猫と古本

昨日から伊勢に来ています。
おかげ横丁にてお面と風鈴の絵付け教室を指導するという仕事で。
昨日は伊勢に入るだけだったので途中名古屋の古本屋に立ち寄ったりしたんですが、
(先月立ち寄ったところとは別な店です)
ここが不発にも程があるぜと天を仰ぎたくなる程の不発っぷりで、
何の罪もないけど電車賃と時間返してと店主に暴言を吐きたくなる衝動に駆られ、
嗚呼私は古本の神に見捨てられたのであろうかと己の身の上を憂い、
タイガーマスクのエンディングテーマをそっと心の中で歌いながら、
哀しみにこんにちはしながらブルーに伊勢入りしたんですが、
何とかこの古本不発を埋めたいと思うのが人情というもので。
実は来る前にネットで伊勢に良い古本屋があるらしいという情報を得ていたので、
ここはひとつ伊勢の古本屋でこの不発を埋めたるかと鼻息荒くし、
宿に着くや否や(あずすーんあず)その古本屋に向かってみたのですよね。
しかし伊勢に何度も来ていてその本屋周辺も何度も足を運んでいるはずなんですが、
なかなか我が視界に古本屋が登場しないのですよね。
歴史を感じさせる古い建物が建ち並ぶ一角なんですが歩けど歩けど姿は見えず。
もう夜で暗かったし本当にこんなところに古本屋なんてあるのだろうか、
私はネット上に跋扈する狐にでも騙されているのではないだろうかと
ネット狐説を声高に唱えようと思っていたらようやくほの暗い灯りが見えて。
「古本屋」という渋い暖簾がかかった古い一軒家がその店だったんですけどね。
中に入ったらいきなり猫が2匹お出迎えしてくれて。
これがまた人に慣れているのでいきなり撫でても平気なのですよね。
にゃーんと撫でられるがままで。
しばし撫でてたんですがあまり時間もないし肝心の本を見られないぜと
取りあえず戦場(棚のこと)に足を踏み入れたのですが、
そう思ってるとまた違う猫が奥をにゃあと通り過ぎたりして。
猫何匹おんねんと思いながら棚を物色し色々取ってペラペラ捲ったりしていると
さっき撫でた猫が私の足下にやって来て、
「にゃんの本読んでるの?」とばかりに私を無垢な瞳で見上げ、
その後すりすりしながら床にごろんと転がって私に腹を見せるので
私はすっかりその可愛さに胸キュントゥーマッチでノックダウンさせられ、
もうこの子のために何でもいいから本を買ったろう、
水割りとポッキーとフルーツ盛り合わせも追加して時間も延長しようなどと
よくわからないオヤジテンションになったのですが、
もう閉店時間に近かったのでざっと棚を流してささっと2冊程抜いて購入しました。
谷川俊太郎山下洋輔の本ですちなみに。)
まあいつでも行ける店ならスルーしたかもしれないんですが。
記念で買うというのは地方の古本屋にはあるものですしね。
そんなわけでようやく古本不発を埋めることが出来、満足して帰ることが出来ました。
猫のいる古本屋というのは良いものですね。
何も買わなくても収穫有りという気分で帰ったと思います。
こういうお店には定期的に観測しに行きたいものです。
そんなわけで初日から私のハートは潤いました。
本の重みが心地良い日は良いものだという意味の鼻歌を歌いながら
私は伊勢の深い夜に眠りについたのです。
猫の如く。