76年のリュックサック

アンガールズというお笑いコンビのネタで
「そんなマシンガントークしないよ〜。
お喋りでストレス発散するタイプじゃないんだから!」
というツッコミの台詞が出て来るのがあるんですが、
お喋りでストレス発散する人って世の中たくさんいるもので、
お客さんの中には初対面の私相手にべらべらと
色んなことを喋るだけ喋って帰って行く人もいたりして、
今日も「うちの弟が猫好きなのよね」から始まって、
その弟さんの人となりや彼が辿って来た人生行路、
弟と私の関係性や築き上げて来た海よりも深い絆などを
見ず知らずの私が把握するに至るまで
「弟と私トーク」を展開した人がいて、
最後まで聞いた私も何なのですが、
面白いものだなと思ったりしました。
ああいうのは聞いてもらうと嬉しいんでしょうね。


あとひとり、初老のご婦人がいらして、
「あら、若い子が頑張ってるわね」から始まって
孫が5人いて一番上の高校生の子は背が高いとか、
小五の子は体が弱くて困るとかの孫トークから、
「兄は戦死して靖国神社に毎年お参りに行ってるの」
「私なんかはあんまり苦労もしていないんだけど」とかの
生い立ちトークへと展開し、
「最近は色んな鉢植えを育てるのが好きなの」とかの
趣味トークへと至り、それが結構な話術で面白かったのですが、
私なんかは見ず知らずの人にこんな自分トーク出来ないよなあと
その「聞いて聞いてモード」の強みに感心してしまった次第です。
そのご婦人、見た感じ60代くらいと思ったら
「76歳なの」とのことで、素直に驚いた私は
「えーお若いですねえ!」と言ったら彼女は少女のような笑顔になり、
「ただ苦労してないだけなのよ〜」と照れたのですが、
その表情を見てこの人は若い頃は相当の美人だったんだろうなと思い、
その76年の人生の流れみたいなものを感じたのですが、
若い頃の美しさの名残りを見ると心打たれるものですね。
そのご婦人、夕方になって買い物から帰る頃にももう1度現れ、
「見て、こんなに買っちゃった。」と袋の鉢植えを私に見せたりして、
「へえ、賑やかになりますね、重たくないですか」と言ったら
また少女の笑顔になって「好きだからね、大丈夫」と言いつつ、
袋を抱えて帰って行ったのですが、
彼女は背中に「何がそんな詰まってるの?」というくらい膨らんだ
味のあるリュックサックを背負っていて、
私はそのしなやかなうしろ姿とリュックを眺めながら
「ああそうか、あのリュックには76年の人生が詰まっているのか」
と思い、何だか胸の奥が熱くなるような感情を抱いたのでした。


ところで昨日はNさんが来て、今日はYさんが顔を出してくれました。
(2人ともいつもの通り道だと言っておりました。
ありがとうございます)
2人とも財布に入る小さな達磨を買ってくれたので、
2人が縁起物オーケーな人で良かったなとか思ったりしました。
そして何だか元気が出ました。