桜計画

三寒四温の三寒ばかりが続いているようで四温は見る影もありません。
どこに行ってしまったのでしょうか、四温。
「しおーん」と沢田聖子の「シオン」を口ずさみながら
(この歌ご存知の方いらっしゃるでしょうか)
暇を見つけては四温を探すという日々です。
向かいのホーム、路地裏の窓、こんなとこにいるはずもないのに。
毎年この時期にはもう桜の気配を感じているように思うんですが、
そんなわけで桜のさの字も見当たりません。
今年に限って勿体ぶっているのでしょうか。
己の存在価値を持ち上げようとする企みなのでしょうか。
そうそう簡単には見せないわ、そんな安い女じゃないのと、
花びらのピンク色を奥に秘めたまま寒風に佇んでいるのでしょうか。
(こう書くと何だか官能の香りがするのが不思議です)
四月物語」という映画でパーカーの帽子部分に桜の花びらが溜まって、
それをぽとぽと落とす、みたいな描写がありましたが、
惜しげもなく落ちて来る桜の花びらを掻き集めたい衝動は誰にもあるかと思います。
それがいつの間にか己のパーカーに集まってたら何だかくすぐったいような、
嬉しい気分になることでしょう。
俺の背中に裸の桜が。や、やめろよ、くすぐったいじゃないか!
みたいな感じで。
桜は桜でうふふふーみたいなふわふわした感じで。
この春こそそれを実践したろうかとパーカーを購入し軽い決意をしてみせるのですが、
いかんせん三寒ばかり。
桜の気配が見えません。
パーカーを着て桜の木の下で過ごすという壮大な計画が頓挫しようとしています。
こうも開花が遅れてしまうと花見にも影響が出ることでしょう。
そのうち桜に似せた偽物の木が登場し、桜の振りをして花見客を騙すという
桜詐欺が流行するかもしれません。
客も「どう見ても桜にしか見えなかった。騙された!」と嘆くほどそっくりな木を用意し。
桜と言い張り客を欺くのです。
騙す方の業者も念を入れて「このソメイヨシノは見事であるな」
「花よりだんごだけどやっぱり桜の花は美しいよな」などと大声で桜であることを主張し。
それを聞いた客は安心して「そうか、やっぱりこれ本物の桜だ」と騙されるという。
これが本当のサクラだねってオチが業者内での鉄板となることは言うまでもありません。
桜詐欺に遭わないよう。
お気をつけて。