レコード摘み

先日ふとレコード盤を聞きたいと思い、
しかもお茶を飲むような、お菓子をつまむような感じで気軽に聞きたいと思い、
ポータブルのレコードプレーヤーを入手したのですが、これが思っていたよりも楽しく。
針を落としてA面が終わったらB面にひっくり返してという作業が
茶葉を入れてお湯を注いで花林糖などをカリッと齧る作業と同等に
ちょうど良い面倒さというか作業感で、
音楽を聞くという行為がいい塩梅で生活に入って、しっくり来るのですよね。
かつてレコードをメインに聞いていた時代を思い出し、
昔買い漁ったレコード群からちょこちょこ花を摘むようにレコを摘み、
針を落としては悦に入っているこの頃です。
レコードプレーヤーにそんな機能があるならば「いいね!」ボタンを連打しているところです。

思えば私が音楽を聞き始めた中学生の頃はまだかろうじてレコード時代で、
その後すぐに本格的なCD時代に突入したわけですが、
あの頃はCDの価値も高かったなあと遠い目をせざるを得ませんね。
ピカピカのコンパクトディスク様ご降臨〜という感じで傷がつかないよう丁重に扱い、
プレーヤーにて再生すれば「おお、クリアな音だ〜」と当時はそんな善し悪しもわからないのに
ありがたく聞いていた覚えがあります。
テレビが贅沢品だった時代に家族がテレビの前に正座し、
ありがたく視聴させていただくかの如き様相です。
使わない時は風邪をひかないよう布を掛けておく勢いです。
相手はたかがCDラジカセなんですけどね。
今やCD-Rなんて1枚数十円ですし、単なるデータの容れ物扱いですからね。
CD自身も己の価値の暴落に驚いていることでしょう。
私は中学の時にビートルズにハマって音楽を聞き始めたのですが、
ビートルズの国内盤CDは3千円しましたし(今もそのくらいですが)、
中古レコ屋で買った方が安かったのでまずはひと通りレコで集めたんですよね。
その後CDで全部買い直したんですが。
それから10数年してリマスターボックスを買っているのだから何回買い直してるんだって話ですけどね。
今やそれをiPodに入れて持ち歩いているという。
中学時代の私からしたら驚きでしょう。
「え、その小さな容れ物にビートルズ全曲入ってるの?」と。
ビートルズ全曲をポケットに入れて運べる時代だと思うと今って未来なんだなと思わざるを得ません。
何なら自宅のCD棚全部持ち歩ける勢いですしね。
しかしiPodで頻繁にビートルズを聞いてるのかというと、
あんまり聞く機会がないのですよね。
やっぱりレコードでA面B面ひっくり返して聞くのがちょうど良いなあと、
昔買ったアナログを摘んで針を落としています。
良い音のリマスター盤が手元にあるのに、
音の劣化したレコード盤を音のそんな良くないポータブルプレーヤーで聞いているという。
しかしこれが自分にとってしっくり来るビートルズのリスニングという気がするのですよね。
みなそれぞれの好みのリスニングがあることでしょう。
最近はショップに行かなくても欲しい曲だけ単体で買えるのが便利で、
配信でデータを買う機会も増えたんですが、これはこれでまた楽しいのですよね。
気になる曲だけ摘まんで買えるという。
パッケージいらないやつなんかはアルバム単位でDLしちゃいますし。
そうなってくると一番中途半端な存在なのがCDという感じになってしまうのですよね。
CDが貴重だった時代を知ってるものとしてはもっと頑張って欲しいんですが。
お前のポテンシャルそんなものなのかよ、と。
カラス除け以外にももっと使い途あるだろ、と。
鏡がない時に己の姿を映す以外にも何かあるだろ、と。
(あれ意外に曇ってるのであんまり鮮明に映らないんですけどね)
しかし理想を言えばこれからは新譜はみなアナログ盤でリリース、
中にダウンロードコード封入、というのがベストな気がしてしまいます。
データはiPodに入れて外で聞き、家ではレコードで聞くと。
所有欲もアナログ盤の方が満たされますし。
今後もっとアナログ盤のプレス代が安くなる時代の到来を願うばかりです。
CDはCDで便利なんですけどね。

そんな音楽ソフトの変遷に想いを馳せながら、レコードに針を落としているこの頃です。
チリチリというノイズが周囲に零れる感じが好ましいですね。
音楽が始まるなという感じで。