吉祥寺猫ツアー記

猫のミルクが家に来て3ヶ月ちょっとになりますが彼は日に日に成長しており、ふとした時に「あれ、この子こんな大きかったっけ」と貰ってきた当初の手の平サイズだった頃と比較し、その成長の早さに嬉しいようなさみしいような気持ちになるのですが、猫は人間の4倍の早さで年を取るとか聞くし、そのうち私の先輩くらいの年になるのかもしれないと思うと幼き今時分を存分に愛でておかねばならぬという使命感に駆られ、わしゃわしゃと顔や身体を撫で回しては「やめて〜」と逃げられるというラリーを繰り返しています。猫は年月を追う毎に可愛さを増していくようです。
そんな折ですが先日吉祥寺に行く用事があったので猫先輩である山田氏の家へ寄り、彼の愛猫ポチ実詣でをして参りました。ポチ実がやって来たニャーニャーニャー、の騒動は見聞きしていたんですが、実物のポチ実にはまだ会ったことがなかったのです。現在吉祥寺コピスの5階では山田家のポチとポチ実、近藤研二さんのマルオとモイの猫写真展が催されてるそうで、その現場で山田氏と待ち合わせをし、まずはそれを見学しまして。大きなボードにそれぞれのベストショットやチラシやグッズなどがわんさかと貼られ、「俺の猫可愛いでしょ、見て見て!」という猫愛が存分に伝わって来る内容でしたね。通りすがりの方が見ながら「え、ご本人ですか?」と山田氏と会話を交わしておりました。それぞれの猫ちゃんのファンの方は見に行ってみては如何でしょうか。
その後山田家へ移動し、いよいよポチ実とご対面となりまして。山田氏のインスタグラムでは毎日リラックスした表情を見せているポチ実ですが、山田氏以外の人間が来ると逃げ隠れて姿を現さないほどの人見知りだそうで。そんな会えるかどうか微妙な状況ながらも彼は事前に部屋にポチ実を閉じ込めておいてくれたらしく。果たしてその作戦はうまくいくかしらとドキドキしながらいざ我々が部屋に入るとしかしポチ実の姿はそこにはなく。山田氏が「あれ、チミ、どこだ〜?」とソファーの下を覗くと「わ。奥の方で固まっている〜」とのことで。そういやうちのミルクが初めて家に来た時もソファーの奥に籠城し出てこなかったなあと思い出しながら私も覗くと、奥の暗がりで身を固く警戒しながらこちらを見ているポチ実がおり。警戒しながらもそのどんぐりまなこは実に可愛いのであり。私は「わ、本物だ〜、かわゆす!」と興奮し、即座に四つん這いになって「チミちゃん出ておいで!」と声を掛けるも、ポチ実は「こわい人が来た!」という目で私を見て西野カナばりにブルブル震えているのであり。私は猫好きなのだよ、自分でもミルクという猫を飼っているのさ、だから触らせてくれよとプレゼンするもポチ実は出て来ず。何とか写真くらい撮れぬものかと山田氏に奥をライトで照らしてもらい、その光を頼りにソファー下のポチ実をパパラッチよろしくカシャーカシャー撮ったのですが、「脅える猫」というタイトルしか付けられぬような写真しか撮れず。新調したアイフォーン6sのカメラもポチ実の前ではその威力を発揮出来ぬのです。ひとまず知らぬ振りして雑談でもしてたらそのうち出て来るかもしれないとのことで、そこからコーヒーなど飲みつつ雑談しつつ10分ほど待ったでしょうか。ふと横を見るとポチ実がそぉ〜と忍び足でソファーから出て来まして。私は「出て来た!シャッターチャ〜ンス!」と再びテーブルの下に四つん這いになり、植木鉢の並ぶ辺りに佇むポチ実をパパラッチよろしくカシャーカシャー撮り。そこから何とか直接触れ合うことは出来ぬものかと指を出してみたり渾身の猫撫で声を出してみたり呪文を唱えてみたりあれこれ試みたのですが、チミは「やっぱ怖いよう〜」と無情にも再びソファー下に籠城してしまい。その後出て来ることはなく。ソファーの上から手を伸ばし何とか背中辺りに触ることは出来たのですが、こちらとしてはそんな反則技など使わずにポチ実ちゃんと触れたいわけです。撫でたり抱いたりしたいわけです。しかし初対面の私にはそうそう心を許してくれないのです。「先代のポチは喜んでお尻を触らせてくれたぞっ」と常連客が若い二代目に言うような文句を言ってみたところで通ずるでもなく。ポチ実との初対面は写真止まりに終わったのです。道のりは遠きかなです。
そんな少々心残りなポチ実詣でに続いてはモイ詣でをしようと今度はご近所の近藤研二さんのお宅に「こんばんは〜」とお邪魔しまして。近藤モイちゃんは相変わらずフォトジェニックで美しく、挨拶もそこそこに私は再びパパラッチの如くカシャーカシャー撮影していたのですが、モイちゃんは前回より少々暴れん坊になっており。私が触れようとすると「ガルルッ!」とパンチを繰り出し、手に噛み付いて来るのです。触るものみな傷付けるギザギザハートの子守唄状態なのです。チャラッチャッチャッチャチャーラ、なのです。(あ、ちなみに尚之のサックスフレーズです)。モイからしたら「遊ぼうよう!」と楽しく戯れているのでしょうが、なかなかに痛いのです。それでもめげずにカシャーカシャーその美猫っぷりをカメラに収めていたのですが、ふとした時近藤さんが「モイ〜」と抱きかかえようとすると「ガルルッ!」とモイの強烈なパンチが近藤さんの頭を直撃し。近藤さんは「あいたたたたたたたっ!」と悲鳴を上げるという事態になり。私にはその鮮烈なるパンチがマイク・タイソンのそれに見え、「近藤さん、耳に気を付けてっ!齧られないでっ!」とタイソンVSホリフィールド戦が頭をよぎったほどなのですが、ホリフィールド近藤さんは「んもう、モイは〜、痛いよう〜」と傷を負いながらもあくまで優しいのであり。私もミルクに噛み付かれた時など「こらっ!」と怒声を上げたくなる瞬間がありますが、上げたとて猫には通じないので「まあいっか、てへへ」となるしかなく。猫を飼っていると斯様な怪我が絶えないという宿命を目の当たりにし、それでも可愛いのが猫という厳然たる事実を再認識するに至ったのでした。そんな近藤さんの姿に山田氏は横で普通に爆笑してましたけどね。
その後みんなでファミレスに行きぐだぐだ食べて飲んで帰ったという楽しき吉祥寺猫ツアーでした。自宅に帰り「どこ行ってたんだよう〜」とミャーミャー鳴くミル坊の姿を見るとやっぱ何だかんだ言ってうちの猫が一番可愛いなという認識に至り。聞いたら山田氏も結局ポチ実が一番可愛いなという結論になっていたらしく、それぞれ自分の家の猫が一番可愛い、よその子は二番目に可愛いという猫飼いあるあるが確認されたのですが、一番も二番もみんな「可愛い」「好き」で満ちているのだからこんな平和なことはないよなあと思ったりした次第です。
そんな山田氏によるポチとポチ実との暮らしを綴った小説「猫と五つ目の季節」がミルブックスから発売になります。私も推薦コメントを書かせていただきました。こちらも手に取ってたいただけたらと思う次第です。ぜひに。