下北沢ハリケーン・ビューティ

11月になってしまいました。
今年も残り2ヶ月とは本当に早いものです。
こうも早いと時の流れが早くなる薬でも盛られているのではないかとの
疑念も生まれるもので、
こわごわと手元の茶碗を覗くもそこには紅い、あの日見た鮮烈な夕焼けの如き色彩が広がるだけで、
どうやら薬は盛られていないようであり。
(誰が何のために盛るんだという話ですが)
その紅色を見ながら紅茶とはよく言ったものだと思いつつ、
ごくりとそれを飲み込み残りの時を駆け抜けようかと決意してみた私です。



そんな折、先日は高橋徹也氏のツアーファイナルにお誘いいただき。
下北沢まで見に行って来ました。
彼のライブをバンドセットでがっつり見るのは実は初めてで、
楽しみにしていたのですが期待以上でしたね。
私は仕事後にお邪魔したので途中からの入場だったんですが、
え、これ本当に高橋さんのライブなの?というくらい会場が異様に盛り上がっており。
何しろお客さんの熱気が凄いのですよね。
彼のギター弾き語りのライブに於ける、静かな無人の海に孤高なる声を投げ波紋を広げるような世界も美しいんですが、
バンドを率いての演奏は海上に船を出し荒波を乗りこなしながら嵐の如く音を掻き鳴らしているかのようであり。
敏腕ベースの鹿島さんの、曲を熟知した熟練のプレイは高橋氏の歌唱もバンド全体の音もぐいぐいと引っ張っており、
sugerbeansさんの鍵盤もそれに乗り時には荒々しく時にはしっとりと音に彩りを与えており素晴らしかったですね。
ドラムの方もしなやか且つクールな演奏でバンドに若々しさを与えておりました。
高橋氏もそれに乗ってテンションが上がっており。
嬌声を上げたり天を仰いだり、挙句は投げキッスまでし、
お客さんへの感謝の言葉の締めには
「全員ウェルカムで!」とウェルカムなジェスチャーを見せ、
まるでカリスマロックスターのようじゃないか、と神々しくさえ見えました。
(後で彼に「カリスマて、美容師じゃないんだから!」とツッコミをいただきましたが)
強靭なリズムを伴ったジャンルレスな彼の歌世界は奇妙さと不穏さと美しさが増しており、
バンドも全員笑いながら狂ってるかのような様相で最高でした。
高橋氏の立ち振る舞いはセクシーでもありましたし。
彼の天然エピソードを面白おかしく書いたりしている私ですが、
この人ただの天才だなと改めて思った次第です。
大変刺激を受けました。
1曲目が「マイ・フェイバリット・ガール」だったと知り、
最初から聞きたかったなと思ったんですが、
彼の楽曲は時を経ても褪せないなと新旧取り混ぜたセットリストを見ながら思った次第です。
(レコ発の割にそのアルバムの曲をほとんどやらないという・笑)
それは彼がオリジナルであるという証明でありましょう。
今後も定期的に彼の作るものをウォッチしていきたいと思った所存です。
さらには世界の山ちゃんをケンちゃんと間違えるその天然っぷりも
今後も注意深く観察していきたいものです。
連休真ん中の浮かれた若者で溢れた下北沢の街をゆらゆら歩くのに
高橋徹也の音楽が妙に合うなと思いながら帰路に着きました。


ところでこの日の会場の下北沢のQueさんは今年20周年なんだそうですね。
当時下北沢に新しいライブハウスが出来たと聞いてほどなく誰かのライブを見に行った記憶がありますし、
その後自分も出演させていただいたんですが。
あれがもう20年前かと思うと時の流れの早さに愕然とする思いです。
時の流れが早くなる薬でも盛られているのではないか。
そんな疑念を抱きながらこの先20年も過ぎてしまいそうです。
あっという間に。