7月14日の短編

先日行われた渋谷喫茶スマイルでのfwjカルテットのライブ、無事終了しました。ご来場下さった方々、どうもありがとうございました。久々に対バン形式のライブに出演しましたが、思わぬ再会などもあり楽しい一夜となりました。
当日は夕方に渋谷に着き、会場の喫茶スマイルに向かうべく歩き出したのですが、週末の渋谷の喧噪と渾沌と猥雑さと下品さたるやどえらいものでしたね。お祭り騒ぎとはこのことを言うのかという感じで。そこかしこで何かしらの音が洪水のように鳴っており、品のない若者が横行しており。客引きの人もいればナンパの人もいればギャルやヤンキーも浮かれており。外国人も多く、一瞬アジアの異国の地に迷い込んだのかと思ったほどです。
そんな渋谷の喧噪をくぐり抜けて宇田川町の隠れ家のようなひっそりとしたビルの3階を上ると裏口のようなドアがあり、本当にここで良いのであろうか、開けたらヤクの売買が行われていて何かしらの誤解により撃たれたらどうしようなどと思いながら入ると中は良い感じのバーなのであり。見たらちゃんとしたステージもあるのですね。店長さんもいたので挨拶をし、早速リハーサルを行いまして。ギターのひじきさんが本番ギリギリの時間にしか来られないとのことで、彼がいる体でサウンドチェックなどを行い。まあ結局ひじきさんがいないと曲の演奏が成り立たないということで、音の確認だけして早々と終わったんですけどね。そういうしているうちにこの日の共演であるサツキモノというユニットの2人が会場入りしてきて。この2人、サイクルズというバンドの元メンバーさんで、私が各駅停車というバンドをやっていた頃にライブで共演しているのですね。この日はそれ以来かれこれ18年振りの共演となったわけです。「あのー私、昔各駅停車というバンドをやっていて」と話すと「あ、ダイさんの?ライブ何度か見たことありますよ」とすぐに思い出していただき。ダイさんというのは各駅の元ドラマーでその後くるり七尾旅人などで活躍するのですが、元々彼の人脈で知り合いになったのですね。お互いまだ音楽を続けていて20年近い時を経て渋谷の雑居ビルで再会するみたいなことが普通にあるのですね、長くやっていると。何だか感慨深いものがありました。
その後時間があったのでディスクユニオンでレコを掘ったりしつつ、本番の時間を迎えまして。サツキモノさんはボーカルの森川さんの歌声が凛として素晴らしかったですね。「あの頃はまだ20代でしたからね〜」と当時を振り返って話し合ったのですが、自分が20代だった頃のバンドの風景をつい思い出してしまった私です。
その後時間ギリギリにひじきさんも会場に到着し、我々fwjの出番となりまして。渋谷の猛暑と喧噪に清涼感を与えるべく弦楽器のアンサンブルをお届けしました。7月だったのでタイトルに7月の付いている曲をやろうということで、それこそ10年振りくらいに「7月32日の短編」という曲を演奏し。練習では特に構成も決めずにその場のノリで毎回演奏していたのですが、鎌田さんの弦を弾く怪しげな音、あぐちゃんの不穏な鍵盤ハーモニカ、ひじきさんの淡々としたアルペジオと私のE-bowの持続音が渋谷の夜の光景に何かしらの物語を浮かび上がらせたのではないでしょうか。終始気持ち良く演奏出来ました。夏の定番曲「読みかけの夏」も奏でましたし。この日はmaoの石本さんも見に来てくれて、ミラーレスのかっこいいカメラで写真をいっぱい撮ってくれました。(猫を可愛く撮るためにカメラを買ったそうです・笑)
この日はタカテツさんも見に来てくれて、「いや〜MCも演奏も良かったです〜」とノンアルコールビール片手にご機嫌になっていたので嬉しかったですね。(「今日の渋谷で一番ご機嫌な時間でした!」と言っておりました。)ライブ後にお客さんから「fwjのライブ、8年振りに見に来ました!」と声を掛けられたりして、8年だとか10年だとか18年だとか、長いスパンの再会があるものだなとしみじみした次第です。我々の後に出演した店長さんのバンドもファンキーでかっこよく、最後まで楽しめました。
ライブ後に外に出ると向かいのコンビニ前で地べたに座り宴会を開いている若者たちがいて、「地方のヤンキーか!」と思ったりしたのですが、ドンキ前で座り込んで何かしら集会をしていたり、酔っぱらって地べたに寝ている女子などもいて、色々凄いことになっているな渋谷はと驚いた次第です。そんな浮かれている人たちの波をすり抜けそそくさと帰路に着いたんですけどね。
しかし帰りの電車に乗ったところで今日買ったレコードをお店に忘れて来たことに気付き。何だまた渋谷の街に取りに行かなきゃいけないのか〜とがっくりしてしまった次第です。これも渋谷という街の呪いか何かなのでしょうか。再びあの渾沌の中に身を投じよという。忘れ物を取りに行くというミッションを残したまま渋谷の街を後にした私です。そんな暑い暑い7月14日の短編でした。