猫町に奏でる 夜の科学in下北沢-rhapsody in tricolor

もう先月のことですが、下北沢風知空知で行われた山田稔明with夜の科学オーケストラのライブ、ご来場下さった方々どうもありがとうございました。この日は山田氏の新刊エッセイ「猫町ラプソディ」刊行記念ライブということでしたが、我々演者にとっては丸々ライブを録音するというレコーディングの日でもあり、いつもと違った緊張感に包まれた特別なステージとなりました。
録音をするということでこの日はリハからバタバタで。全員で機材を搬入し、やれアンプをどこに配置するか誰がどこに立つかパズルのように位置を決め、自身も演者としてステージに上がる上野さんがエンジニアとしてマイクなどを立て、まさに手作りといった感じでステージが組まれて行きました。この日のシークレットゲストである近藤研二さんもリハから参加しまして。全員が近くに集まって弱音で演奏するとリハスタで演奏してるみたいで環境としてはやりやすかったですけどね。これで録音してなければ緊張せず存分に楽しめるのになあとちょっと思ってしまった私です(笑)。リハ後少しだけ時間があったので「行けるかも!」と思いディスクユニオンでレコを探ったりなどして(緊張をほぐす意味もあるのです)、早めに会場に戻ろうとしたら同じくディスクユニオンに向かおうとしている安宅さんとすれ違うという、レコ好きあるあるがあったりなどしていざ本番を迎えまして。
満員御礼のこの日は「どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと」から始まりまして。去年のツアーでもこの曲やったなと回想しながら演奏しました。この日のメンバーは山田氏のソロ初期を支えた顔ぶれで、セットリストも初期の曲が割と多めで当時のことをふと思い出したりする場面がありましたね。「home sweet home」とか「glenville」とか私が初めて参加した時にも演奏した曲ですし。私は途中参加だったのでこんな凄いバンドに参加出来て嬉しいという気持ちと、自分が足を引っ張っていたら申し訳ないという気持ちと両方ありましたけどね。(まあ今もその気持ちは継続中ですが。)でも楽しいという気持ちが毎回強いので、お客さんも同じように感じてくれるのではないでしょうか。ライブ中は緊張しながらもずっと楽しかったです。古い曲ばかりでなく新しい曲もたくさんやれましたし。草とten shoesでもカバーしている「小さな巣をつくるように暮らすこと」は「本家はこんなコード進行だったのか」と思いながら演奏しましたけどね。山田氏がライブでこの曲を弾き語りしている動画の抜粋を見ながら勝手にアレンジしたのでさもありなんですが。
中盤ゲストで近藤さんが登場した時は客席からどよめきが起き。前回は会場のボードに「シークレットゲスト近藤研二」と書かれてしまい、全然シークレットじゃないじゃん状態だったそうですが、今回はリハ後も外に出ず存在を極秘にしていたので(笑)サプライズが成功しておりました。「ポチの子守唄」の時は間違えてはいけないと譜面を凝視していたのでそれほどでもなかったですが、「日向の猫」の時は闘病中の近藤家のモイちゃんのことや山田家の亡くなったポチのこと、自分の家のミル坊のことなど周辺の猫たちへの思いが溢れてしまい、近藤さんの爪弾くイントロを聴くだけで泣きそうになってしまいこらえるのが大変でした。それこそ「猫町ラプソディ」には近藤さんやイトケンさん、亡くなったきょうこさんのことも書かれていて、ページを開く度にこの曲を聞く度に猫にまつわる人たちや物ごとを思い出すのだろうなとしみじみ思った次第です。久々の「猫町オーケストラ」もそうですが、猫好きにとっては猫の歌は演奏していてもぐっと来るのです。
最後序盤に演奏した「home sweet home」をもう一度演奏し直す機会があったのですが、あろうことか2度目の方で私がコードを間違えるという痛恨のミスがあり、「出来れば1度目のテイクを使ってくれ〜い」とライスの土下座ネタの如きテンションで懇願に至ったのですが、もう本当に山に籠って修行し直すしかないと決意しましたね。下界に降りられぬよう片眉を剃った状態で。まあ本番では俺はミスなどしていないという涼しい顔で最後まで楽しく演奏し切りましたけどね(笑)。実際楽しかったですし。
この日の演奏がどれだけ使われるのかわかりませんが、夏に発売になるであろう山田氏のライブ盤に収録される模様です。後でこの日のラフミックスを聴かせてもらったのですが、何よりメインの山田氏の歌唱が良いしバンドの雰囲気も良いので、自分のプレイはさておき「うん、いいじゃんいいじゃん〜」と岩崎さんの如きテンションで思った私です。ぜひリリースを楽しみにしていただきたく。お願いしますということで。