北の国から、10月

何ともう10月なんですね。
今年も残りあと3ヶ月とは信じられません。
ついこないだまで夏だったというのに。
しかし通りを行けば金木犀の香りが漂い、朝晩はひんやりするようにもなりました。
空気はすっかり秋です。


その後「北の国から」テレビシリーズは19話まで見直しました。
脚本の倉本聰先生の著書「獨白『北の国からノーツ』」も何とか入手しました。
(アマゾンなどで幅広く流通していないのです)
当時の裏話や倉本氏自身がこの作品に込めた想いなどを語っている本です。
この壮大な物語が生まれる背景を伺い知るのに最適なテキストです。
物語をまず大きく起承転結に分けて構成しそこからさらに起承転結に分けるとか、
キャラを設定する時は欠点からまず考えていくとか、
脚本の書き方の指南的な要素もあってなかなか面白いです。
まだ全部読み切っていないんですけどね。
今回「北の国から」を見直して思ったのはこの人の「女」の描き方の巧みさですね。
それについては著書でも語られていますが。
女優さんの魅力を存分に理解した写し方もさながら、
内面に潜む業みたいなのを台詞と表情であぶり出す感じがうまいなと唸らされます。
竹下景子演じる雪子おばさんの純と蛍を前にしての良きおばさんとしての一面と、
不倫相手が家族と一緒にいる現場にわざわざ顔を見せに行く女としての一面とのギャップとか、
松田美由紀演じるつららに「あなたには富良野にいて欲しくない」とか言われたら
「そんなことあなたに言われる筋じゃないわ」とか冷たく言ったりする強気な一面とか、
見てると「雪子おばさんこわっ」とか思うんですが、そういう描き方が巧みなんですよね。
(当時清楚な印象だった竹下景子にそういう一面を演じさせるというのは確信的だったそうですね。)
つららの恋する女子の可愛さとか恋に破れた痛々しい感じとかも巧いし。
いしだあゆみ演じる令子の、母と妻と女というそれぞれの場面での表情も生々しいし。
子供に会わせようとしない五郎への冷たい視線とか「令子こわっ」とか思うんですが、
蛍と純を見つめる眼差しは母の愛情に満ちているんですよね。
しかし令子が離婚の話をしに富良野に来た後電車で帰るところを蛍が追いかけるくだりはもう
何回見ても号泣ですね。
蛍は令子の不倫現場を見ているから冷たい態度を取るんだけど見送りに来るという。
あと純と蛍の学校の先生の涼子のミステリアスな演技も凄いんですよね。
裏で恐ろしいこと考えていそうな、本当に宇宙人と交信してそうな眼差しが。
妙に色っぽいところも妖しいんですよね。
純が「僕にもUFO見せて下さい」と言った時の目付きの妖しさには
思わず「涼子先生こわっ」と震え上がった次第です。
蛍も現在の芦田愛菜ちゃんもかくやと言わんばかりの演技力と可愛さなんですが、
五郎がこごみの家から朝帰りして来たら真っ先に女の匂いを嗅ぎ取り嫌悪感を示すし、
そのこごみが作ったスパゲティを川に捨てながら「雪子おばさんは毎日美味しい物を作るよ」と
ぼそっと嫌みを浴びせたりするくだりなんかには「蛍こわっ」と震え上がった次第です。
スパゲティを1本ずつ捨てて行く恐さですよ。
蛍はあの年齢にして女だし女優さんなんですよね、もう。
しかし五郎が令子のことを思い出しながらスナックで「銀座の恋の物語」を歌うくだりとか、
今見ると妙に染みるんですよね。
捨てられた男の哀愁があんなに絵になる人も珍しいですよ邦衛さん。
そりゃこごみも慰めたくなるよという感じで。
そのこごみは開高健高中正義を好むという趣味なんですが、
今で言うとどういう系統なんでしょうかね。
令子はサーカスを好んで聞いている趣味なんですが。
五郎さんはことごとく女と音楽の趣味が合わないですね。
しかしどの女優さんも可愛いし魅力的なんですよね。
恐いながらも。
これから最終回まであと少しですが(その後単発ものが続きますが)
最後まで見てやろうと思ったりしている秋の日です。


それにしても早いです。
時の歩みは。