私、全然大丈夫で

藤田容介監督の「全然大丈夫」という映画を鑑賞したのですが、
主演の荒川良々氏の力量を私は如何程か見くびっていた節もあり、
こんな面白い男だったのかとこれを見て今更気が付いた次第です。
カールを食べながら歩いて来るそのふてぶてしさと憎めなさたるや。
仏様みたいなあの表情と相まって希有な存在感だと思いましたよ。
あのカールというお菓子のセレクトも妙に良かったですね。
フランクフルトとかおしることか肉まんとか、
彼with食べ物、というだけで妙な面白さがあるのですよね。
カロリーメイトのCMの面白さもそこだと思うんですが。
共演の岡田義徳氏の冴えない感じの役どころも実に巧みだったし、
(彼を誘おうとする事務の子とか世話焼こうとするおばちゃんとか
取り巻く女性の描写が妙にリアルだなと思いました)
木村佳乃氏のあり得ない不器用ぶりも逆に器用だったですね。
ティッシュの箱であそこまで展開出来る発想に感心しました。
エロ本を買う客への接客指南とか小ネタも利いてましたしね。
鳥居みゆきとかダーリンハニー吉川とかお笑いの人が多く出てましたけど
キャストの妙もなかなかなものでしたね。
ラストシーンのちょっと小津っぽい間の芝居に於いて
静寂からカセットの雨音、奈良漬けの音という印象的な演出が成されていて、
あそこは音響的にも巧いなと思いました。
「タッパーに入れて持って帰る」というのは幸せのお裾分け的な
明るい未来を感じさせる台詞であの辺のやりとりはほろりとしましたよ。
あと見終わったあと、無性にちくわを食べたくなりましたね。
今まで食べた食べ物の中で一番美味しい、みたいな台詞も良かったですし。
ちくわでしみじみする映画というのもそうそうないでしょうけどね。
ぜひこのしみじみを持って帰りたいなと思った次第ですよ。
それこそタッパーに入れて。


しかしもう3月も終わりなんですね。
本当に早いです。
つーか寒いです。
全然大丈夫なんでしょうか、春は。