1973年のドラえもん

封印作品の憂鬱

封印作品の憂鬱

封印作品を扱ったノンフィクションの3作目ですが、今回も面白いです。
世の中には一度は世に出たのに様々な理由で封印された作品が存在するものですが、
それらが何故に封印されるに至ったのかを丁寧に調査し、
人間同士の複雑な関係や作品を取り巻く組織の状況、表現の自由、自主規制、著作権など
あらゆる側面からその光と影を浮き彫りにしていて大変読み応えあります。
1、2作目では有名なウルトラセブン12話や手塚治虫ブラックジャック
オバケのQ太郎ジャングル黒べえなどの藤子作品、
キャンディキャンディの原作者と漫画家による泥沼裁判など知られた作品を取り上げていて、
複雑な経緯を以て封印に至る模様を伺えるのですが、
何しろ封印作品というのはタブーなので難航するわけですよ調査が。
その筆者の苦悩なんかもきちんと描かれている辺り深いし読んでて面白いのです。
オバQやキャンディが今市場から消えていることを知らない人も多いんじゃないでしょうか。
欠番となっているウルトラセブン12話は特撮ファンの間では有名ですけど、
そのお蔵入りの発端とか経緯とか辿って行くと面白いですよ。
たまにyoutubeとかに上がってたりしますけどね、12話。
すぐに削除されちゃいますが。
上記の作品なんかに興味ある方はぜひお勧めです。


で、今回の3作目は「ドラえもん」「ウルトラマン」「涼宮ハルヒ」を取り上げていて。
ドラえもんがテレ朝の前に実は日テレで放映されてたのをご存知でしょうかね。
1973年のことですけどね。
私は主題歌のレコードを持っているので歌は知ってたのですが、
アニメ自体は見たことがなかったんですけどね。
これが今ではドラえもんの歴史に於いてなかったことにされてるのですよ。
この日テレ版ではドラえもんの声を前半が富田耕生、後半は野沢雅子がやってたそうで、
大山のぶ代世代としては想像もつかないというか違和感ありまくりですよね。
しかもテレ朝版でスネ夫の声をやっていた肝付兼太ジャイアンの声をやっていたそうで。
今となってはパラレルワールドのようなそんなドラえもんを見てみたいですけどね。
本書では当時のドラえもんを取り巻く状況や、アニメ制作者の半生と会社の内情、
藤子F先生のドラえもんにかけた想いやなぜか田中角栄まで登場する複雑な経緯を追って、
日テレ版のドラえもんの謎と真実に迫っています。
実に面白いですよ。
まあこういう封印に至るものは大抵著作権不明なものや作者が亡くなっているもの、
会社が巨大ゆえ萎縮した関係者が過剰な自主規制を行なうものなどパターンがありますけどね。
まあはっきりしてるのは今これらがお蔵入りされてるという事実です。


今劇場公開されているドラえもんの映画は「のび太の宇宙開拓史」のリメイクだそうですが、
私はこれを幼少の頃リアルタイムで見ているのですよね。
ラストシーンでロップルくんたちと別れるシーンでは思わず感極まって泣きそうになったものの、
幼心にも男の子が人前で泣くのは恥ずかしいぜ的な男子バイアスがかかって
必死で涙をこらえたのを覚えているのですが、良い作品でしたねあれ。
今見たらもう遠慮なく号泣ですけどね。
びーびー泣きますよ容赦なく。
その頃見てた世代が親になって子供と一緒に同じドラえもんを見に行くという、
実に理想的なサイクルが出来ているわけですが、
その国民的アニメにも封印された過去があったというわけです。
まあ封印といっても主題歌の映像なんかはyoutubeとかニコ動とかで見られますけどね。
これを見ちゃうと本編も見たくなりますけどね。
どんなドラえもんだったのでしょうか。
果たして。
しかしこのエンディング曲、妙にグルーヴィーでかっこいいです。
後半のフルートアレンジとか最高ですね。