与太者の唄 葛飾柴又散策

先日は大人の遠足で葛飾柴又へ。最近netflixで「男はつらいよ」をよく見ているので、聖地巡礼ということで映画の舞台である帝釈天を訪問しました。大学生の頃に訪ねて以来なので、20数年振りです。

柴又駅に降り立つと寅さんと妹のさくらの銅像がお出迎え。早速記念撮影する私。寅さん、さくらが劇中に登場するマドンナを迎えたり見送ったりした柴又駅に久々にやって来て感激する私。その足で参道を進み帝釈天を参拝。劇中の源公や御前さまの姿が私にはうっすら見えました。
帝釈天敷地内の彫刻ギャラリーは圧巻の見応え。匠の技に見入りました。庭園も美しいし、回廊も見事。人も少ないし癒しのスポットとしておすすめです。ここで半日は過ごせます。
その後近くの山本亭へ。ここも見事な日本家屋と庭園。ゆっくりお茶も飲めるのでここでも半日は過ごせます。
その後は寅さん記念館へ。とらやとタコ社長の印刷所がそのまま再現されているので、映画の世界へ入り込めます。この日は小学生の団体が遠足に訪れており、大騒ぎしていてゆっくり見られなかったのが残念。小学生が寅さんクイズにキャッキャと興じていましたが、君たち映画見たことないやろ(笑)。寅さんファンとおぼしきソロおじさんがとらやのセットを眺めながらしみじみしておりました。タコ社長の印刷所、活版印刷の機械がそのまま展示されていて「銀河鉄道の夜」のジョバンニのアルバイトのシーンを思い出したりしました。ここで働くひろし(さくらの夫)は黙々と言葉を紡ぎ印刷し、寅は流々と言葉を空に放ち物を売り捌く。
男はつらいよ」は安定の予定調和で、毎回旅先でマドンナと知り合い恋に落ちて柴又に帰って来てとらやのおいちゃんおばちゃん、妹のさくらとタコ社長、ひろしや満男を巻き込んでひと騒動あって、結局フラれてまた旅に出るというワンパターンなのですが、私は古典落語を嗜むように鑑賞しています。
今見ると寅さんの無知、無教養、無責任、傍若無人振りは酷いし、昭和のコンプラどうなってんだよという差別やハラスメントの横行が酷いのですが(家事と男の世話するのは女性という悪しき家長制度よ)、それを愛嬌と可愛げでカバーする渥美清の役者としての身体性が見事で、他の役者の巧みな演技と佇まい、哀愁の音楽と帝釈天の鐘の音や昭和の地方の美しい画や間の良い会話などで「何となく良い映画だったな〜」という読後感に仕立て上げる山田洋次監督の手腕に惹かれついつい見てしまうのです。昭和に幼少期を過ごした者に響くサウダージ。 
現代社会からのはぐれ者の寅さんに学ぶ生き方みたいな持ち上げる論評をたまに見かけますが、あんなやつ家族にいたら迷惑なだけの単なる与太者です(笑)。でも与太者の存在すら許されないような現代社会の空気は息苦しいよなと寅さんを見ながら思う私なのです。寅さんが居てあなたも居る。みんな居て良い緩やかかつ穏やかな社会。

展示を見た後はお隣のTORA CAFEで寅チーノを飲んで江戸川沿いを散歩して、寅さんが旅に出るかのような仕草で柴又を後にしました。初秋の良い遠足になりました。

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