せんきょくがかりによろしく

今出店しているデパートの店内BGMで延々とJポップが流れているのですが、有線とかじゃなく特定のCDが繰り返しかかっており、これがなかなかの苦行なのです。
初日はサザンオールスターズのベスト盤と思われる音源が流れており、この日は早朝搬入だったので朝の6時から「マンピーのGスポット〜」などと時間帯にそぐわぬ歌詞を聞きながら作業していたのですが、開店までの作業用BGMかと思ったら店が開店してからも相変わらず「マンピーのGスポット〜」などと桑田氏はご陽気に歌っており、サザンタイムがいつまでも終わらないのです。「胸さわーぎのこーしーつき!」と歌っておるのです。サザンは良いんだけとさすがに同じCDを10時間近く聞き続けるのは何だなあと思いながら仕事をしていると夕方からは今度は小田和正のベスト盤に代わり。かといってこれも同じCDの繰り返しで。「言葉に出来ない〜」と何度も歌われるので「そう言わず頑張って言葉探せよ〜」などと悪態をつきながら聞いていたら次はZARDのベスト盤らしきものに代わって。このJポップ王道パターンの流れは凄いなあと感心しながら聞いていたのですが、ZARDのループというのがなかなか精神に来る案件なのです。「負けないで〜」と何度も励まされながら、こんな調子で1週間Jポップを聞かねばならないなら「負けるかも〜」と根を上げそうになった私がいたのですが、仕事場に行かないわけにはいけません。
次の日何が来るのかと怯えながらデパートに行ってみると、この日は「いきものがかり」がかかっており。またも堂々たる王道なのです。延々「ありがとうって伝えたくて〜」とか「帰りたくなったよ〜」とか「ジョイ!ジョイ!ジョイジョイジョイ!」などの歌が私に襲いかかるのです。しかもこの日は夕方になってもCDが変わらず、開店から閉店までフルでいきものがかりを聞かされるという地獄が展開され。さすがの私も否が応でも歌を覚えてしまい、この状況に嫌気が差して帰りたくなり、思わず「帰りたくなったよ〜」のフレーズがメロディを伴って口をついてしまったのですが、「いや違う違う、このメロディから帰りたくなったはずなのに自ら歌ってしまってるじゃないか!ミイラ取りがミイラになってるじゃないか!」とひとり苦悶したのですが、何しろ一日中同じものを聞かされるというのは苦痛でしかないのです。いきものがかりばかり流さないで下さいとせんきょくがかりの人に訴えたくなったのですが、せんきょくがかりの人が誰なのかわからず。
この流れだと明日はコブクロかゆずのベスト盤が来るんじゃないかと一緒に出てる職人さんと予想し、さあ誰が来るかと次の日デパートに赴いてみると、我が耳に飛び込んで来たのはご陽気な「ジョイ!ジョイ!ジョイジョイジョイ!」なのであり。まさかのいきものがかり2連チャンだったのです。2日連続で朝から晩までいきものがかりを浴びせられるという新しい地獄を閻魔さまは我が身に与え給うたのです。かつて斯様な地獄があったでしょうか。しかも「いきものがかり ベスト盤」で検索してみるとどうやら今流れているのは彼らの2枚組のベスト盤のディスク2の方であると判明し。せめて次の日はディスク1に変えてくれよ!2日連続でディスク2をかけるなよ!と、姿の見えぬDJに文句を言いたくなったのですが、誰に言うて良いものかわからず。
さすがに気になるのでデパートの人にさりげなくBGMについて聞いてみると、この売場の担当者が選んだCDをかけているらしく、この音源が流れているのはこの売場だけなんだそうで。さすがにデパート内の他の売場はBGM然としたバラードやジャズやフュージョンが流れているんだそうで。そりゃそうです。高級ブランドの高価な洋服を選んでいるところに「マンピーのGスポット〜」とか「言葉に出来ない〜」とか「帰りたくなったよ〜」とか聞かされたらお客さんは帰りたくなってしまうかもしれません。BGMは大事なのです。「さすがにいきものがかり一日中はきついっすね〜」と冗談交じりに言うと「先週は福山雅治とかユーミンとかがかかってましたよ」とのことで。どこまでも王道!王道Jポップ!と感心したのですが、斯様な選曲をする人のCD棚に私や私の周辺のミュージシャンのCDが並ぶことはまずないんだろうなあとふとそのチョイスを乏しく思ってしまった次第です。まあ人の好みに文句つけるのもおこがましいですけどね。正直王道過ぎるのも何だなと思ってしまった私です。
しかしそんな私の何気ないひとことが功を奏したのか、次の日からBGMはお洒落な洋楽にすっかり変わってしまいました。クレーマーとなってしまったのでしょうか、私は。少し複雑な気持ちになったのですが、取り敢えず変えてくれてありがとうと伝えて欲しく思った次第です。せんきょくがかりさんに。
今回、BGMで万人のジョイフルを得るのは難しいという教訓を得た私です。名古屋にて。