マイナスイオンを手中に

そんなわけで私はまだ伊勢にいます。
こっちは割と肌寒い日が続いています。
長袖を用意しておいて良かった、長袖万歳!と、
たかが袖という名の布切れに万歳をしてしまうテンションで
この肌寒さをやり過ごしています。
や、正確には昼間は暖かいので袖はいらないんですが
夕方、夜に必要な感じなんですね。
初夏を感じるくらいの晴天とか
そういうのを希望しているこの頃です。
早く半袖に万歳したいところです。


ところで地方都市には必ずと言っていいほど存在する
ジャスコという大型ストアがここにもあり、
私は毎日利用しているのですが、
ここのレジ係の山川さんが泣きそうになるほど優しい接客で
疲れた私を笑顔で癒してくれるので、
私はどんなに混んでいようと山川レジをキープするほどで、
山川レジと書いてマイナスイオンと読んでもいい当て字を
勝手に作り上げてしまってるほどなのですが、
先日もマイナスイオンを浴びようと山川レジに並んだところ、
私の直前で何と別のレジ係の伊藤さんがひょっこり現れ、
「交代しよ。」と山川さんに告げるという不測の事態が起き、
しかもあろうことか山川さんは「あ、ありがとう」と、
さっさとレジの場を明け渡すという暴挙に出、
その場が急に伊藤レジへと変貌を遂げるに至ったのですが、
私は当然の如く落胆し、伊藤さんには何の罪もないけど
がっかりだよ!とやっくん(シブガキ隊じゃない方の)
の台詞を発しながら持っていた竹刀を振り上げ床に叩きつけ、
「レジ係直前変更、反対!」というプラカードを作成し、
店内を駆けずり回り100人の協力者を募り、
そのプラカードを持たせて全員で武装と共に決起し、
レジ係を直前に変更するという行為がいかに愚かなる行為か
その罪を認識せよ、我に山川レジを与えよ、という演説を
2時間弱行いつつ100人の協力者と共に店を闊歩し、
その後「レジ係のうた」という熱い熱いバラッドを作曲し、
みんなで肩を組みながらそれを熱唱し、
後に実況録音盤としてレコード化し伝説となるようなテンションで
3時間その旋律を店内に響かせ、喉を震わせ、
体中の涙、血、汗のすべてを店内の照明に輝かせながら
そのままワンマンコンサートへと雪崩れ込み、
私は走り、転がり、アンプ台から飛び降り、
「アリーナ、ありがとぉぉううう〜!」などと叫び、
「2階席のみんなもありがとぉぉぅぅ〜、愛してるぜ〜」と
ピースサインを高く、想像力よりも高く掲げ、
レジ係直前反対コンサートをオールナイトで盛り上げるという
マイナスイオンを我の手中に収めるべき最高の手段を講じたい
そんな衝動に駆られたのですが、
勿論実際にはそんな行為に及ぶことなく
私は何も言わず伊藤レジにて会計を済ませ、
「ああ、今日は山川さんじゃなかった。残念だな。」などと
小さい声で肩を落としながら呟き、
とぼとぼと店を出て帰路に付いたのです。
そう、ひとりで。
夜に塗れて。


まあそもそもマイナスイオンがどれだけ体に良いのか
私はよく知らないんですけどね。