阿佐ヶ谷で、夢のような。

昨日は石本さんとジャケの打ち合わせなど行い、
ようやく決定しました。ジャケット写真が。
写真を表と裏のどっちをメインにするかで
迷ってたのですが、石本さんの言う「ネクスト感」を
選択しました。
まあ実際レコ屋の店頭をイメージしてどっちが目に留まるか、
どっちがより手に取りやすいかとか、その他いろいろと
考えてみての選択なんですが。
まあ僕を知ってる人間はみな目に留まる
ジャケなんじゃないかと思います。
しかしレコーディングの方はまだ終わってませんが(笑)。


ところで漫画家の永島慎二さんが亡くなられたそうで。
非常に残念です。
僕、大ファンだったんですよ。
永島先生の作品てみなさんあまり馴染みないかもしれませんが、
僕は一時期古本屋を探しまくってほぼコンプリートしたくらい
気合い入って好きだったんですよねー。
名作いっぱいあるんですよ。
「少年期たち」とか「旅人くん」とか。
あのはっぴいえんどの「ゆでめん」てアルバムのライナーに
著名人の名前いっぱい載ってますけどあそこにも
永島先生の名前あるので、そこら辺好きな人は
ご存知かと思うんですが。
(僕の周りに好きな人あんまりいないので
どれくらいメジャーなのかわかんないんですよね)


で、先生てずっと阿佐ヶ谷に住んでて有名だったんですけど、
その阿佐ヶ谷の喫茶店で先生の個展があるというので
僕、見に行ったんですよ昔。
高校生くらいの時。
そしたら先生の知人だという画家の方がたまたま店にいて。
で、「僕好きなんですよねー」とか話してたらその人が
「これから先生のご自宅まで一緒に行きますか?」
とか言いだして。
「えっ本人に会うんですか?」と吃驚したんですけど、
なぜかその人と一緒に先生のご自宅まで行く事になったんですよね。
阿佐ヶ谷の町を歩いて。
「これはどういう展開なのだ」とか思いながら。
で、その人と一緒に家に入れてもらって。
もう緊張しててあんまり覚えてないんですけど。
先生の奥さんが応対してくれたんですけど、
「永島は今さっき寝たばかりで起きないと思うんですけど」とか
言われて(笑)。昼と夜逆の時間帯で暮らしてるとのことで、
ちょうど我々がお邪魔したのは先生にとっての夜中だったんですよね。
で、申し訳ないです。みたいな感じで奥さんがお茶入れてくれたりして
僕の方こそ申し訳ないです。みたいな感じで
その知人の方と奥さんが喋ってるのを黙って聞いてたんですけど、
なんか不思議な感じでしたね。
何話したのかほとんど記憶にないんですが、
本棚に先生の貴重な絶版本が置いてあって
「あ、これ欲しいな。」とか思ったのは鮮明に覚えてるんですが(笑)。
まさか「これ譲ってください」とか奥さんに言うわけにもいかないし、
いいなーとか思っただけなんですが、
「本人が自分の貴重本をきちんと保管していた」というのが
なんか意外な感じもしたものです。
「フーテン」とかああいう作品見てると過去の自分の本など
あんまり固執しないかのようなイメージだったもので。
で、しばらく談笑して(僕は本当に何を喋ったのか記憶がないんですが)
おいとましたのですが、「奥さん、すごく優しい方ですねー」と
帰り道、その人に言ったのはよく覚えてます。
本人が寝てたので気を遣っていただいたと思うのですが、
本当に優しく応対してくださって。感激したんですよ。
そんなわけで「本人はいたけど寝ていたので会えなかった。」
という不思議な訪問を経験したのですが、
今でも何度となくあの日の光景を思い出すのですが、
あの画家の方はなんでまた見知らぬ暗い感じのファン(私です)を
連れて行く気になったのかとか、
奥さんはあの時、突然やってきた謎の高校生(私です)
の訪問をどう思ったのだろうかとかふと考えたりしてしまいます。
ひょっとしてあの日の出来事は夢だったのかしら。
とか思ったりもしますが、
その画家の方の連絡先を書いたメモがまだ手元にあるので、
現実だったのでしょう。
あれからその画家の方に連絡した事は実は一度もないのですが、
今になって突然連絡したら吃驚するでしょうか。
それとももう覚えてないでしょうか。
もうその連絡先にはいないかもしれませんが。
もし出たとしても、電話口で
「夢だったんだよあれは。」
とか言われるんじゃないかとかふと思ったりもします。
先生の作品を読み返す度にその日のことを思い出す私です。


ご冥福をお祈り致します。