ピンクの癒し

先日、仕事終わりにブックオフ新春セールを覗いたのですが、かなりの盛況っぷりで。全品20パーセントオフということで何か良いものがあれば買うてやろうと棚を見つつも、物が多いから整理しろよテメーこの野郎、新たに物を増やしてんじゃねーぞ、という罵声が妻の声色で聞こえて来るという謎の現象が起きたので、まあ控えめに1冊だけ抱えてレジに並んだわけです。
セールなのでレジはかなり混んでいて行列が出来ていたのですが、私の前に並んでいた50代くらいのサラリーマン風情のおじさんがカゴいっぱいにエロ漫画を入れているのです。30冊くらいはあったでしょうか。「あー、全部エロ漫画だなあ」とピンク色に染まったカゴを見て、これかXJapanだったら「ももいろだぁ〜!」と紅のテンションでトシが叫んでヨシキがツーバスを踏み、「も〜もいろ〜に染まった、このカゴを〜、なーぐさめ〜るや〜つーは〜、も〜ういーない〜」と歌うのかなと思いながらそのピンクなタイトルを眺めていたのですが、私の後ろにもすでに10人ほど並んでいるのです。若い女子もいるのです。みんながみんな「このおじさんエロ漫画を大人買いしてるなあ」とカゴの中身を目視しているのです。でもおじさんは恥じらうこともなく、むしろ堂々と「我、エロ漫画を大量購入するなり!」と武士の如き佇まいでエロ漫画を抱えているのです。これだけの量のエロ漫画を家に持ち帰れる環境ということは独身なのでしょうか。それとも家族公認の趣味なのでしょうか。いずれにせよおじさんの癒しなのでしょう。ふとそれよりも上流を見ると40代くらいの女性がジャニーズアイドルの雑誌をやはり30冊くらいまとめ買いしており。みんな癒しを求めているのだなあとブックオフのレジにて思った次第です。自分の好きな物にどしどしお金を使うのだ!癒されるのだ!という気概のようなものを新年早々感じました。癒し狩りとでも言うのでしょうか。たくさんの癒しが狩られておりました。
正月三が日は催事で帝国ホテルに通っていたのですが、近くの宝塚劇場の前を通る度に毛布にくるまりながらチケットを得るために朝から行列している女性たちを見て、「宝塚って凄い人気なんだなあ〜」と感心すると共にやはりみんな癒しを求めているのだなあとしみじみ思った次第です。極寒の中、長時間並んでまで観劇する情熱が自分にあるだろうかと思わず問うたほどです。彼女たちはその苦労を厭わず朝から並び宝塚公演を観て癒されるのでありましょう。風邪ひかないよう気をつけて!と劇場前を通る度に(心の中で)声をかけておりました。癒しを根性で得ている女性がたくさんいるのです。
エロ漫画おじさんもやがてレジの順番が回って来て、うら若き女子が会計を担当したのですが、それでも恥じらいなど皆無なのです。まあ目の前の商品捌くのに必死だから店員さんもいちいちタイトルなど見ないでしょうけどね。しかし「大量にエロ漫画買うなあ」くらいの思いはよぎるでしょう。レジを終え、両手いっぱいにエロ漫画を抱えておじさんはブックオフを颯爽と去って行きました。おじさんの部屋の本棚にはずらりとピンクの背表紙が並ぶことでしょう。ももいろに染まったこのおじさんをなぐさめるやつはエロ漫画なのです。トシのシャウトとヨシキのツーバスがピンクに炸裂するのです。何というかまあ、「お互い頑張りましょうや〜」というメッセージをおじさんに送りながらブックオフを後にした私です。
みんな何かに癒されながら、救われながら日々を生きているのです。そんなエンターテイメントを私も作らねばなるまいとぼんやり思いながら池袋の街を歩いて帰りました。そんな2019年の年明けです。