一番好きがたくさん 貸切り図書館52冊目

もう先々週のこととなってしまいましたが、molnにて恒例の「貸切り図書館」の52回目をゲストに山田稔明氏を迎えてお送りしました。今回はオープニングアクトに草とten shoesも出演させていただくことになりまして。山田氏も草tenも昼間のjamjamjam音楽祭から続けての出演となりました。たくさんのご来場をありがとうございました。
先の出番となった草tenは昼間の音楽祭とは違ってホームであるmolnでの演奏だし、山田氏のお客さんはみなウェルカムムードなので、割と落ち着いて演奏出来たのではないかと思います。山田氏の登場を前に少しは場を温められたのではないかと。山田氏書き下ろしの「冬の日の幻」も勿論披露しましたし。最後まで楽しく演奏出来ました。
続いて登場した山田氏は本番直前になってセットリストを考えたそうですが、molnでのmiyazono spoonさんの展示に合わせて歌詞にスプーンの登場する「歓びの歌」を歌ったり(この曲久々に聴きましたが良い歌詞だなあと思いました)、前述した草ten提供曲「冬の日の幻」のセルフカバーや、サプライズで私が昔やっていたバンド各駅停車のカバーや、紹介する本にちなんだ曲など、moln仕様の特別なセレクトで最後まで楽しめましたね。久々に聴いた「アップダイク追記」やこの度メジャーデビューが決まったサトミツ&ザ・トイレッツの新曲も聴けましたし。彼の弾き語りはもう何度も見ていますが、毎回飽きさせないサムシングニューを用意していて、そこが魅力だなと改めて思った次第です。本番直前に「草tenにあげた曲って秋の日の幻だっけ?冬の日?」などと尋ね、「冬!冬!」とメンバーに突っ込まれてましたけどね。「冬」などというツッコミワードは新鮮でしたが、本家の歌唱は流石でした。あえて松本隆作詞じゃない曲を選んだという細野さんのカバー曲もしみじみ沁みました。
そして本の紹介のくだりでは以下の本を挙げてくれました。
写真集「Metal Cats」
写真集「bad cat」
写真集「Sleeveface」
向井秀徳著「三栖一明」
山田稔明著「猫と五つ目の季節」
ジョニー・マー著「ジョニー・マー自伝」
片桐はいり著「もぎりよ今夜も有難う」

まずはコーヒーのお供にテーブルに置きたい本として、彼を構成する2大要素、猫とレコードにまつわる写真集を3冊紹介してくれました。いかついヘビメタミュージシャンと可愛い猫の2ショットに思わず頰が緩む「Metal Cats」に、悪い顔した猫ばかり集めた「bad cat」は猫好きなら必ず手に取ってしまうことでしょう。レコードの顔ジャケに自分の顔をはめ込んで写真を撮る「Sleeveface」はインスタグラムでもレコード好きの人たちがハッシュタグを付けてよくアップしています。(山田氏もたまに撮っているそうです。)彼が楽しそうに語る猫とレコードの話を聞きながら自分にとってのコーヒーテーブルブックは何だろうなと自宅の本棚を思い出したりしました。
「三栖一明」は向井秀徳氏の同級生で、向井作品のデザインを手掛けている三栖一明という人物を語るという形の向井氏の自叙伝だそうで。実は山田稔明と向井秀徳は同い年、同じ佐賀出身、共通の友人も複数いて、山田氏が学生時代に組んでいたバンドのメンバーが向井氏ともバンドを組んでいたという縁があるそうで。山田氏が公立高校に進学していたら向井氏と同級生になっていたであろうという話に、GOMES THE HITMANナンバーガールが交差したかもしれない歴史のifを感じて面白いなと思いました。片や「猫と五つ目の季節」はポチという愛猫を語る形の山田氏による自叙伝で、同い年、同じ街出身の2人のミュージシャンの歩んだ軌跡を比較して読める2冊ということで紹介してくれました。(その後東京で向井氏と邂逅した時のエピソードも面白かったです。)そして自伝繋がりでザ・スミスのギタリスト、ジョニー・マーの自伝を紹介しつつ、スミスのカバーを歌ってくれました。私は山田氏の歌うスミスナンバーが好きなのでたまに聴けると嬉しいのです。
「もぎりよ今夜も有難う」は片桐はいりさんによる映画にまつわるエッセイだそうで。はいりさんと山田氏は4月に永井宏さんのイベントで巣巣で共演して(草tenもご一緒させていただきました)、それ以来交流が続いているのだそうです。ある食事の席で山田氏がはいりさんに「一番好きな映画は?」と尋ねたところ彼女は答えに詰まったそうで、彼女くらいたくさん映画を見ていれば一番好きな映画はいっぱいあるのだろうと思い直したそうです。「一番好きなものがたくさんある」というのはとても素敵なことで、彼の話を聞きながら映画も音楽も猫もコーヒーも、好きなものを愛でて暮らすことの大切さを改めて思った次第です。その後に歌った「my favorite things」の説得力たるや。巣巣の岩崎さんの著書からインスパイアを得た「小さな巣を作るように暮らすこと」も歌ってくれ、最後まで充実のステージを見せてくれました。
終演後は昼間の分も含めて打ち上げを行いまして。まあ主に休暇のバリ島がいかに楽しかったかという山田氏の旅の土産話が中心でしたけどね。今回山田氏は2年振りの貸切り図書館への出演となりましたが、ぜひ定期的に出演して欲しいものだなと思った次第です。
そして次回の「貸切り図書館」は10月21日におおはた雄一さんをゲストに迎えてお送りします。ぜひこちらもよろしくお願いしますということで。