月夜に猫 貸切り図書館19冊目

鎌倉molnにて行われた貸切り図書館19冊目も無事終了しました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。今回はイノトモさん、近藤研二さんに加え、最後にはサプライズゲストとして山田稔明さんも飛び入り参加するという豪華な一夜となりました。
会場はおかげさまで満席になり、まずは一番手の近藤研二さんが登場し。近藤さんはソロ活動を始めてまだ間がなく、今回のライブが2回目か3回目とのことでしたが、楽しいトークを挟みつつの落ち着いた演奏で、長いキャリアを感じさせる流石のステージングでした。ガットギター独奏によるバッハなどのクラシック曲や自作曲、中川イサトさんのカバーなど、繊細かつ華麗なプレイは見てて惚れ惚れするほどで、ギター1本でこれだけの豊かな音が出せるんだなと感心しながら見てしまいました。柔らかな音色もとても良かったですね。(ノイマンのマイクを使用されてましたが、これが良い音でした。)
本の紹介のくだりでは稲垣美晴著「フィンランド語は猫の言葉」を挙げてくれて。こちらは著者によるフィンランド留学の経験を面白おかしく綴った1冊ですが、このタイトルの由来というのがフィンランド語では相槌を打つ時に「ニーン、ニーン」と言うらしく、それを聞いているとまるで猫と喋っているかのように思えるところから来ているらしく。実は近藤さん、先ほどモイという名前の子猫を飼い始めて、その子が現在インスタグラムで大人気なのですが(私も毎日見ているのですが、可愛い過ぎて萌え死ぬ勢いです・笑)、そのモイというのがフィンランド語でこんにちはの意味なんだそうで。フィンランドにオーロラを見に行ったこともある近藤さんとしてはこれは手に取らざるを得ない1冊だったとのことです。インスタのフォロワー数が激増中だという愛猫モイの話をする時の近藤さんは実に嬉しそうで、何だか見てて微笑ましかったですね。今後はこんにちはの代わりに「モイ!」と言ったり、会話の節々に「ニーン、ニーン」を入れてみるとフィンランド気分、猫気分を味わえて良いかもしれないなどと思った私です。
近藤さんはさらにもう1冊、アニメ作家加藤久仁生さんによる絵本「えきのひ」も紹介してくれました。アカデミー賞を受賞した「つみきのいえ」をはじめ、近藤さんは数作加藤さんのアニメ作品の音楽を担当されてますが、この「えきのひ」を出版した頃に加藤さんのお母さんが亡くなられたそうで、ちょうど同じ時期に近藤さんもお母さんを亡くしたこともあり、読みながら共感するものがあったという話をしてくれました。この本は「ぜひ読んでみて下さい」と客席に回してくれたのですが、「持ち時間が50分だからひとり2分くらいね!」と時間を指定して客席の笑いを誘っておりました。
演奏中、会場からは自然に手拍子が出たり、終始笑顔で溢れる楽しいステージになり。近藤さんはその男前なルックスも相まって、貴公子然とした雰囲気で客席を魅了しておりました。ハイポジ栗コーダー、図書館など近藤さんの参加ユニットのライブを数々見て来た私ですが、ギタリスト近藤研二を存分に堪能出来るソロも良いなあとすっかり楽しんでしまった次第です。
そして次に登場したイノトモさんはmolnでライブをするのは今回で2回目ということもあり、すっかりホームであるかのような落ち着いた雰囲気で歌ってくれました。彼女の母性溢れる歌声は癒しであり祈りのようであり。かと思えばMCでは親しみやすいお姉さんキャラであり、魅力的な歌い手さんだなあとしみじみ思いながらそのステージを存分に楽しみました。いつもの馴染みのあるイノトモナンバーに加え「朧月夜」など季節のうたも歌ってくれて春の夜を演出してくれました。
本の紹介のくだりではアイリーン・ハースの絵本「わたしのおふね マギーB」を挙げてくれて。これは幼い頃からのイノトモさんの愛読書だそうで、「ちょっと読んでみますね」と立ち上がってその場で読み聞かせをしてくれました。多分息子さんに何度も読み聞かせて来たであろう彼女の朗読は心地良く、会場が物語の舞台へと自然に移り変わっていきました。客席に小さいお子さんもいたのできっと喜ばれたことでしょう。イノトモさんらしいチョイスだなと思いました。
もう1冊、イノトモさんが紹介してくれたのはリンダ・キーン著「ジョンの魂との対話」という本で。これはジョン・レノン亡き後、ジョンと筆者が架空の対話をするという内容で、ジョンが亡くなった時のことを「いやーあの時は大変だったさ」などと本人が語り出すという勝手な想像が暴走するトンデモ本で(笑)、話題は哲学から宇宙にまで及ぶジョン不在のジョン本として如何なものかという代物だそうですが、イノトモさんはこれが大好きで買っては知り合いにあげているそうです。今アマゾンで見たら中古で2円だったので(笑)ネタで買ってみても良いかなあと思った私です。これを紹介した後にジョンのカバー「ジュリア」を歌ってくれました。(これがまた染みました。)
後半には近藤さんも再びステージに合流して。デュオで演奏してくれました。歌に寄り添う近藤さんのギターがまた優しく素晴らしく。「ムーンリバー」など美しかったですね。リハ中イノトモさんが「わー近藤さんに全曲参加して欲しいわ〜」と思わず漏らしてましたが、実に素敵過ぎるアンサンブルでした。近藤さんはイノトモさんが合唱をやっていたことをすぐに見抜いたそうですが、それはイノトモさんの弾くギターの音が歌メロに対してハモっているのを聞いてわかったそうで、流石プロのアレンジャーは聴くところが違うなーと感心した次第です。
その後、アンコールでは会場に見に来ていた山田氏も飛び入りでステージに合流し。近藤さんの「眠れ ねこ ねこ」とイノトモさんの「坂道」を演奏してくれました。この3人は同じ九州出身で現在は吉祥寺在住のご近所さんという不思議な繋がりで、山田氏と近藤さんに至っては猫仲間で一緒にユニットを組んだそうで(この日は打ち合わせもなしに衣装がお揃いのボーダーになっていました)、近藤家のモイちゃんに会いに週5日は顔を出しているという山田氏の歌う「眠れ ねこ ねこ」はモイちゃんの顔が浮かぶ優しい演奏でとても良かったですね。イノトモさんにも「眠る猫」という曲がありますが、「私、そう言いながら実は犬派なんだよね〜」と告白しておりましたが(笑)。3人での演奏はお客さんには嬉しいサプライズとなりました。「坂道」では会場の全員が軽やかに坂道を駆けるかのように手拍子で一体になり大団円を迎えました。紫陽花の季節を彩る素晴らしいステージでしたね。
終演後は近くのワインバーでみんなで軽く打ち上げをし。みなさん揃って鎌倉から吉祥寺に帰って行きました。今回は吉祥寺チームの鎌倉出張といった様相でしたが、ぜひまた鎌倉にお出掛けしに来て欲しいものです。
貸切り図書館、次回は6月13日、いよいよあがた森魚さんが登場します。彼の敬愛する稲垣足穂の話など聞けるかもしれません。ぜひご来場いただけたらと切に願う私です。
心よりお待ち申し上げております。ぜひに。