ブックオフ経由の恋文

先日ブックオフにふと立ち寄ると本が全て20%オフになっており、
オフだの割引だのいう言葉に弱い私は買わないと損だ!と思い、
結果的にあれこれ買って散財してしまったのですが、
その中の1冊に小林賢太郎バカリズム大喜利の本があり。
大喜利猿 北海道」という著書なんですけどね。
それをぱらぱらと捲っていたら何やら紙片が挟まっているのを発見して。
よくよく見るとチケットの半券なのですよね。
大喜利猿出版記念ライブ 出演 小林賢太郎 升野英知
と書いてあり。
(この頃バカリズムはまだコンビだったのでこの表記だったんでしょうか)
時は2009年7月12日、場所は九段会館ホールと書いてあり。
まさにこの本の出版記念ライブで、この本を買った人はこのライブを見に行ったと思われ、
激しいチケット争奪戦に勝利を収めわざわざライブを見に行ったほどのファンが
なぜにこの本を手放したのか、半券の存在を忘れていたのかと持ち主に想いを馳せたのですが、
断捨離のリストについこれも入れられてしまったのかもしれません。
チケを見ると1階の14番だから結構な良席なんですよね。
2009年に戻ってこのライブを見たかったなあと
本を読みながらライブの模様を妄想したのですが、
古本を買うとたまにこういう前の持ち主の痕跡があるから面白いのですよね。


以前もブックオフにてアラーキーの写真本をぺらぺらと捲っていたところ、
何やら四つ折りにした紙片が挟まっているのを発見し。
何事かと見やると手紙なのですよね。
文面を読むと(読むのかい)美容師さんに宛てて書かれた紛れもないラブレターで。
いつも私の髪を綺麗に切ってくれてありがとうみたいな出だしから、
○○さんならこの本を気に入ってくれると思いました、
良かったら連絡を貰えると嬉しいです、と
電話番号とアドレスが書かれており。
こんなガチの個人情報を挟み込んだまま売ってしまうブックオフブックオフですが、
(査定の際に気が付かないものなんでしょうか)
これを挟み込んだままブックオフに売ってしまう相手の美容師も美容師です。
こいつ貰って中を読まずに売ったのか、言うてもアラーキーだぞ、
中の写真を一通り眺めるくらいせえやと、
私は顔も名も知らぬ美容師に怒りのような感情を覚え、
自分の想いの丈を写真集と共に贈った主の報われなさを嘆くに至ったのですが、
こんなことがあるのだなあとブックオフの店内にてしみじみした次第です。
遂げることのない想いが延々とブックオフの棚に鎮座しているのです。
これを買って持ち帰り手紙を焼くなりして想いを供養しようとも思いましたが、
やはりそこまでは背負い切れないと思い直し、そっと本を棚に戻して立ち去ったのですが、
今でもたまにあの手紙のことを思い出すのですよね。
結局あの本誰かが買って行ったんでしょうが、手紙はどう処分されたんだろうとか。
「美容師の○○ですけど、あの時は本をどうもありがとう」と、
嘘のメールを送ることもちょっと考えたんですけどね。
「84ページに載ってる曇り空のモノクロの写真、あれいいですね。
今でもあの写真のような曇り空の日に○○さんのことを思い出します。
想いを受け止められなくてごめんなさい。どうもありがとう。」
と美容師に成り代わって送ってみようかとも考えたんですが。
(時を経てそんなメールが来たら吃驚するでしょう)
案外この美容師と手紙の主はその後めでたく結ばれ、結婚をし、
子供も出来て引っ越す際に「もう本は邪魔だから売っちゃおうよ」と
お互いが付き合うきっかけになったこの本も一緒に紛れて
ブックオフに流れてしまっただけかもしれません。
そんな大切な思い出をうっかりブックオフに売る方も売る方ですが。


まあ本を処分する際に中身を確認しない迂闊な方々が多いねという話です。
そして古本てこういう人生の切れ端が垣間みれるから面白いよねという話です。
そんな2014年の古本初めです。