信号待ちの瞬間の沈黙

自転車での夜の帰り道。
人通りのない小さな交差点では、もし信号が赤だったとしても
車も人も通っていないようなら
安全を確認しつつ、つい無視して渡ってしまうものです。
今日もつい誰も通っていないようなので
渡ってしまおうかと思ったところ、
律儀に赤信号を待っているおじさんが先にいたので、
僕もそのちょっと後ろで止まって
信号が青になるのを待っていたのですが。
しかし車も人も全く通らない交差点で
ぽつねんと青信号を待っている瞬間というものは
ものすごく静かで、まるで夜の沈黙のすべてが
ここに舞い降りているかのような錯覚さえ覚え、
この瞬間自分は何を待っているのだろうかと
ふと忘れてしまったりもするものです。
見えない夜の生き物が通るのを待っているのか、
それともこの静かなる時の経過にただ耳を澄ますために
ここにとどまっているのか。
冬の夜がこれほどまでに大きく「シーン」という
サウンドを出しているのかと改めて気付くのですが、
誰もいない瞬間も信号はこうして
赤だの青だのといったカラーによって
勝手に交通整理しているのかと思うと、
こうしておじさんのように律儀に
信号を守ってあげるのがいいのかもしれない、
なんてちょっと思ったのですが。
やがて目に見えない生き物の通行も終わり、
青信号になって、そこで改めてスイッチが入ったかのように
おじさんは青信号をゆっくりと渡ったのですが、
そのおじさんのコートがひどく薄手で、
冷たい風が体を冷やさないのかなあなんて
変なことを心配しながら
おじさんとは別な方向へ帰って行った僕なのです。


「夜になると強い風になり 疑問やらがっかりやら
ものすごい期待やらで 一晩中目がさえた
闇はむらさき色になり 月は満月に近づき
遠くで風が 高い波長で カモーンとよんだ」
(「綿の国星大島弓子


<今日のハイジ>
23、24話。
野良猫を拾って来たハイジですが、ロッテンマイヤーさんは
猫が嫌いなので、屋根裏で内緒で飼うことにしたのですが、
やがてばれてしまい叱られるという展開。
召使いのセバスチャンという男がなかなか話のわかるやつで、
猫のご飯をこっそり用意してくれたり、
ハイジやクララのためにオルガン弾きの少年をこっそり
家に通したり、かなりのナイスキャラっぷりを
発揮していて、見ててかなり癒されるのですが、
こんないいキャラがハイジにいたなんて思わなかったですね。