音と言葉、対戦に視線

先日はBOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVEという対戦式の即興ライブを鑑賞しました。
会場は後楽園ホールという格闘技のメッカで、まさに対戦という雰囲気が満載で。
開演前に会場に入ったはずなのにドラムの音がどかどか聞こえるので何ごと?と見ると、
前座の千住宗臣VS服部正嗣のドラム対決が始まっていて。
開演前にやるなら言ってくれれば良いのにーと思ってるうちにすぐ終わってしまいましたが、
あとでドラマー臺太郎氏に聞いたら「いい試合だったよ」とのことでした。
出来ればじっくり見たかったんですけどね。
そのあとやくしまるえつこ嬢が出て来て開会宣言を行って。
彼女の第一声が「しっ!」と会場を黙らせる発言で、掴みはばっちりという感じでしたね。
そこから2分くらいやくしまるワールドを朗読して開会という流れだったんですが、
よもや彼女の仕事がこれだけだったらどうしようと
彼女をメイン目的で見に来ている臺太郎氏の気持ちを想ったりもしたのですが、
そうこうしているうちに第一戦DJ KENTARO VS Open Reel Ensembleが始まって。
オープンリールアンサンブルは「アトムの足音が聞こえる」という映画で
大野松雄の意志を継ぐ若き電子音ユニットとして紹介されていて、
前から興味を持っていたので生で見られて良かったです。
オープンリールは昔私も所有していたんですが(その後壊れてしまいましたが)、
あれを楽器としてしかも複数で使用するとは考えたなと新鮮だったんですが、
まあターンテーブルを楽器として使うDJと似たような発想ですしね。
新旧再生機対決みたいな様相で面白かったですね。
遠目で暗くてよく見えなかったんですが、
大野松雄氏の如くリールをこすって音を出しそれにエフェクトを加えたりしていたようです。
シンバル系を鳴らす打楽器の人もいましたね。
宇宙の音が出まくりでした。
DJ KENTAROは熱いビートを繰り出していて、これまたかっこよかったですね。
クラッチ捌きが見事でした。
派手な照明も相まって「対決!」という感じで盛り上がっておりました。
実に良いカードだったと思います。


次のいとうせいこう VS Shing02のラップ対決も見応えありましたね。
せいこうさんはDub Master Xと組んで過去の自作を朗読、ラップしておりました。
1曲目は「VERBALIEN」の朗読でしたが、
「キサマの前に立ちながら 俺は背後からキサマを撃つだろう」と、
のっけからいきなりかまして来たなという感じでしたね。
それに対してシンゴ2は「俺は大会の趣旨に沿ってすべて即興でラップする」と
持ちネタで勝負するせいこうさんに対しこれまたのっけからかまして来て。
(本当のプロレスのような衣装とマスクで出て来て盛り上げていましたね)
彼の音源はずっと聞いていたんですが、フリースタイルのラップを聞くのは初めてで、
そのラップスキルに改めて感心しましたね。
自分の紹介、歩みから始まって人類の遺伝子レベルの話まで
スケールでかい内容のリリックを見事に韻を踏みながらラップしておりました。
随所にせいこうさんをリスペクトする内容も入っていながら
挑むような姿勢で良い戦い方だったと思います。
せいこうさんは「きみたちは路上の花だ」とデモ隊に向けた演説や
クチロロの「ヒップホップの経年変化」などを披露しましたが、
改めて言葉の強度の高い人だなと感心しましたね。
ダブマスターさんのエフェクトと相まって言葉が響いて来ました。
座って語るせいこうさんに対し「せいこう立てや!」と客からヤジが飛んでましたが、
シンゴ2との対比を強調する為に座ってたと思うんですけどねあれは。
でも最後にはせいこうさんも立っておまけでラップし、全員を紹介して終わりという
結果的に美しい終わり方に収まっていました。
いやーこれは見応えありましたね。


次の坂本龍一 VS大友良英のメインマッチの前にやくしまる嬢が再び登場して。
良かったまだ出番あったんだ、臺太郎氏も喜んでいるだろうと思ってると
彼女が「楽しんでる?」みたいなことを客席に呼びかけて。
その直後に「いえ〜い!!!!」と客席から野生の雄叫びを上げる人がいて、
どこかで聞いた声だなと思ったら臺太郎氏の声で。
こんな大人数が集う後楽園ホールで彼の声を判別出来るとは思わなかったですが。
あとで「あの時客席で叫んでたの臺さんでしょ?」と聞くと
「あ、わかった?」と満面の笑みで返して来たので
彼はもうこれでチケット代以上の喜びを得たのだなあと思った次第です。
そんなやくしまるさんが2人を呼び込み、いよいよセッションが始まって。
教授はPCでエフェクト加えた音色のピアノで不協和音など鳴らしたり、
ピアノ弦をこすったり叩いたりプリペアドされた音色で鳴らしたり、
鳥笛をきゅきゅっとこすったり(その図が何か妙に可愛かったですけどね)、
シンセなどの電子楽器を使わず最後まで生ピアノのみ使用でしたね。
大友さんはシンバル類、ターンテーブルエレキギターを駆使して
様々なノイズを鳴らしておりました。
弓でこすったり玉を弦の上に落としたり、基本的にメロディーは一切鳴らさなかったですね。
武満ぽい不協和音と倍音が静かな空間に響いて美しい場面がいくつもありました。
個人的には教授ぽい美しいピアノフレーズを弾き出したところに
大友さんが全く寄り添わないフィードバック音を鳴らしていた場面が面白かったですね。
2人の個性が平行線を辿ってるなという感じで。
全体的にまあ予想通りの内容といえば予想通りだったんですが。
きっちり見せ場を作りつつ盛り上げつつ緊張感を持たせて魅せてくれたので、
流石の2人だなと感心しましたね。
今回3組とも好カードで、主催の人のセレクトは見事だったなと思いました。
客寄せでやくしまるを配置したのも含め。
(実際それで見に来た臺太郎氏のような人もいたわけだし)


終演後はその臺太郎氏と合流しご飯を食べて帰りました。
その席での話題もほぼやくしまるだったことは言うまでもありません(笑)。
やくしまる行くところに臺太郎あり。
そんなことを再確認しつつ帰路についた私です。