都合により徒労

今日は仕事で閉店後のデパートに行き、
明日からの催事に備え商品を搬入し、
飾り付けなど諸々行う予定だったのですが、
家から送ったはずの商品が現場になぜか着いておらず、
デパート中を探してもまた見つからず、
しょうがなく運送会社に問い合わせ、
荷物が来ないと飾り付けをしようがないよーと、
店員さんや運送会社の人やうちの人間などを巻き込み
荷物の行方に一同大騒ぎしてしまったのですが、
運送会社の方は確実に荷物をデパートに届けたらしい。
との情報をその後ほどなくして得、それならばあるはずと、
再度デパートの中をくまなく捜索してみたら
倉庫みたいなところの奥の方にひっそりと
荷物が置かれていたのをようやくのことで見つけ、
「ああ、ありましたー!」と喜んでその荷物を
売り場に運んだらもうその日の作業の時間が終わってしまい、
「あとは明日の開店前に作業するしかないですねー。」
と言われ、結局私は今日わざわざ現場に来たのに
実際行った行為は荷物を運んだだけという有様になってしまい、
これなら何も今日来なくても良かったんじゃないですか。
と己の徒労っぷりを実感してしまったのですが、
大人というものは時にこうした徒労に対面することもあるのだと、
大人な諦めを持ってそのまま家路に着いたのでした。


帰りの電車の中ではせめてこの移動を徒労に終わらせないように
親の敵のような真剣さを持って読書に励んだのですが、
さっきまで大騒ぎしていたので徒労の代わりに
じんわりと疲労が出てきてしまい、
もうこのままいっそ流浪でもしてやろうかしら。
とかノーフューチャーなことを思ったのですが
大人なのでそんなことはせずただ黙って電車に揺られたのでした。


途中、乗り換えの駅でトイレに立ち寄ったら
私と同年代くらいのサラリーマンが便座を抱きかかえ、
断末魔のような叫びとともに胃の中のものを戻している現場に
出くわし、その背中から出される哀愁のアトモスフィアに
ああ、せっかく食べて飲んだものを無にするとは
なんという徒労なのだろうか。
とか少々センチメンタルな気持ちになったのですが、
彼には彼なりの事情があってこの徒労と向き合っているに違いない、
何なら徒労ついでにその心情も吐露してしまえばいいのに。
と心の中で彼に語りかけたのですが、
いかんせん私のテレパシーなど彼には通ずることも無く、
彼はげーげーと断末魔を続行し、
私の心のメッセージは徒労に終わったのでした。