3月のほとりで

気が付けばもう3月も終わりかけているのです。早いのです。なぜにこうも時の経過というものは早いのか、責任者出てこいと文句のひとつも言いたいところですが、責任者が誰なのかわかりませんし、文句を言ったところで時の経過が緩やかになるわけでもないのです。仕方なく傍のミル坊を撫でながらグビグビとハイボールを飲み、「ああ、もう1年の4分の1が終わってしまったのか」と嘆くに至る私です。
そんな3月も色々と慌ただしかったのですが、雑誌「ねこ」の取材でミル坊の撮影に立ち会えたのは良い機会でした。「湘南・鎌倉の猫」というテーマで元々妻が受けたオファーだったのですが、取材中ニコニコしながらずっと妻の横に座っていたら「あのー、旦那さまも一緒に映りますか?」と声を掛けていただき、結局私も(図々しくも)誌面に掲載される運びとなりました。記者さんとカメラマンさんからしたら「奥さんの取材なのにこの人ずっと横にいるなー」「声を掛けざるを得ないなー」と不憫に思ったのでしょうか。猫雑誌デビューを無言のうちに手中に得るという荒技を繰り出してしまいました。主役のミル坊はというと人見知りを全開にし、「ぼ、ぼくは絶対に表に出ないぞ!知らない人の取材なんかお断りだい!」とばかりにソファーの下に籠城していたのですが、無視をしてみんなでコーヒーなど飲みながら雑談していたら「あれ?ぼくの撮影ではないのですか?みんなぼくに興味ないのですか?」と何度か外に出て様子を伺って来て、そこをカメラマンさんがすかさず隠し撮りするという形で撮影に成功しておりました。文春のカメラマンもこんな感じで撮影しているのだろうかとジャーナリズム精神を垣間見た次第です。本当は我々がミル坊を抱いたショットなども撮りたかったのですが、いかんせん知らない人がカメラを向けるとビビって逃げてしまうのです。文春砲に狙われるベッキーの気持ちになったのでしょうか。猫の撮影って大変なんだなとつくづく実感した次第です。そんな我々の姿が掲載された雑誌「ねこ」は4月12日発売だそうです。本屋で目についたらぜひ手に取っていただきたく。
猫つながりで言えば、今度縁あって横須賀美術館で張子の招き猫の絵付けのワークショップを行うことになり、先日打ち合わせも兼ねて見学に行って来ました。横須賀駅からバスに乗り30分揺られ、ちょっとした小旅行のような気分を味わい、目の前に海が広がる絶景と共に美術館の展示を堪能しました。ワークショップを行うスペースはそんな海を望む絶好のロケーションで、ここで絵付けをしたら楽しいだろうなあと見学しながらワクワクした次第です。ワークショップの日程は6月17日です。詳細が出たらまたお知らせしたく思う次第です。美術館内は広く、展示の他、図書室やレストランなどの施設も充実しており、一日いても楽しめそうです。目前の春の海はひねもすのたりのたりしており。海とアートに触れ、春の到来を感じた次第です。
最近はもっぱら草とten shoesのレコーディング作業を行っており、アルバムリリースに向けて準備をしています。メンバーに自宅に来て貰い個々に録音しているのですが、さすがに一発オーケーというわけにもいかず、何回も演奏をやり直し気が付けば何時間と経過しており、ここでも時の経過の早さに愕然としているところです。冬から春へと季節が移行し、桜が花を咲かせ、猫の毛も生え変わろうとするこの変化の時期、音を永遠へと刻み残す作業をしているのです。先日貸切り図書館に出演してくれた井手健介さんが斉藤由貴の「卒業」をカバーしていて(井手さん、本当に素晴らしいライブでした!)、その繊細な美声で歌われる松本隆先生の歌詞にしみじみ感動したのですが、「やめて想い出を刻むのは 心だけにしてとつぶやいた」という歌詞を作業中にふと思い出し、我々は一音一音を盤に刻もうとしているのだなと改めて思ったりしています。聴く人の心に残すためにあえて刻むのです。ミル坊は傍で「がんばれー」というような顔で我々の作業を見守っておりました。彼も間接的に録音に参加しているのでしょう。音源は無事仕上がるのでしょうか。果たして。
桜もすっかり満開になりました。ふくふくとした薄ピンクの花々を眺めながら4月への準備をしている私です。