ドラキュラに捧ぐ

先日ふと思い立ち献血に赴いたのですが、
ちょいと寄付箱に小銭を投げ込むくらいの感覚で行ったら
問診票を書いたり血圧計ったり血液型調べられたり、
何やかんやと時間かかるものなんですね、あれ。
400mlの血を抜くのにも結構時間かかりますし。
献血に来ました〜」
「はい、では注射しま〜す。ありがとうございました〜」
「どういたしてまして〜」
みたいなちゃっちゃと済むイメージだったんですが。
(まあ端的に言えばそういうやりとりだったんですけどね)
よくよく考えたらいつも飲んでる500mlのペットボトルのちょい少ないくらいの量ですからね。
そりゃ2、3分で終わりというわけにもいかないでしょう。
ウィンウィンうなる機械を見ながら「嗚呼、私の血が抜かれている!」と
己の血の行方を凝視しつつスポーツドリンク飲みつつ、献血タイムをエンジョイした次第です。
血は立ったまま眠っているという寺山修司の詩を思い出したりしながら。


しかしあれ実際に患者さんのために使われるのだろうかとちょっと心配になったりしますね。
あれがそのまま吸血鬼延命協会みたいな団体の元に流れ、闇で売買され、
吸血鬼たちの食事となっている可能性もあるわけで。
もし私の血の質が殊更に良く、吸血鬼業界に於いて
「五十嵐の血はマジやばい。美味過ぎ!」
「さらっと飲みやすいのに濃厚でコクがあって風味も良くて最高!」
などと評判になったりしたら大変なことです。
吸血鬼たちの間で私の血の争奪戦が行なわれる恐れもあるのです。
「五十嵐の血 新鮮!美品!鬼レア!ノークレームノーリターンで」
などとドラキュラオークション(通称ドラオク)に出品されたりして。
そこで入札に次ぐ入札で高騰したりして。
焼酎界に於ける森伊蔵百年の孤独のような存在になったりする可能性もあるわけで。
そうなったらこの400mlの私の血液はお宝だなあと思い、
急に無料で提供するのが惜しくなったりもしたのですが、
ドラオクにアクセスする術を知らないし、
なんなら評判が立ち吸血鬼たちに夜道で襲われて致死量の血液を強奪されても嫌なので、
そのままおとなしく血を抜かれるに至った私です。
しかしまあ私のこの幾許かの血液で尊い吸血鬼の命が救われるのなら
闇に流されても文句は言いません。
どうぞ使って下さいのひと言です。
そのうち夜道を歩いていて突然、コウモリを引き連れマントを纏った怪し気な男に
「ごちそうさまでした〜」とお礼を言われるかもしれません。
そうしたら私は「どういたしまして」と答えることでしょう。
一体いくらで競り落としたんだか。
落札価格に想いを馳せながら。