私、マイブラを鑑賞

気が付けば10月になっているわけです。
早いのです。
時の流れは。
10月ともなるともう年末が視野に入るわけで、
そうなるともう今年を総括しにかかるようなテンションになるわけで、
本当に1年て早いなあとカレンダーをぼんやり見やる黄昏てな感じですが、
まあまだ残り3ヶ月もあるぜと前向きにカウントダウンしながら過ごしてやろうかと目論んでいる私です。
日々にアップアップと流されながら。


そんな中、先日は国際フォーラムという会場に
相対性理論my bloody valentineの共演ライブを見に行って来まして。
例によってメンバーのイトケンさんにチケットを取っていただくという
他力本願ぶりを全開にして会場に向かったのですが、
電車内や駅などですでにmbvと書かれた紫のシャツを着用する人たちを多数見かけて。
そんな人たちは俺はこれからマイブラを見に行くぜオーラが全開で、
私は「君もか!」と肩を抱いて仲間意識を共有したい衝動に駆られたのですが、
いきなり見知らぬ人に声を掛ける勇気もナッシングなので、エア声掛けとエア肩抱きに留めた私です。
実を言えばライブ会場にその出演アーティストのシャツを着ていく勇気も持ち合わせていない私なんですけどね。
着ている人を見かけると良いなあと思ってしまうのです。
会場の国際フォーラムは20年くらい前にボブ・ディランを見に行った以来で、
当時は携帯で場所を検索するなんて技を持ち合わせていなかったので
ぴあか何かで事前に調べて行ったと思うんですが、
今や私にはアイフォーンなんて機器が手元にあり。
それで場所を調べながら行こうと思ったらまた違うmbvの紫のシャツの人
(「ガラスの仮面」の紫のバラの人みたいな言い回しですが)
が近くを通りかかったので「あの人に付いて行けば着くな」と後を追うと果たして会場に辿り着きまして。
ここまで来てなお他力本願かという向きもありますがようやくライブを見られるに至ったのです。
で、中に入ってチケットのやり取りなどをしていると金髪に赤シャツの派手な人が後ろを通りがかり。
ふと見やると何と吉田豪さんで、TBSラジオリスナーの私は思わず
「わ、本物だ!」なんて反応してしまったのですが、
声を掛ける勇気を持ち合わせていなかったのでエア声掛けに留めた次第です。
そんな遭遇劇(一方的にですが)などありつついよいよ本番に臨みまして。


相対性理論のライブは何やかんやで毎回のように見ているのですが
(毎回イトケンさんにお願いしているので)、新譜が出てから見るのは初で。
ほぼ新譜の曲ばかりでしたが、ライブ仕様のアレンジになってて楽しめました。
特に「たまたまニュータウン」などはツインドラムを活かしたアグレッシブなアレンジになっていて、
実に格好良かったですね。
やくしまる嬢は後光が差してましたし。(そういう照明でした)
何よりも出音が凄く良くて聴きやすかったです。
イトケンさんの鍵盤率が高くなっていていつも以上に大活躍でした。
(客席からのイトケンコールにはニヤリとさせられました)
もっと聴きたかったですが、今回はマイブラがメインですからね。
で、その後休憩を挟んで満を持して登場したマイブラですが。
今回は耳栓付きの爆音ライブとの触れ込みで、
どんだけ耳をつんざく凶暴音が襲いかかるのかと思いきや、
確かに音量はでかいものの耳栓なくても聞けるレベルで、
まずはその音の良さに驚きましたね。
こんだけ爆音なら混沌としてしまいがちな音像はクリアだったし、ドラムの音もとても抜けが良く。
バランスも良好で全部の音がクリアに聴こえるのですよね。
それがそのまま全体音量だけ持ち上がってる印象で。
ずっと耳栓なしで気持ちよく聴けました。
「あ、あの白っぽいジャケのアルバムの何曲目かに入ってる何とかって曲だ!」
と実にぼやっとしたデータながらも知ってる曲には反応し。
気持ちよく身体を揺らしながら音に委ねました。
ケヴィンの後方にはアンプが7、8台は積んでありましたかね。
(暗くて明確に確認出来なかったですが)
1曲毎にギターを替えていて音色に気を使ってるのかと思ったら
単にチューニングの手間を省いてるだけのようでしたね。
(2曲続けて同じギターを使う場面がなかったですがそれだけチューニングが狂うんでしょうか)
しかしあれだけのでかい音量でステージ上のモニター環境がどうなってるのか、
あんなぼそっとしたボーカルで自分の声が聞こえたんでしょうかね。
(それを言えばボーカルの不明瞭な音像も音源通りで完璧でしたね)
今回はバックの映像もハマってて視覚的にも楽しめました。
(激しいドラムフィルの背景に火花が散る映像という演出が最高でした)
シューゲイザーの代表格と言われてる彼らですが、
歌ってる時は流石に正面向いてましたね。
シューをゲイズしてる時間の方が少ないんだなとか思ったりしました。
あと「blue」という映画内で女子高生の小西真奈美の部屋に
マイブラのジャケが飾ってあったなあとか、
loveless」は俺中古で800円くらいで買ったんだよなあとか、
ギターの轟音に包まれながらぼやっとした思い出を反芻していた私です。
ケヴィンはカポを使わないんだなあとか。
そんなステージでしたが最後の8分近くのノイズの嵐は圧巻で。
そこに来てさらに音量がマックスになりましたが、いやもう意識飛ぶんじゃないかと思いましたね。
宇宙船の発射時ってこんな感じじゃないかと思ったり。
地球の最期の瞬間てこんな感じじゃないかと思ったり。
母親の胎内に居る時ってこんな感じじゃないかと思ったり。
もうノイズの雫で洋服がびしょ濡れになってるんじゃないかと錯覚したほどです。
あれはもう凄い体験でしたね。
最高でした。
終わったらお客さんみんなスタンディングオベーションで。
轟音をたゆたう美しい旋律は鮮明な映像とともに、
そしてキーンという耳鳴りとともにしっかり心に刻まれました。
素晴らしいライブでした。
こういうノイズとか轟音系のサウンドって生で大音量で浴びるのが
一番良いリスニング環境だよなと改めて思った次第です。
家でCDでノイズものとか聴いてても物足りなさを感じますからね。
私が過去に生で見て感動したノイズものは
秋山徹次というギターリストとオプトラムという蛍光灯でノイズを出す人の共演で、
ギター3本がそれぞれ違う音域のドローン音を出して、
そこに蛍光灯の接触不良音みたいなのが加わるという音像で、
それが迫力あって気持ちよかったのを思い出しましたね。


終演後は見に来ていたfwjドラムの横山さんと合流し。
近くで打ち上げと称して軽く飲んで帰りました。
帰りは流石にmbvの紫のシャツの人を見かけることはなかったですが、
あの会場の残響をそれぞれの人が耳の中に心の中に持ち帰っていったのだなあと思うと、
何だかそれって素晴らしい体験じゃないのとしみじみしたりした次第です。
その夜は夢の中まで轟音の欠片が残っておりました。
紫のシャツの人も夢の中で聴いていたのでしょうか。
同じ残響を。