くちびるに秋桜

ここ数日、唇が荒れてちょっと切れたりしていたので
リップクリームでも塗ろうかと薬局で購入したのですが、
そういや前もこうやってリップを買ったな、
あれまだ使い切ってないんじゃないの、
とか思い出して部屋を探してみたら
使い切ってないリップが数本見つかったのですが、
思えば私はリップを最後まで満足に使い切ったことがないのですね。
まだ残ってるのに出先などでつい新しいものを買ってしまって
中途半端な消費のされ方をした古いリップの残骸が
溜まってしょうがないのですが、
ああいうのをまとめて新しい1本にするサービスとか
あったらいいのになとか思ってしまうのですが、
そういうサービスはないのでしょうか。
まあ買った時点から常に携帯しておけば良いのですけどね。


ところでリップクリームとかってスティック状のものじゃなくて、
指で取って直接塗るものを使用している女子とかたまに見かけますが、
自分の指を使って丹念に唇を潤している様なんかを見ていると
何だか妙に感動してしまうと言うか、
唇に注目!とか言われてるかのようでつい見てしまうのですが、
例えば女子と二人でいる時にその相手の子が
徐にリップを唇に塗りだしたりすると、
あれ、キスの準備でもしているのかなとか
妙な感じに深く考え過ぎてしまって、
え?いいんですか?とかつい聞きたくなってしまうのですが、
実際そんなこと聞いても
あんた、そんな簡単に唇許すと思ってるの?
と一蹴されてしまうだけなのでなかなか言えないのですが
意味深なタイミングで唇を潤すのは何かあるに違いない。
なんて思ってしまう私ですよ。
(まあ別に何もないケースがほとんどですが。)


そういや前に一緒にお茶を飲んでいた女の子が
ハンドクリームを徐に取り出し丹念に手に塗りだしたのを見て、
へえそうやって綺麗にしているのかと秘かに感動しつつ、
手、触ってみてもいい?と試しに聞いてみたら
「どうぞ。」とクリームで潤したばかりの手を差し出したので
言われるままにそっと手に触れてみたのですが、
それは何だかそのまま舞踏会にでも連れ出したくなるような感じで、
「舞踏会にでも連れ出したくなる感じだ。」
と思ったまんまを言ったらその子は
「じゃあ、今度は舞踏服を着て来なくちゃね。」
と答えて静かに笑ったので
私は何だかちょっと感動をしたのでした。


4月の半ばに私はリップを塗りながら
嗚呼、結局あれから一度も舞踏会に行く事はなかったな。
とか思い返したりします。


「昨日と今日がくっついてゆく世界で
水を飲み渇きだけを癒やせ
塩を舐め唇をうるおせ」
小沢健二「昨日と今日」)