群青の夜、林檎の赤

BSアニメ夜話で「銀河鉄道の夜」が取り上げられていたので、
あんな地味な作品を語る番組が成立するとは凄いなと思いつつ
興味深く視聴したのですが、なかなか面白かったですね。
私はあの映画が昔から凄く好きで、
一見するとわかりにくい抽象的な世界観が
見ていると逆にイメージを刺激されるし、
つい見るものがないと見てしまう映画のひとつなんですが、
何度も見るに耐え得る強度を持ち得ているように思うのですね。
まあ何度も見ないとよくわからないとも言えるんですが(笑)。
番組内でも「わかるよりも感じる映画」と評されてましたが、
そういう意味でもかなり音楽的な作品のように感じるのですね。
細野さんの音楽自体まず素晴らしいんですが。
音楽的といえば私は以前にもこの作品について
ここのブログで触れているのですが、
http://d.hatena.ne.jp/fishingwithjohn/20051003
ここで触れた活版印刷所のシーンは
偶然にも番組内で「お気に入りのシーン」として
岡田斗司夫氏も同じくだりを挙げていて、
印刷所の喧噪に紛れて活字を木箱に入れる音が聞こえるという、
その音の使い方でジョバンニの孤独が現されているという
評を岡田氏はしていて、なるほどなーと思ったのですが、
とても音的に印象的なシーンなんですよね。
こういう工場ノイズを構築するエレクトロニカユニットとか、
ドイツ辺りにいそうな感じがするんですが(笑)。
しかし私は見ていて全然気が付かなかったんですが、
ここで拾った活字はタイタニック号についての記事の文字で、
それが後にタイタニック号難破で亡くなった少女達と会うという、
ある種死のイメージへの伏線になっているそうで、
そんな細かい演出が成されたのかと発見がありましたね。
ちなみに細野さんの祖父がタイタニックに乗っていた
唯一の日本人であるという話は有名なんですが、
何だか因縁めいたものを感じますよね。


宮沢賢治の自己犠牲の愛みたいな思想を知ると
この作品のテーマが大体伺いしれるのですが、
ただこの不穏な感じとか、美しい感じとか、
ぼんやりと感じるだけでも面白い作品だと思うんですけどね。
そういえばタイタニック号のくだりで少女がみんなに配る
赤い林檎の丸い質感が何だか可愛くて、
それが少女自身をイメージして描かれたという作家の発言も
何だか腑に落ちましたね。
また改めて映画を見直したくなりますね、こういう番組を見ると。


ちなみに音楽といえば映画では使われていないんですが、
中原香織というアイドルが歌っている
銀河鉄道の夜」というイメージソングも存在していて、
それも良い曲なんですよね。妙な転調する曲なんですが。
テクノ基調だけどストリングスも入ってて、
汽車のサウンドもご丁寧に入っているという。
アレンジの戸田誠司氏の良い仕事のひとつということで。


しかし岡田斗司夫氏の激ヤセした姿に未だ慣れない私なんですが、
何もあそこまで痩せなくても良いんじゃないですかね。
まあ余計なお世話ですけどね。