「14.8℃カマクラ」石本聡さんからのコメント

fishing with johnの新譜「14.8℃カマクラ」に向けて色々な方からのコメントをいただいておりますが、今回ご紹介するのはpasadena、Red Tubby and Calico、あらかじめ決められた恋人たちへなどで活躍する石本聡さんからのコメントです。
石本さんはそもそもfwjを世に出してくれた恩人とでも言いましょうか。彼の主宰するレーベルmaoにデモ音源を送ったところからfwjのキャリアはスタートしたのです。デモを聴いた石本さんから連絡をいただき、会ってみたら偶然私の大学のサークルの先輩で、話してるうちに意気投合して「うちからアルバム出そうよ」とすぐにデビューが決まったという。それが2003年の暮れのことでした。
fwjのファーストアルバム「残響ピクニック」のジャケット写真は葛飾区の水元公園で撮影しました。カメラマンはかくたみほさん。私と石本さんとみほちゃんの3人で公園内をぐるぐる回って撮影しました。あの空気感は今でも鮮明に覚えていますね。アルバムは4月発売だからとコートを脱いで春っぽい雰囲気で撮影したのですが、実際日差しもあってそんなに寒くなく、不思議な感じでしたね。あれから17年経ってまた同じ人にジャケット写真を撮ってもらうというのも感慨深いものです。
感慨深いと言えば今作「14.8℃カマクラ」では石本さんとも1曲コラボしているのです。お互い猫と暮らしている身なので、「猫時計27時」という猫曲を一緒に作りました。最初はオーソドックスなレゲエ調の曲を渡したのですが、「今はこっちの気分なんだよね」とガラッと変えたアレンジを送って来たので、私もそれに乗りメロを変えたりして今の形になりました。こういう作業は書簡をやり取りするかのようで楽しいのです。お互い最近クルアンビンとか好きなんだよねとか話しつつ。猫はだいたい寝ているのですが、急に走り回ったりするし、猫の時計では一日がどう回っているのか、27時はどんな気分なのかとふたりで想像した結果、こんな曲になりました。
猫にとっては24時間という概念がそもそもないのでしょうが、うちのミルココを見ているとお腹が減って明るくなったら朝、お腹が減って暗くなったら夜、くらいの感覚はあるように思います。特にミル坊の腹時計は正確で、毎朝同じくらいの時間に「朝ご飯まだ〜?」と起こしに来ます。夜中足元で寝ている猫たちを見ると、ああ、今猫時計27時なのかなとふと思ったりします。そんな猫に想いを寄せた曲です。

私のリクエストで中盤ダビーな展開を作ってもらい、石本さんのリクエストでふたりのギターの絡みのパートを作りました。お互い猫と暮らす者同士の猫への目線が音に現れていると思います。こうして時を経て一緒に作れるというのも嬉しいものだなとしみじみ思った次第です。

 

 


1曲めが流れ出した瞬間、五十嵐くんのギターらしい硬質な音がうわぁっと広がってきて、まずはそれだけで胸いっぱい。
fwjらしさは変わらないけれど、沈黙を守っていた間に五十嵐くんが吸収した音楽が吹き込まれて、懐かしいだけじゃない「現在」の音になっているのが流石だなと思いました。そして生活者として地に足のついたスタンスで音楽に向き合っているニュートラルな佇まいが、音からも、ジャケットからも、「ココちゃん、雨降ってきたねぇ」という何気ない言葉からも伝わってきて、でもその何気なさこそが力強さなんだよなぁ、と。


1曲一緒に作らせてもらいました。
昔は春日部と池尻だったのが今は鎌倉と鵠沼海岸
時の流れというのは不思議なものです。


石本聡

f:id:fishingwithjohn:20210202093834j:image
f:id:fishingwithjohn:20210202093837j:image
f:id:fishingwithjohn:20210202093830j:image