転々、カレーとラヴェル

転々 プレミアム・エディション [DVD]

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三木聡監督の「転々」を鑑賞したのですが、
いつもの小ネタ満載の三木ワールドは勿論健在なんですが、
ふせえり岩松了など時効警察キャストが脇を固めています)
ちょっとほろっと来るストーリーになっていて、
何だか見終わった後心温まってしまった次第です。
大学8年生のオダギリジョーが借金のカタとして
三浦友和と一緒に井の頭公園から霞ヶ関まで東京散歩するという話なんですが、
(なんでそうなるに至るのかは実際映画を見ていただきたいのですが)
様々な東京の光景とユルいコントみたいなエピソードが織り成されて、
見ていて何とも心地良いのですよね。
やさぐれた借金取り役の三浦友和が実に良い味出してるのです。
最近の三浦友和氏はこういう汚れた感じの役柄が多いような印象ですけど、
すごくハマってると思うのですよね。
そんなロードムービー調の話から途中、疑似家族ものへと展開するんですが、
その後半のくだりが何だかちょっと小津映画っぽくもあり、
しみじみとさせられる内容なのです。
後半から出て来る小泉今日子が凄く雰囲気良くて。
こういうおばさん役をやるようになってからのキョンキョン
実に女優として深みを増して来ていますよね。
それでいてやはり可愛いし色気もありますしね。
彼女の姪っ子役で出て来る吉高由里子という女優さんがまた存在感溢れる人で。
この子、時効警察にも出てましたけどね。
みんなでカレー食べるシーンのやりとりとか巧いなあという感じで、
何かじんわり泣けてきてしまったですよ。
劇中でのラヴェルの曲の使い方とか、多分曲を聞いた時に
「ああ、こういうシーンの時に使おう」とか
思いついて出して来たと思うのですけど、
泣きのツボがさりげないけど意外に直球だったりするのですよね。
あの曲使うのある意味反則なような気もするのですけどね。
まあ興味持たれた方はぜひご覧下さい。
あれ面白いよ!と声高に述べるような傑作というよりも
友達にそっと教えたくなるような好作品という感じです。
前作の「図鑑に載ってない虫」が私的にはそれほど面白く感じられなかったのもあり、
(あれの主役の男優が私はいまいち好きじゃないのですよね)
こっちの小作品みたいな佇まいの方が好みなような印象を抱きました。
しかし「これ、伏線か?」というような思わせぶりな演出が
結局全然関係なかったりするのはあえてなんでしょうかね。
不思議な面白さです、三木ワールド。
彼が関わってるシティーボーイズの舞台のDVDも全部見たんですけどね。
「いーの、いーの、ブライアン・イーノ」というネタの
知的なくだらなさに全て象徴されてる感じですね。