詩人の印象、言語の普遍性

昨日BSでやっていた友部正人氏のライブを
何となく見始めたら最後まで見入ってしまったのですが、
氏の佇まいの変わらなさにまず驚きつつ、
30年前の歌と10年前の歌と最近の歌とが
どれも違和感なく並び、驚く程褪せておらず、
時間に耐えていることに改めて感心させられましたよ。
前に思潮社から刊行された現代詩文庫版の
友部正人詩集」に収められた、
宮沢章夫氏による友部正人批評に書かれていた、
「聞き手の想像力を信用し、口当たりの良い、
想像力を媒体せずに相手に届くたやすい言葉では
決して書かれていない彼の詩は、
時代や文化、ジャンルなど言葉を取り巻く状況から離れても
なお立ち現れる魅力がある」
という文章に私は非常に共感したものですが、
時代背景を知ることなしには理解出来ない世界観とは別に、
時間を経てこそ深さを増す言葉の強度というものがあって、
それこそが普遍性を獲得出来る力なわけで、
私は改めてその強さを彼の言葉に感じましたよ。
30年前の曲を「昨日作って来ました」みたいな感じで
歌えるのも凄いし、現在にそれがちゃんと機能するという
普遍性は並大抵の言語表現では得られないことです。
また言語だけではなく「歌」であることも重要なわけですが
30年前の歌を「昨日作って来ました」みたいな感じで
歌えるのも実は凄いことなんですよね。
朴訥とした、決して巧くはない歌唱ですが、
凄く良い歌唱だと思います。
今回はパスカルズとの共演もありましたが、
轟音のバンドやオーケストラ、ジャズピアノなど
様々な音楽家と一緒に演奏出来るというのも
音楽的に自由度が高い証でもあるわけで、
特に今回のパスカルズの演奏は凄く良くて、
私はちょっと感動みたいなものを覚えましたよ。
パスカルズ単体のライブも見たくなりました。


それにしてもトークゲストで出てた谷川俊太郎氏の
若々しさたるや何なのかという感じで、
私が幼少の頃もうすでに教科書に載ってたような人なのに
現役で詩を諳んじているのは凄いよなーとか
思ったりしましたよ。
鉄腕アトム」主題歌を作詞した人なんて聞くと
もう歴史上の人物みたいな印象じゃないですか。
歴史からひょいと身をかわしてるかのような感じで
新しい言葉を語る彼の姿に、時間に耐えうる普遍なる言語を生む
その秘密を見たような気がしました。
こういう人たちはきっと筋金入りのロマンチストなんでしょう。
そして何よりもパンキッシュでもあるわけで。
じゃなきゃ詩人なんて肩書きを30年、40年も
持ち歩けないですよね。