言の葉トーク

昨日は立教大学にて行われたピース又吉町田康トークを聞きに行って来ました。
立教の池袋図書館開館記念フォーラムという催しだったんですけどね。
無料で聞けるから応募するべし、と新聞に書いてあったのを見つけて応募したら当選したのです。
忘れた頃にそっけない当選はがきが来たのであやうく捨てるところでしたが。
そのはがきを握りしめて立教大学に赴いたわけです。
学生たちに混じりながら「へへ、俺も学生に見えるかな〜」などと学生ぽい歩き方(どんなだ)で
会場に入ると果たして関係者や取材の人と思われる大人や立教の学生や
私のようにはがきで応募した一般人でいっぱいで。
トークのテーマが「なぜ読むのか」という読書にまつわるもので、
最初に又吉の講演があってその後町田康とのトークセッションという構成で、
少し遅れて着いたらもう又吉の講演が始まっていて。
又吉ひとりで大丈夫なんだろうかと思いつつ聞いてたんですが、
読書の楽しさについての話に加え、なぜか又吉が出会った変なおじさんのエピソードが語られ、
途中読書と関係ない漫談みたいな展開になっていましたが、面白かったですね。
本を読む楽しさは驚きと共感を得られること、さらにそこに狂気性も加味されると
自分の尺度が揺らぐ感覚を得られるみたいなことを語っておりました。
(あ、「自分の尺度」云々は後に補足された町田康の発言でした、確か)
あと言葉そのものへの興味についても語っていて、
それはお笑いにも共通するものがあるという話でしたね。
印象深かったのは又吉考案の広辞苑を使った遊び方法で、
「電車で隣に寝ているおじさんの寝言で言われたら嫌なひと言」
などのテーマを決めてから適当に広辞苑を開いて、
そこに書いてある言葉からそのテーマに沿った言葉を探すというもので。
その時に又吉が選んだのは「出来上がり」でしたけどね。
「自分を含めたこの空間がおじさんの作り上げたものだったら気持ち悪い」
みたいなコメントを添えてましたが、
広辞苑で拾った言葉ひとつでそれだけの世界観をぱっと提示出来るのは流石だと思いましたね。
あと「飼ってる九官鳥に言われたら嫌なひと言」というテーマでは
「キャプテン」というのを選んでました。
「そんな関係性で捉えてたんかい」とツッコミを入れてましたが、
これってお笑いや物語を作る訓練にもなるなと感心しましたね。
この遊びを紹介するためだけに重たい広辞苑を持参して来たんかいと思いましたが(笑)。
最初太宰の話ばかりしていて大丈夫かなと思いましたが、
芸人らしい手法で笑いを取りつつ講演を持たせていたので流石でしたね。


その後町田康とのトークセッションに突入して。
立教の図書館の館長さんが司会で2人に話を振るという形式でしたが、
この館長さん、又吉がテレビで話してたエピソードなどもよく知っていて、
表現者としての2人の意見を引き出そうと色々突っ込んでいて、
なかなか良い司会っぷりでしたね。
金がない頃、古本屋のワゴンセールで安い本を買いあさったという
2人に共通する読書へのアプローチに始まり、
図書館をどう利用したかなどの話も絡めて聞き出してましたね。
町田さんは近所の図書館のどの棚に何があるか熟知するほど
通い詰めたという話をしておりました。
町田さんの話で面白かったのは「ただ凄いだけという小説がある」という話で、
「ただ凄いだけというのはオリンピックと同じで面白くない。
100メートルを速く走るのはただ単に凄いだけだ」と
小説と同時にさり気なく世界的なスポーツの祭典をぶったぎっておりました。
その辺に関しては実は私も同感ですが。
あと「本気で小説を書いているとやはり消耗する。
職人みたいに上澄みだけ書いていれば長続きする」みたいに
微妙に誰かをディスってる発言にパンクを感じましたね。
立教大学のここの会場で30年前ライブをしたことがある」
と発言しておりましたが、INU時代なんでしょうか。
2人に共通する言語である大阪弁をどう扱うかという話になって、
河内弁で書いた「告白」という小説を40ページくらい書いたところで取材したら
土地によって河内弁も違うということがわかって全部書き直したという逸話を語っておりました。
又吉は三鷹に住んでた部屋が昔太宰が住んでたところだったというお馴染みの話を聞かれておりました。
館長さんはこの話がお気に入りのようで「又吉さんは太宰の生まれ変わりとか?」と
嬉しそうに話しておりました。
又吉はいいネタを持ってるなあと改めて思った次第です。
最後に2人が学生に紹介する本ということで、
町田康深沢七郎の「笛吹川」を紹介しておりました。
確か講談社文芸文庫の解説を町田さんが書いているんですよね。
又吉は西加奈子の「ふくわらい」と町田さんの「告白」を紹介しておりました。
町田さんの声がぼそぼそと聞こえにくかった箇所もあったり、
集中して聞いてたので少々くたびれましたが、面白かったです。
又吉の漫談(?)も聞けたし、貴重なトークを聞けました。
応募して良かったな私、と思いながら外に出ると冷たい秋風が吹いており。
思わず上着の襟を立てて身を縮こませながら帰路につきました。
「へへ、俺も学生に見えるかな〜」などと学生ぽい歩き方(どんなだ)をしながら。