囲気が良いのであり。そこで焼き鳥を数本頼みつつさっきの店の話をしているとタカテツさんが「何だか遠近感のおかしい店でしたね」とタカテツ風の言葉で評したのでほほう、と感心した次第です。
そんな中やって来た焼き鳥を食べるとタカテツさんから「美味っ!」というワードが反射的に飛び出し。その後も「これは美味いなあ〜」としみじみ焼き鳥を堪能してくれたので、タカテツさんに焼き鳥を堪能してもらう会の会長としては(そんな会が発足されてたのかという話ですが)ガッツポーズをした次第です。
すっかりリラックスモードになった我々は楽しく会話し、タカテツさんに至っては梅酒を嗜み(居酒屋でホットコーヒーを飲むでお馴染みの彼が!)、良い宴となりました。
彼の学生時代の先生や同級生の話が面白く、いつも蛾を持っているという通称蛾人間の話や(「蛾人間てのがいましてね」で始まる漫談のようでした)貧乏過ぎて家で全裸で過ごしているという同級生の家を見に行った話やその後その子が自ら放火し家が焼けた事件などタカテツトークショーが盛り上がり。「だつぼーう」が口癖の先生の話なども何か面白かったですね。(その後我々の間で「だつぼーう」が流行りました。)
タカテツさんは昔ラジオ番組もやっていたそうで、この声で面白エピソードが聞けてマニアックな選曲が聞けたら最高だなと思った次第です。どこかの局でやれないものでしょうか。
そんなわけでタカテツさんとの鎌倉の夜は楽しく幕を閉じました。また行きたいものです。
「だつぼーう」と言いながら帰路に着いたのは言うまでもありません。良き春の夜でした。