カラフルな魚群、悟りの境地

熱帯の如き気候の8月の世界に汗をかきながら、
凶暴な冷房により北極の如き気候の建物や電車の中で震えながら、
両極端な温度に翻弄されながらも何とか暮らしています。
夏は本番続行中といった趣です。
そんな夏の最中、学校のプールに400匹余りの金魚が投げ込まれたという事件ですが、
見ようによっては何と風情のある光景なのでしょうか。
25メートルプールを優雅に泳ぐ赤や黒、白のひらひらとした金魚たちが
美しき模様を水面に作り出し、そこに夏の光が乱反射、
水の匂い、蝉時雨、遠くの空に入道雲を望むロケーション、
本来我々が泳ぐはずの空間を突如占拠したその乱入者たちを前に
「これはどうしたことだ」と呆然としていると
後ろからクラスメイトの女子がやって来て
「これは夏の贈り物かもね」と明るく言い放ち、
「ねえ私たちも一緒に泳がない?」とその場でするすると制服を脱ぎ出し、
「ちょ、ちょっと待てよ!」と制止する私の声を無視し
金魚を驚かせないようプールの縁から静かに水中へ入り、
「ほら気持ち良いよ」と優雅に泳ぎ出すと周りの赤や黒や白の色彩群は
鮮やかな文様となってその子を飾り、
きらきらと輝く夏の太陽の下に描かれた水彩画のようなその光景を見ながら
私は「すてきだ、いい感じだ」とつげ義春の漫画のような台詞を放ち、
しばしその場に立ち尽くす、吹奏楽部の朝練の旋律を聞きながら。
みたいなシーンをイメージしたのですが、そういう場面はなかったのでしょうか。
学校側からしたらそれこそ金魚迷惑な話ですが
(このコメント日本中の人が口にしたことでしょう)、
生徒からしたらテンション上がる夏の珍事件でしょう。
犯人が有刺鉄線を断ち切ってプールに潜入、
金魚を投げ込む時のドキドキ感たるや。
こんなスリル、なかなか味わえないでしょう。
25メートルプールで行われた金魚掬い、ぜひ参加してみたかったです。



ところで先日のブログで美術館の監視員は何を考えながら座っているのか、
虚無に襲われたりしないのかと問いを投げかけたところ、
ツイッター上でその監視員をやっていたという人から応答をいただきました。
その方によると一応気を張って座ってはいるらしいのですが、
来客者の少ない時なんかはくだらないことも考えているそうです。
姿勢良く座りつつ腹筋を鍛えようと足裏を持ち上げてぷるぷる震えてみたり、
お客さんから「ずっと座ってて大変だねえ」などと話かけられたりしたことなど、
具体的なエピソードを伺いました。
静かな空間でアートに囲まれながら密かに腹筋を鍛えている人がいると思うと
監視員の様子を伺うのも鑑賞のひとつとして成り立ちそうな感じですね。
「あれ、あの人何だかぷるぷるしてない?」みたいな(笑)。
にこにこ笑ってても変だし客を睨みつけても何だし、
菩薩の如き表情を浮かべ一日数時間何もしないというのは
結構過酷な仕事なんじゃないでしょうか。
続けていれば悟りのひとつでも開けるような気もします。
そんな監視員の悟りの境地をヤフー知恵袋で見ることが出来ました。
こんな境地に達してみたいものです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q116941411