みずいろの夜の科学

先日は恵比寿にて行われた山田稔明氏のレコ発ライブ「夜の科学vol.49-pale blue days」に、私も夜の科学オーケストラの一員として出演させていただきました。たくさんのご来場をどうもありがとうございました。
山田氏から「今年もアルバムを出すんだよ」と聞いて「え、曲あるの?」と心配していた私でしたが、過去の未発表曲集になると知ってなるほどと合点がいき。と言うのも彼が去年発表した自伝的小説「猫と五つ目の季節」には彼の若き日のまさに青春と呼ぶべき季節が描かれており、今回の新譜に収められた楽曲群はまさにその小説の季節の中で書かれたものが多く、発表する流れとしては最適なのかもしれないと思ったのです。おそらく物語を回想するうちに埋もれていた過去曲も同時に発掘され、改めて聞いてみたら「あれ、意外に良いじゃん」と再評価に至り発表する気になったのではないかと勝手に踏んでいるのですが、ファンの方にとってはおかげでそれを聞けるのだから喜ばしいことでありましょう。小説を読んだ後で聞くとサントラ的な感じで音楽で追体験出来る内容と言えるかもしれません。小説や猫をきっかけに入った方は勿論、古くからのファンの方もレア音源集として楽しめる好内容となっております。ぜひお手に取ってみては如何でしょうか。(などと宣伝しつつ。)
今回はそんな新譜「pale/みずいろの時代」のレコ発ライブということで、主に収録曲を中心に演奏しまして。音源と同じバンドアレンジの初披露と相成りました。今回アルバムでアレンジを主導した鍵盤の真里さんがライブでもバンドをぐいぐい引っ張ってくれて、とても熱のある演奏になったように思います。
そんな真里さんですが、先月愛車に乗って鎌倉に遊びに来た際に我が家にもちょいと立ち寄ってくれまして。もうすでに遅い時間だったし何やらお酒を飲みたそうにしていたので「もう飲んじゃったらどうですか。ウチに泊まって行けば良いんだし」と何気なく言ったら、その直後「あら、そう?いいの?!」とプシューとビールの缶を開けたので「あ、本当に泊まるんだ!」と内心ちょっと戸惑ったものの結局明け方4時くらいまでご陽気にワインなど飲んでしまい、次の日は次の日で真里さんの車で葉山までドライブを敢行し、海岸沿いの道を走りながら初夏の風を浴びるというトレンディドラマみたいな1日半を過ごしたのですが、そんなメンバー間の青春物語がライブ前に展開されたのも「みずいろの時代」というアルバムの成せる技なのではと思ったりしたのですがどうなのでしょうか。(違うでしょうか。)
今回私は前回に続きエビちゃんの代わりにベースを担当したのですが、イトケンさんとがっつりリズム隊組むのは初めてで何だか新鮮でしたね。新譜の曲は演奏していてどれも印象深かったのですが、コーラスの綾香ちゃんが上京したての頃に山田氏が課題曲として渡したという「セレナーデ」が心に響きましたね。これは当時山田氏が思い悩んでた時期に書いた曲だそうで、それを上京したてで不安だった綾香ちゃんが歌詞に自分の気持ちを重ねて歌ったのかなあなどと勝手に想像して「嗚呼、美しき師弟関係なり」としみじみしてしまった次第です。近藤さんのアレンジによるコード感が美しい「モノクローム」からの「月あかりのナイトスイミング」〜「光の葡萄」では先日の真里さんとのドライブ中に見た海に映る夜のライトを思い出したりなどしつつ。後半の「my favorite things」〜「太陽と満月」から「calendar song」への畳み掛けには思わず私も血が滾り熱くなってしまいました。私の中のロッカー(荷物入れる方じゃないやつ)が「イエーイ!」などと雄叫びを上げておりました。勿論心の中で。
中盤「幸せの風が吹くさ」という曲では録音に参加したベーシストの方のイトケン氏がゲストとしてベースを弾くとのことで、私は楽屋に引っ込むはずだったんですが、「五十嵐くんステージにいればいいじゃん」となり、その後「ただ立ってるのも何だから小物やればいいじゃん」となり、結局本番ではタンバリンを叩くことになり。ただぬぼ〜と棒立ちで黙々とタンバリンを叩いても「タンバリンに何かしらの遺恨を残した幽霊」みたいに見えるし、本番ではリズムに身を任せ我が人生史上最高にノリノリで動きながら叩いたのですが、結果的にタンバリンに何某の遺恨を残すことになってしまったのは如何なる所以でしょうか。終演後知り合いの方々に「どうでした?」と聞いたらみな「タンバリン、ノリノリでしたね〜(笑)」や「いやー、タンバリン〜(笑)」などと主にタンバリン関連の感想ばかり出て来て、出て来るのは良いとして文末に「(笑)」という、ネットで言うところの「www」みたいな意図せぬ笑いを生み出している現象が見受けられ、折角のかっこいいファンクチューンに面白さを足してしまったのではないかと後悔の念に駆られたのですが、そこはまあ私の内に幸せの風が吹いた結果だからと理解していただき、前向きに捉えるしかないなと思った次第ですけどね。今後みなさんの心の検索窓に「五十嵐 」と入れると「五十嵐 タンバリン」さらには「五十嵐 タンバリン www」という関連ワードが足される気がしてならないのですが、そこは甘んじて受け入れなければと思っているところです。ベーシストの方のイトケン氏とは共通の知り合いも多く前々からお互い認識していたんですが、ちゃんと話すのは初めてでご挨拶出来て良かったです。
終演後は水色のジャケットのCDが飛ぶように売れて行き。この日のドレスコードは水色ということで会場全体が水色に染まって夏を感じましたね。みなさん帰ってCDを再生しこの日のライブを反芻し楽しむと思うのですが、五十嵐のタンバリンの記憶だけは淡い感じに薄めていただけると幸いと思った次第です。それこそ水色の向こう側に。
そんな水色のレコ発ライブを経て山田稔明「pale/みずいろの時代」が発売になりました。ぜひよろしくお願いしますということで。