日々の本

よく古本屋の店頭やサイトなどで「擦れ、折り目あり」とか「ページ破れあり」とか
商品の状態を示す表記を見かけたりしますが、
中には「煙草臭あり」なんてのもあったりして、
前の持ち主が部屋で煙草を吹かしそれが長年に渡って本に染み込んだという、
本自身の歴史みたいなものを感じて情緒があるなあと思ったりするのですが、
以前某オークションで普通のプラスチックケースに入ったCDなのに
「煙草臭あり」という表記があるものを見かけたことがあり、
プラケースだったら取り替えれば良いんじゃなくて?と疑問に思ったりもしたんですが、
それって中のディスクにも匂いが染み込んでるということなんですかね。
どういう状況でディスクがスモークされたんだって感じがしますが。
同じ煙草臭でも何となく本の方には情緒を感じるのにCDにはあまり感じないというのは
物体として一方はデジタルデータを入れたものに過ぎないという
冷めた認識がそうさせるのでしょうか。
「煙草の吸い方」とかいうタイトルのCDだったら情緒を感じる余地がありそうですけどね。
なるほどこの匂いは演出か〜みたいな感じで。
その前にそんなタイトルのCDあるのかって話ですけどね。
一方で煙草臭のする本のタイトルが「禁煙のススメ」「私はこれで煙草をやめた」みたいな類いだったら
説得力がないですよね。
やめられてないじゃん、という感じで。
まあ煙草臭でなくても古本自体、経年を感じさせる黴の匂いとか、懐かしい独特の匂いがするものですよね。
これがダウンロードとかでデジタル書籍に変わるとこの古本の情緒もなくなるのかなあと想いを馳せてしまいますが。
音楽もそうですがデジタルデータを保存し所有するという行為に「煙草臭あり」みたいな情緒が付随すれば
もっと愛着が持てるのになあと思ったりします。
レコードみたいに音が摩耗するとかいうのは、不便な一方で愛着度を計れる部分もあったと思うのですよね。
まあダウンロードとか便利だから利用しますけどね、ユーザーとして。


煙草臭がついたり、擦れ、折り目ありとかページ破れありとか、
本が辿って来た歴史が付随されるのって人も同じようなもので、
角が取れたり逆にとんがったり、ある種の匂いがついたり経年によって変わったりしますよね。
土の匂いがするとか海の匂いがするとか危険な匂いがするとか甘い匂いがするとか。
年を取って単純に古くなるとかいうのではなく味が出て来るとか、匂いが醸し出されるみたいな。
長年手元に置いている愛着のある本はいっぱいありますが、
それなりの歴史を経て良い本になっていくものって結構あると思うのですよね。
自分もどうせならそういう風に深みを伴って年を重ねていきたいものだと
馴染んだ本のページをめくりながら思ったりする誕生日の夜です。
すでにあちこちぼやけてしまってるページもありますけどね(笑)。