ネクタイを締める100の方法

もう11月とは一体どうしたことでしょう。
早過ぎです。
時の流れが早くなる呪文でも誰かが唱えているのでしょうか。
そんな呪文は出来れば唱えないで欲しいものです。
道端で誰かが唱えていたら全身でアタックして阻止しようと思いを強くするこの頃です。


先日は従姉妹の結婚式に出席するにあたり久々に礼服なるものを着用したんですが、
私は基本冠婚葬祭の際にしかフォーマルな格好をしないので、
毎回ネクタイの締め方を忘れてしまうのですよね。
数年に一度くらいしか締めないし。
ネクタイの締め方がわからない俺、という社会人として駄目な状況を目の当たりにする度、
ネクタイなんてこの世からなくなれば良いのにと強く思い、
ネクタイがこの世からなくなる呪文など唱えてみたくもなるのですが、
そもそもそんな呪文知らないしなと現実を前に冷静になり、
仕方なく「ネクタイ 締め方」で検索して図式を見ながら締めるに至るのですが、
「自動ネクタイ締め機」みたいな便利な機材があれば躊躇なく購入するものをと思わざるを得ません。
どこかに売っていないでしょうか。自動ネクタイ締め機。
3675円(税込み)くらいで。
そんなネットを頼りに締めたネクタイですが会場に着いて会った従兄弟にいきなり
「ゆーくんのネクタイ変だよ」と指摘され直してもらうという体たらくなのであり、
ネットで得た情報だけでは現実に勝てないという事実を目の当たりにし、
私はのっけから敗北感に全身を包まれ哀しみ色に染まってしまったのでした。
まあ哀しみ色も淡くて綺麗なのでそれはそれで良いんですけどね。
しかしこういうちゃんとした結婚式というのはいちいちハードルが高いのですよね。
会社の上司とか取引先の人とか友達とか親戚とかが集まるベタな結婚式。
祝儀袋というのもハードルが高いし、待ち時間談笑というのもこういう現場ではハードルが高いのです。
おとなの社会ではゴルフとか車とか野球の話とか出ますからね。
私がこの世で最も興味のないものがそのみっつなのです。
そのみっつが出たら私は「ははははー」と適当な愛想笑いしかしなくなるのです。
妖怪適当愛想笑いに変身するのです。
まあ式と披露宴が始まれば流れに乗るだけで良いので楽なんですけどね。
酒飲んじゃえば何とかなるし。
料理はフランス料理のコースみたいなものだったんですが、
適当に手元のフォークを取ってさくっと食べようとしたら従兄弟から
「スプーン、フォーク類は外側からだよ」とテーブルマナーの基本を教示され、
テーブルマナーを知らない俺、という社会人として駄目な状況を目の当たりにし、
もういっそ「箸持って来い、割り箸だ割り箸!」と箸文化に育った己を押し出し、
ついでに「こんなのいらねーから冷や奴と焼き鳥持って来い、あとホッピーね!」
と普段の飲みスタイルを要求したい衝動に駆られたのですが、
そんなパンクな精神は持ち合わせておらず。
そこはもう素直に出て来る料理を楽しんだわけですが、
私としてはしばらくはビールでいきたいところを
シャンパンでございます」「赤ワインでございます」「白ワインでございます」
と次々と違う種類の酒を注いで来るので、
「こんなチャンポンで飲むのは好きじゃない、いいからビール持って来い、あと冷や奴と焼き鳥ね!」
と言いたい気持ちを抑えながらワインをチャンポンしながら飲み。
(まああれは一応料理に合わせて飲み物を変えて来てるんでしょうけどね)
そんな状況でメインを食べたらもう完全にお腹いっぱいになったんですが、
そこからさらにデザートのケーキが4種類も出て来て。
「そんな女子みたいな別腹など持ち合わせておらぬわ、いいからお新香持って来い!」と
やさぐれそうになったのですが、何とか抑えまして。
(私の別腹はお新香なのかと新たな発見もありつつ)
ほとんど残してしまったのが残念だったんですけどね。
食事中には新郎の会社の上司の歌うエグザイルとか同僚の踊るAKBとか、
私がこの世で最も興味のない出し物が展開されていて真顔になりましたけどね。
エグザイルの歌の歌詞の沁みないこと沁みないこと。
まあお祝いごとなので良いのです。
己の社会人力、おとな力を試されすっかりへとへとになってしまいました。
でもまあ結婚式は良いものです。
人の幸せの場面には出来るだけ足を運びたいものだと思った次第です。
ただ人の結婚を祝うのと結婚式できちんと振る舞うというのはそれこそ別腹なのですよね。
別腹をこなせるおとな力を持ちたいものだとしみじみ思いながら帰りました。
でもあそこでケーキをぺろっと全部平らげる別腹はいらないですけどね。