言葉はさんかく こころは四角

先日、山下敦弘監督の新作「天然コケッコー」を鑑賞し、
地味ながらもじんわりと染みてくるような映像世界に
胸キュンしながら素敵な時を過してしまったのですが、
彼の男子目線での照れと笑いを含んだセンチっぷりは
大変に心地良いですね。


全校生徒6人の田舎の学校に東京から転校生が来て、という話で、
主人公の女の子とその転校生の男の子を中心とした
学校の子供たちや周囲の大人たちの田舎の暮らしぶりを
丹念にゆったりとした時間枠で描いているのですが、
(撮影に2年かけたそうですがそんな大仰感はないのですね)
出て来る子供たちがみな可愛いし、田舎の風景も綺麗に描けてるし、
これといってドラマがない話なのに最後まで面白く魅せているのは
監督の細やかな演出や秀逸な脚本に加えて
やはり役者さんの演技と表情が良いからなんでしょうかね。
主人公のそらちゃんの不器用な中学女子っぷりが嫌みなく描けていたし。
男の子のぶっきらぼうだけどまっすぐな感じとかも良かったですね。
バレンタインのくだりの不器用なやりとりとか、
その後のお母さんのしたたかな感じとか弟の優しさとか、
まわり回って男の子の気遣いが描かれるあの辺は
脚本が実に秀逸だったんじゃないかと思いました。
監督のいつもの独特の間みたいなものが見られる後半の
土手でボタンを縫ってあげるシーンの台詞のやりとりとかも
あのシーンをポケットに入れて持って帰りたいくらい良かったです。
いつでもポッケから取り出して胸キュン出来る感じで。
最後のワンカメで時間の経過を追う演出なんかは
リンダリンダリンダ」でもワンカメで会話を追うくだりで
似たような手法が出て来ましたが、
ああいう目線も何かとっても良いなと思うのですよね。
黒板にキスするところとか東京で山と似た響きを感じるところとか、
少女漫画原作だけど映像を見ると男子目線の演出っていう印象で
そこが私は好きなんですけどね。
前作の「松ヶ根乱射事件」も田舎社会の描写でしたが
田舎の閉塞感を笑いと狂気すれすれで描いていて、
ああいう家族の描き方も男子目線だよなあという印象を抱くのですが
この監督のファンて男が多いような気が勝手にしています。
あそこのあのシーン良かったなー、とか、
あとでどんどん思い出される感じなので、
またDVDが出たら改めて見返してみようかと思います。
一番下のチビちゃんがまた可愛いし。
たまに出て来る猫も大変に可愛いので
胸キュンして癒されたい方はぜひ見てみると良いかと思います。
レイ・ハラカミ氏の音楽も田舎の風景に合ってて良かったです。
しかし恐ろしいのはこの監督、私よりも年下なんですよね。
この先どんな傑作を撮っちゃうのか楽しみです。