夏の絵日記〜草とten shoesマスタリング

この日は草とten shoesのアルバムのミックスの最終確認とマスタリング作業を行うため、エンジニアの上野さんの自宅スタジオまで伺いました。
最寄り駅にあやと岩崎さんと3人で集まり、いざタクシーに乗ろうとするも結構な行列が出来ており。しかもなかなかタクシーがやって来ない様子なのです。これはバスで行った方が早いぞとバス停を探すも場所がわからず、駅員さんに聞いてようやく目的のバスに乗り込み、そこからしばらく揺られまして。初めて訪れる街をバスで走るというのは何だか旅気分になれて楽しいものです。ちょっとした遠足みたいなものです。
最寄りのバス停で降り、上野さんから電話で道順を聞いてその通り歩いたのですが、畑の広がる静かな郊外といった景色に、蝉の声、青い空に白い雲に照りつける暑い日差しが「ああ、もう夏本番やなあ」といった感じで、夏休みに親戚の家に遊びに行く雰囲気が満載でした。この日の絵日記にはきっとこの景色を描くのだろうなと思いつつ。(まあ絵日記を描く予定は今のところないのですが。)
そうしてようやく上野さんの自宅スタジオに到着しまして。「さっきの道順の説明でわかりました?」と上野さんに聞かれたので「すぐにわかりましたよ」と応えると、「あの説明で辿り着けないミュージシャンが1人だけいたんですよね〜」と言うので、「ちなみに誰ですか?」と聞くと「タカテツさんなんですけどね」とのことで。タカテツさんの面白伝説を思わぬところでまたひとつゲットしてしまいました。本人不在のところで。
そしてミックスの最終確認を行ったのですが、つい2日前に山田氏のライブで同じステージに立っていた2人がこの日はアーティストとエンジニアとして同じ空間にいるのが何だか不思議な感じでしたね。そんな上野さんのミックスは素晴らしく、歌もサウンドも良い感じでまとまっており。流石なりと思った次第です。「猫にしか見えない色」というレゲエマナーな曲に関してはその場で細かくダブ処理などして貰いまして。ディレイのタイミングとか「トントントントンといった感じで」などと、上野さんと相談しながら決めて行きました。上野さんは「ならばこうしたら良いかもですね」とその都度的確なアドバイスをくれるのです。実に頼り甲斐があるのです。「この4小節は楽器全部カットして、声に深いリバーブかけて下さい」など、時にはミックスが編曲の一部になったりもするのですが、その際にも上野さんは「ならばこうしたら良いかもですね」と的確なアドバイスをくれるのです。実に頼り甲斐があるのです。(2回目。)
その後も各曲に於いて「ピアノの低音をちょっと増やして」とか「このアタック音をちょっと削って」とか細かい微調整を行い、何とか全体像が見えまして。無事マスタリングまで終えることが出来ました。あやも岩崎さんも「何トントントントンといった感じて?」と我々の謎のやり取りを見ていたのかもしれませんが、最終的には「素晴らしいのが出来た!」と手応えを感じているようでした。
今回一緒に仕事をして実感したのは何しろ上野さんの耳の良さですね。歌のテイク選びも的確でしたし。上野さんが録りもミックスも弱音でモニターしており、一切ヘッドフォンも使わないのでその理由を聞いたら「耳を保持したいので痛めないようにしてるんです」とのことで。上野さんに聞いたら若い人にしか聞こえないモスキート音が未だ聞こえるのだそうです。「この周波数の音聞こえます?」と試して貰ったのですが、全くの無音に聞こえて私はもう完全なるおじさんなのだなと実感した次第ですが。
上野さんの可愛い娘さんにも対面し(出産祝いに犬張子を贈りました)、メンバー一同、仕上がった草テンの音源を手にして上野さんの自宅を後にしました。また夏の郊外の景色をバス停まで歩き、「この道程をタカテツさんは迷ったのか…」と思いながら帰路に着きました。郊外の道を迷うタカテツさんというのも不思議に絵になるのです。この日の絵日記を描くとしたらタカテツさんのことも記述するだろうなと思いました。本人不在のところで。
そんな草テンのアルバム、10月に発売予定です。(何故ならもう10月20日にレコ発の予定を入れてしまったからです。)ぜひリリースされた際には聴いていただきたい所存です。トントントントンといった感じで。