黄金町メモリー

しかし4月もあっという間に過ぎてしまうのであり。あれやこれややっているうちに1日が終わるし、あれやこれややっているうちに1週間が終わるし、このままだと1年もあっという間だなとあせりながら過ごしているこの頃です。
スマホの画面を指でぐいんと伸ばすように1日を伸ばせないものかと思ったりするのですが、あれは画面を寄せて対象物を大きく見せているだけで実は実質的な大きさは変わらないのであり、そもそもがそうやってスマホの画面などを頻繁にいじっているから時間が無駄になるのだという事実に気付かされ、そっとスマホを傍らに置くといったような状況です。斯様な時間泥棒が普及するだなんて誰が想像したでしょうか。
時間泥棒といえば酒を飲むというのも挙げられるかと思うんですが、こちらは心の平静を保つのに必須な時間でもあり、相変わらず毎日のように嗜んでいます。
先週は鎌倉のご近所さんと飲む機会が連続してあり、今朝などは仕事に出掛ける際にそのうちのひとりにばったり会い「あ、駅まで乗って行きます?」と車で送って貰ったりし、「すっかり鎌倉の街に解けこんでる俺」の図が展開され密かに悦に入ったのですが、それも酒のおかげだと思うと決して無駄な時間ではないのです。
先日は先日で黄金町にある酒房ぴーというお店が今月閉店するとのことで、そこの常連のTくんと飲みに行くことになり。
この店は数年前に元maoの下段氏に連れて来られたのが初めで、それから何回か訪れており。試聴室というライブハウスが近くにあるのでミュージシャンなども利用している店で、安くて美味くて過ごしやすい良店なのであり。
近くに引っ越して来たから行きやすくなったと思った矢先の閉店なので残念なのですが、私自身前に訪れたのはfwjが試聴室でライブを行った2年前なのであり。こういうお店がなくならないように定期的に通うことは大事だなと思った次第です。
そんなぴー店内に入るとすでにお客さんでいっぱいで、何故か大谷能生氏がキーボードを弾きながら歌っており。テーブルには彼が持ち込んだ80年代歌謡曲の歌本がわんさか置いてあり、トシちゃんだ聖子ちゃんだチェッカーズだのの表紙を見ながら飲むに至ったのですが、大谷さんと近所の子供が連弾している珍しい光景もつまみとして機能し、賑やかで楽しい宴となりました。店主さんにも久し振りに挨拶させて貰いました。
Tくんはこの店のかなりの常連で、隣にいたお客さんと「あの後どうしました?」的な会話をしており、斯様な交流の場がなくなるのはさみしいことだよなあとしみじみ思った次第です。
大谷さんと会うのはそれこそ2年振りくらいだったんですが、「俺、今度芝居に出るんだよ、しかも主役で」とのことで。批評家、音楽家として名が知られ、菊地成孔氏と共にラッパーとしてデビューしたと思ったら今度は役者としてデビューするというのだからえらいことです。「ちゃんと毎日4時間とかみっちり稽古してるんだよ」とのことで、そんな合間に近所の飲み屋にキーボード持ち込んでサザンとか歌ってるのだから身軽な人だなーと感心してしまった次第です。私も彼のように時間を有効に使いたいものだと思いつつも結局その日はしたたかに酔っぱらってしまい、千鳥足でスローな変速ビートを刻みながら家路に着きました。黄金町の思い出の場所がひとつなくなってしまったなあとさみしく思いながら。
好きなお店がある方はなくならないように適度に通うようにしましょう。そんな教訓を酒を飲みながら、80年代歌謡曲を聞きながら得た私です。